広告戦記
鳳つなし
第1話 広告の魔の手
誰も見たことはないし、実際になにをしているのかはわからないがこの世界には魔王がいる、とされていた。
その魔王は世界に風穴を空けそこから人々を異次元へ連れ去って行った。
その異次元へ連れ去られた者は、ちょっとやそっとじゃこの世界に戻ってはこれないという……。
「おい、またこの村の一人があの風穴の向こうへ連れ去られたらしいぞ」
「そいつ吸い込まれる最後に「就職先が待っている」とか言っていたらしいぞ」
「あいつ最近、給料に見合ってないとか言って違う仕事探してたよな」
村の人々が少しずつ、あの穴の向こうへ行ってしまい、この村は活気を失っていました。
「なんてことだ。このままではこの村は全滅してしまう! どうにかしてこの村を救わねば!」
彼はこの村の青年ヒロシ。特に取り柄もないが、正義感はいっちょまえな童貞である。
「ヒロシ……ヒロシ……」
「はっ、この声は!」
頭を抱えるヒロシの頭上に、女神の姿が現れたではありませんか。
「あなたは……」
「私は女神。この村の悲鳴を聞き、やってきました」
「ちょっと待ってください、女神ってそもそもなんだかよくわからないし、空中に姿を現すとか意味わからないのでググらせてください」
ヒロシはポケットから便利な携帯妖精、スマホンを取り出し、話しかけた。
「HEYスマホン、女神ってなに?」
『ポポロン、女神、女の神。地域によって様々な女神が存在するが、多くが母性を持つ愛の深い神として登場する。像とか絵画では胸を露出していることが多い』
「おおおお! なるほどスマホン、よくわかったぞ! しかしこの女神は特別露出はしてないようだが……」
「スマホンばかり頼りにしてはいけません。女神の私が言うことをよく聞きなさい」
「は、はい……確かにお母さんみたいなことを言うな」
「お母さん扱いしないでください。これでもまだ26です」
「え、神様に年齢とかあるんですか? HEYスマホン、神様は歳をとるの?」
『ポポロン……』
「HEYスマホン! 今の質問取り消し! ヒロシ! いいから私の話を聞きなさい!」
女神は26歳。まだまだ若いが少し怒りっぽく、お母さんっぽい性格を持っている。
「それでは改めまして、ヒロシ。あなたは勇者として選ばれました。この村を、この世界を救えるのは選ばれし力を持った勇者しかいません」
「私が、選ばれし勇者……わかりました。私の力であの風穴の元凶、魔王を退治すればいいのですね!」
「いえ、魔王なんていません」
「はい?」
「あの穴は作者という金の亡者が作り出した広告と呼ばれる異次元の扉です」
「作者?」
「しかし作者はどうにもこちらから干渉することはできないのです」
「ならどうすればよいのですか?」
「あなたの勇姿をこの世界の人々に見せつけるのです。さすれば異次元の扉に延びる手を引き留め、この世界からの流出を防ぐことができるでしょう」
「なるほど、それで私は具体的になにをすればいいのでしょうか?」
「そうですね。とりあえず伝説の剣でも探しに行けばいいのではないですか?」
「おおおお! 伝説の剣! その言葉を聞くだけで胸が高鳴ります! それで、その剣はどこに」
「知りません」
「はい?」
「そんなのスマホンにでも聞いてください」
「いや、さっきスマホンを頼るなって言ったのは女神様ではないですか」
「そんなこと私に聞かれても知らないのですから、自分でなんとかしてください」
「そんなあ」
「ああいけない。こんなグダグダした展開をしていたせいで、広告が近づいてきてしまいました」
「な、なんだって! 女神様、どうすれば……今は伝説の剣もありません!」
「面白いことをなんでもいいから言ってください。私は危険なので帰ります」
「め、女神様ぁー! あ、行ってしまわれた……くそう、広告がもうチラチラと見えている」
女神様はいなくなり、一人取り残された勇者ヒロシ。この状況をどうにかする手だてはあるのだろうか。
「うぅぅ……HEYスマホン、面白いことを言って!」
『ポポロン……申し訳ありません、よく聞きとr
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