第6話「疑問」
「それでね! その『呪いのドラム式洗濯機 ~恐怖の柔軟剤~』のラストがこれまたくだらないB級加減なのよ! まさか、呪いは洗濯機の黒カビが原因で――」
いつもの放課後、図書室で雫の超B級ホラー小説の感想を聞いている時のことだった。
僕は雫にある質問をした。
「ねぇ、雫」
「ちょっと……歩、何よ?
この私が話しているというのに、それを遮るなんていい度胸じゃない?
私の話を遮ってまでするような質問なんだから、さぞ重要な内容か面白い内容の質問なのよね?
ハッ! まさか、貴方……
この私が超B級ホラー小説の感想に夢中になっているからって、ワザと自分を見てもらうために質問をしたとかじゃないでしょうね!
ああ、きっとそうだわ!
だって『ぼっち』で私以外に友達がいない歩に、この私の話を遮る価値があるほどの質問なんてあるはずないも!
フフン……♪ もう、歩ったら……
私が超B級ホラー小説の話に夢中になっているからって、わざわざそんな質問をするフリで気を引こうとしなくて――」
「雫って『超B級ホラー小説』の話しかしないけど……普通の『ホラー小説』は読まないの?」
「――んも!?」
お! 雫のマシンガンのような口がピタッと止まったぞ!
どうやらこの質問は雫にとって『雫の話を遮る価値があるほどの質問』らしい。
よし、追撃しよう……。
「だってさ、雫って僕に『超B級ホラー小説』の話はしょっちゅうするけど、普通の『ホラー小説』の話は一切しないよね?」
「ななな、何を言っているの……かしら? 歩、それは――」
「もしかして、雫って『ホラー』が怖いの?」
「なにぃにょ!?」
ん? 今……なんて言ったんだ?
「ちょっと、思ったんだけどさ。雫が『超B級ホラー小説』が好きなのって……
もしかして――、
B級のホラーなら怖くないから?」
さて、この仮説が正しいようなら……雫だけに『超B級ホラー小説』の感想を話させるのも忍びないし、僕も普通のホラー小説をしこたま読み込んで雫に感想を聞かせてあげようと思うのだけど……
どうだろうか?
僕がそんなことを考えていると、雫は精一杯の見栄を張るかのように大きな声で反論を返してきた。
「まぁまぁまぁ! 歩ってば、なんて見当違いな勘違いをしているのかしら?
この『学校一の美少女』である私が……『ホラーが怖い』?
ハッ! バカバカしいわ!
そんなことあるわけないでしょう!?
ええ、あるわけがないわ!!
ないのよ! ありえないの!
何故なら、私が『超B級ホラー小説』を愛している理由はそんなちっぽけなことが理由じゃないからよ!
まず『超B級ホラー小説』っていうのは『ホラー』とはまた別ジャンルの作品なのよ!
例えば、漫画にも読む読者層にあわせて『少年漫画』『少女漫画』とジャンルがあるでしょう?
あれと一緒なの!
ももも、もちろん……私だって『普通のホラー小説』くらい読めるのよ?
もちのロンなんだからね!
だけど、残念ながら私の好みとするジャンルは普通の『ホラー』じゃなくて『超B級ホラー小説』なのよ!
ど、どう……? これで分かったかしら?」
「じゃあ、映画は?」
「…………はあ?」
「いや、雫が『普通のホラー小説』じゃなくて『超B級ホラー小説』が好きなのはわかったよ?
でも、『超B級ホラー』って小説だけじゃなくて、映画とかでもあるよね?
だから『超B級ホラー映画』は見るのかな?」
「え、映画は――」
「映画は……?」
「自分でページをめくるわけじゃないから、怖いじゃない……」
やっぱり、怖いんじゃん!
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