第18話「VSカニバル・フラワー その1」

 バーサスは油断無く周囲に気を張り巡らせ、ファンガスを見つけると状況に応じた対処を取る。


「ドニー、前方にファンガス3匹。我が相手する!」


 木の上から飛び降り、ファンガスの前へ出ると、すぐさま1匹に弾丸を撃ち込む。

 絶命を確認するより早く、バーサスは弾倉を入れ替え、2匹を撃ち倒す。


 片手でドニーに止まるよう合図を送り、完全にファンガスの死亡を確認する。

 ファンガスは先ほど槍で射抜かれたものと同様に萎れていく。


「大丈夫そうだな」


 思いつく遠距離からの手段で殺したバーサスは、さらにファンガスを見つけると、相手が1匹目のように休んでいるようなら、木の槍を投擲し殺し、こちらに気づいた固体には容赦なく弾丸をお見舞いした。


「ドニー、これで残るファンガスは1、2匹くらいだ」


 ここからは自分よりドニーが先行した方がいいだろうと考えていたその時、バーサスの胴体に衝撃が走り、宙へと舞った。


「ガハッ!」


 樹にぶつかり、そのまま下へ落ちたバーサスは、何事かと周囲を伺う。

 バーサスが先ほどまで立っていた場所にはカニバル・フラワーがツタをくねらせ、口からは涎を垂れ流している。

 その様は醜悪そのもので、先ほど見たものより花弁も大きく開き、ツタの本数も増えているようだ。


 バッとバーサスは上を見上げると、煌々と照らす太陽がその存在を惜しげもなく現している。


「なるほど。ファンガスとは逆にこいつらは今からが本番ということか」


 ファンガス用に弾丸を取っておかなくてはならない為、拳銃は最後の手段だと、仕舞い込み、代わりに簡易ナイフを取り出す。

 腹のキズが開いていないことを確認し、足に力を込める。


(すぐに立ち上がり、近づいて、花弁のところをこれで掻っ切る!)


 バーサスが走り出そうとしたとき、不意に巨体が前へと出る。


「バーサス、キズ癒す、オレ、戦う」


 ドニーはその巨体に見合わぬスピードでカニバル・フラワーに近づく。


 ヒュンヒュンと空気を裂く音と共にドニーへとツタが襲うが、その攻撃はドニーのTシャツを切り裂くことしか出来ず、ドニーの歩みは一向に衰えなかった。


 ググッと拳を握りこむと、上腕の筋肉が大きく肥大する。


「オオッ!!」


 咆哮と共に繰り出された拳はカニバル・フラワーを一撃で粉砕した。


「見事! だが――」


 その一撃をバーサスはそう評した時、銃声がバーサスから響いた。

 撃たれた先を見ると、ファンガスが木陰から、ドニーを狙っていたのだった。


「一撃は素晴らしいが、周囲への警戒が甘いのが難点だな」


 バーサスは骨の仮面の下で笑みを浮かべ、拳銃を仕舞う。


「ありがと」


 ドニーはバーサスの元へ向かうと、手を差し出す。

 その手を取りながら、バーサスは、「気にするな」と告げる。

 そこには今は仲間だからという気持ちがこもっており、それを感じ取ったドニーも自然とビニール袋の下の素顔は笑みを浮かべていた。

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