お父さん

お母さんの話を聞いたのか、すごい武勇伝だっただろ。


実際に見るよりも、かなりランクが落ちるけれど、それでも凄かったよ。


あれでお母さんが欲しくなった…


おっと。


一目惚れだな。


惚気てる?


いいじゃないか。


お母さんの婚約破棄で思い出したのだが、お父さんにも小さい頃に婚約者がいたんだ。


それはそれは、可愛くてな。


でも、その可愛さに目がくらんだ馬鹿者がいてな、他国に連れて行ってしまったんだ。


国外に出ると、婚約は自動的に破棄される。


泣く泣く、諦めたよ。


意気消沈してしまい、それまでの積み上げてきたものがなくなったと思ったら、国王なんて面倒くさいものをやめたいと言ったら、父王がいいよって言ってくれたんだ。


だから、今の国王がいる訳だが。


ん?


他国に行った子はどうしたかって?


王さまの隣にいるじゃないか。


王妃さまは、一応他国から嫁に来たという形だけれども、元々はこの国が出生地。


連れ去ったのは、他国の王子で、今はミスリル鉱山で働いているよ。


ああ、お母さんの元婚約者も同じところだねぇ。


偶然?


だから君には間違えて欲しくない。


国外に出ないでおくれ。


あの子の泣く姿は見たくない。


でも、お母さんは婚約破棄を家訓にしたいと言っているんだろう。


王妃さまは、笑っていたけれど、事は深刻なんだぞ。


一目惚れには注意だ。


***

そっか~、国外に出ると“自動的に婚約が破棄される”んだ。


国外にある広大なお花畑を見に行きたいと言っても、ダメと言われるのは、それが原因なのかな。


お母さんか伯母さん…ぶるぶる。


お姉さんにお願いすれば、家訓は守れそう。


お父さんは…泣きそうな感じ。


どうしようかなぁ~


王子はかわいいから、このままでもいいかな。


やっぱり5歳差は大きいでしょ。


私14歳、彼9歳。


互いにべったりだから、


王さまも王妃さまも見て笑っているけど、お互いが好き合っているんだから良いでしょ。


家訓かぁ…

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