第40話ダンスィ5

「お母さん。

 余計なお節介なのは分かっているんだが」


「何だい。

 改まっちまって」


「敦史君達の事なんだが」


 俺は敦史君達を家に送り届けてから、中華店に行った。

 そこで思い切って正直に全部話した。

 敦史君達の事やお母さん達の事を考えると、それがいいと思ったのだ。

 敦史君達の遠慮が原因で、お母さん達が叩かれてはいけない。

 敦史君達に言ったの同じことをお母さんにも言った。


「そうだったのかい。

 気を遣わせちまってすまないねぇ。

 まだ私達には遠慮があるんだねぇ。

 王子には悪いけれど、これからも気にかけてやってくれないかねぇ。

 あの子達には、どうしても人を恐れる所があるようだ。

 いや、暴力なんかよりもっと奥深い、人に嫌われることを恐れてしまうと所が。

 でも、王子や護衛の人には、少しは甘えられるようだ」


「お母さん」


「私だって伊達にこの歳まで生きてきたわけじゃないよ。

 王子が訳有りだってことぐらいわかるさ。

 教団や政党、マス塵との事を見ていたら、強い力があるのも分かる。

 そんな王子と護衛さん達ならさぁ。

 少々のことがあっても、敦史君達を護れるだろう」


 お母さんはどう言うつもりなんだ?

 敦史君達の事を俺達に丸投げするつもりか?

 手助けはするつもりだったが、全部の責任は持てないぞ。

 だが、ここで戸惑っている俺の器量が小さいんだ。

 こんな事の全てを理解してた上で、お母さん達は敦史君達を引き取ったんだ。


 中華店が忙しくて、満足に敦史君達を世話できないのも予測していただろう。

 何かあれば、教団とマス塵に袋叩きにされるのも予測していただろう。

 それだけ分かっていたのに、見て見ぬ振りをせず、敦史君達を助けた。

 自分達の安全や平和よりも、敦史君達が生き残れる方法を選んだ。

 金儲けと嗜虐心を満たすためだけに、正義を振りかざす腐れマス塵とは雲泥の差だ。


 俺も同類に成り下がるのか?

 ここで口先だけいいかっこをして、責任を負わないで何が男だ!

 人の失敗を口にするのなら、最低でも同程度の負担と責任を負うべきだ。

 マス塵と同類になるのだけは絶対に嫌だ!


「お母さん。

 任せてください。

 敦史君達は絶対に護り抜きます。

 今日中に敦史君達がビルで住めるようにします」


「何を勘違いしているんだい。

 何も敦史君達を引き取れなんて言っていないよ。

 敦史君達は今迄通り家に住んでもらうよ。

 ただね、まだ私達には遠慮があるから、王子達が色々聞き出してやってよ。

 それとね、教団や政党、マス塵の悪意から守ってやって欲しいのさ」


「任せてください。

 今度ちょっかい出してきたら、地獄に送ってやります」

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