第8話 支配者への反逆 その10
「さあ、思いっきり打ってきて」
持っているバイザーに力を集中させ、構えの姿勢をとっているエルナに向かって思い切り打ち出す。彼女はいとも簡単に正面から攻撃を受け止めた。
「結構っ……痺れるようになってきたね……! 私と戦った黄色の『ドミネーション』……あの人と同じ感触、だよ」
エルナの腕はブルブルと震えている。二時間やり続けてこれだけか……。
黄色のドミネーション。きっとそいつが父さんを殺した処刑人だろう。このまま皆に着いていけば、そいつにも遭遇できそうだ。
「これで並の動物は絶命する威力になりましたね」
「えっ……そんなに?」
驚いている僕とは対照的にロプトは小さく頷いた。エルナも僕の方を見て微笑んでいる。
「これで、僕も少しは強くなったかな……?」
自分から特訓を申し出て良かった。最初はロプト一人が手伝ってくれたけど、僕達を見たエルナも途中から参加してくれた。
「ふふっ、アランが強くなってくれて私も嬉しいよ」
エルナは笑顔で褒めてくれた。僕の中にいるシュウって奴に体を乗っ取られないように、精神面もできるだけ強くしたいな……。
もう太陽は僕の真上にあった。汗もいっぱい流したし、まずは水分補給をしたいな。
「……エ、エルナ~!」
「え、もう体は大丈夫なの?」
声のした方を向くとエルナがピンクの短髪の女性と話していた。あの顔は……!
「もしかしてペス?」
僕が聞くと彼女はこちらに近寄ってくる。すると隣に座り、僕の顔をじっと見つめてきた。
「え……いきなり何?」
「ああ……うん、私がペスだよ。昨日は挨拶もできなくてごめんね……!」
ペスは僕に頭を下げて謝ったが、彼女は一切悪くないと思う。だけど自分から謝るっていうなら、それを止める気は無い。
「そうだ、良かったら特訓に付き合ってあげよっか? 武器もある程度使えるんだよ~。アベルの意思とはいえ、昨日まで戦ってきたんだから」
「いや、今日はもう疲れたんだ……。休みたい」
「あっ、そっかぁ……」
彼女はしゅんとして悪い事をした気になってしまった。
……それにしても、今目の前にいるペスが今まで一緒に過ごしてきたと思うとなんだか複雑な気持ちになる。慣れないといけないな。
「じゃあ、そろそろお昼ご飯にしようか」
エルナはそう言うと家へと向かって行った。かなりお腹が減ってる感じがする。今日はたらふく食べられそうだ。
「ペスさん、これを。あなた達がこの前倒した、『ドミネーション』のピンク色を改造したものです。能力をもう一度説明しておきましょう。“ある一つの意思や目的。それ以外の知能の速度を低下すればするほど、筋肉や身体の動きの速度、さらにパワーを上昇させる事ができる”能力ですよ」
「えっ……また?」
歩いているとロプトがペスにラウザーを渡していた。彼女は戸惑っている様子だったが、お構い無しにロプトはカプセルも差し出している。
「僕に関わる人間には命、またはそれに限りなく近いものを狙われる危険があります。もう一度持つのは嫌でしょうが、あなたの為です。わかってください。代償はありませんから」
「……うん。今の私にはアベルの意思は無い、自分で頑張らないとね」
彼女は覚悟を決めた顔を一瞬だけ見せ、直後には笑顔で歩きながら空を観ていた。
「はぁ~食べたぁ! もうお腹パンパンだ~!」
昼食を大量に食べたのか、ライガは腹をさすっていた。いったい、どうやったらあんなに食べられるんだろう……。
「さて、これから皆に伝えたい事があるんだけど、話してもいいかな?」
エルナが部屋の中心で呼びかけると、騒がしかった部屋がだんだん静かになっていった。
「え~、皆をここに数日間タダで住ませる感じになっちゃってるけど……そうはいかないんだよね?」
まあ、この大人数の面倒を見るのはかなりのお金と労力がかかりそうだし、当たり前だろう。
「そこで、皆にこの街の掟を伝えるよ。『自分の面倒は自分で見よ』これがどういう意味かわかるね?」
「さっぱりわからんぞぉ!」
ビーンは身を乗り出し叫ぶ。ちょっと迷惑だ。
「じゃあ教えてあげる……この街にいる人達から仕事を貰って、それを完遂してきて。もしできなかったら、ロプトの実験材料になってもらうからね?」
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