第10話「鳴き声」



「ぴぃ……ぴぃ……うぅ~、まだ口の中が変な味がするわ……」



 ブラックコーヒー50%ブレンドのコーラを飲ませたところ……


 雫は喉が渇いてたらしく、僕が持って来たソレを摑むと一気に口へ含み、次の瞬間にはマーライオンもよろしくなくらいの勢いで、飲んだソレを天上に向かって噴水のように逆噴射するという……


 『学校一の美少女』にあってはならないような、あるまじき行為を見せてくれた。



「えーと……雫は何で『ぴぃぴぃ』鳴いてるの……? 鳥のモノマネ?」


「違うわよ! 何で『学校一の美少女』であるこの私が鳥のモノマネなんかしなきゃいけないのよ!?

 これは、貴方が持ってきた『アイスコーヒーラ』とか言うアホみたいなブレンド炭酸カフェイン飲料の影響で私の口の中にある苦味を吐き出しているのよ!

 うぅ……ぴぃぴぃ! いくら、ちゃんとしたコーラで口直しをしてもコーヒーの後味が記憶の中に……。

 歩! 貴方、次にあんなものを私に飲ませたらタダじゃおかないんだからね!?」



 どうやら、雫は苦い飲み物を飲むと『ぴぃ』と鳴く癖があるらしい……。


 うん、実に面白い習性だ。



「ゴメン、雫……。次からはちゃんとガムシロップとミルクも入れてくるようにするよ」


「そういう問題じゃないのよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 しかし、雫ってば怒ってばっかりだなぁ……。


 こうやって、話す前はただの人当たりがキツい『学校一の美少女』ってイメージだったのに、どうしてこうなったのか……?


 とりあえず、僕は雫のご機嫌をとるために、このファミレスで一番の人気メニューだというデザートを奢らされることになった。



「お待たせしました。デザートの『シロヌワール』です」


「キャァ~! 来たわ! これが有名な『シロヌワール』なのね!?

 デニッシュパンの上にバニラアイスを乗せて、その上からアンコと餡蜜をかけた激甘デザート!」


「なんだか、見るからに甘そうなデザートだね……」



 そんなに食べたいとは思わないけど、明らかに女子受けしそうなデザートって感じだなぁ……。


 まぁ、これで雫が機嫌を直してくれるなら安いものかな。



「ん~、あまぁーい! とっても美味ぴぃわ!」


「…………」



 どうやら、雫は甘い物を食べても『ぴぃ』と鳴く癖があるらしい……。



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