第2話

私が小説と出会ったのは、小学生の頃。

文字だけが並ぶ本は心地良かった。

無機質に並んだ単語が、どうしてこんなにも色を見せるのか、不思議で堪らなかった。文字だけで世界を浮かばせる能力が、魔法と呼ばれるものなのだと、信じていた。


こんな世界を、自分も描くことが出来るなら。

そんな馬鹿げた夢を、いつまでも捨てられずにいた。






私は、主人公なのだと信じていた。

それぞれ生きているみんな、みんなに、メインストーリーがあって、主人公なんだと、信じていた。

でももう、そんな自己暗示も、意味が無い。

現実を見る。主人公なんてものは、ほんのひと握りの人間しかなれない。みんなみんななんて、ありえない。


私は主人公になり損ねた。

モブAとして顔も描かれない人生だった。

だから神様とやらは、私の人生を適当に作りやがったんだ。



せめて最後に、文字にして、自分の滑稽さを笑ってから行こう。

馬鹿げた夢に、水を。

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