1.やかましい朝

「おーい、ハル!!

 俺様が直々に

 起こしに来てやったぞ!

 ありがたく思え!」


冗談じゃない。

あたしは寝たのは

3時だぞ。

やかましい。


あたしは『ハル』

それ以外はあまり覚えてない。

どこから来たのか。

何でここにいるのか。

まったくわからない。


ここは『普通じゃない』

奴らが住むシェアハウスらしい。

タダ同然で住まわせてもらっているが、

あたしは『普通』なんだ。

かまわないでほしい。


…といっても

かまってくる奴の一人がこいつ

ドーヴァという名前のヴァンパイア。

ヴァンパイアといえば

夜に現れ、人の血を吸い、

そして朝日を浴びるを灰になってしまう。


そんな存在なのに、

当の本人は

「いい天気だぜ!

 日光浴に最高だ!」

何で日光当たって平気なんだよ。

ふざけるな。

灰になってくれ、頼むから。


「おいおい、俺様が来たのに。

 そんな、顔するなよ」

オマエが来たからだよ。

今絶対あたしの顔しわしわだよ。

不機嫌で、

オマエの所為で!


「なぁー。

 いいじゃないかよ。

 良い朝は飯がうまいぞ!」


おまえのヴァンパイアの要素

どこに行った。

普通の人間のあたしより

人間らしいじゃないか。


「いらない」

朝はそんなに食べられないし。

「そんなこと、言うなよ。

 行くぞー!」

…いつもこうだ。

断っても、断っても

こいつは食堂にあたしを連れていく。

迷惑この上ない。


ここはシェアハウス。

複数人が共同で生活している。

ここまでは普通。

普通じゃないのは


『異世界』にあるということ。


さっきのヴァンパイア然り、

他にもたくさんの化け物たちが

一緒に暮らしている。

…冗談じゃない。

他人と一緒に住むこと自体

あたしはきついのに、

化け物たちと住むなんて

最悪だ。


元の世界に帰りたい。

前の記憶がないが、

こんなところにいるより

ずっとましだ。

…多分。

わからないけど。


そんなことを思いながら、

あたしはドーヴァに引きずられる。

無理やり食堂へ連れてかれる。



早く、元の世界に戻ってやる。

絶対にだ!



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