第7話誘拐7

 剛龍が子供達に経口補水液を飲ませ終わった頃、救急車が到着した。

 救急車が子供達を病院に運び終えた頃に、やっと警察がやってきた。


「お前達が連絡してきた探偵か?」


「はい。

 貴男がこの家の虐待を隠蔽した教団員の警察官ですか?」


「何だと!」


「この家の状態と、学校と警察が教団と政党の圧力で虐待を見てみぬ振りをしていたことは、動画投稿した。

 誘拐事件を利用して、子供を殺して口封じなどさせんからな」


「誰がそんなことするか!

 見損なうな!」


「あんたがやらなくても、警察内にも教団員や政党員がいるだろう。

 あんたより上役の人間が命令したら、唯々諾々と従うんだろう」


「……そんなことになったら、あんたらに連絡するから心配するな」


 なかなか漢気のある人間のようだ。

 できない事を大言壮語することなく、情報を流すという。

 これなら信用できる。


「分かった。

 だがこの子が虐待されないか心配だ。

 警察で保護するか、両親から眼を離さない欲しい。

 できれば警察内の教団員や政党員からもだ」


「……約束はできない。

 手続きはするが、警察内には隠れ教団員や隠れ政党員がいる。

 そいつらの動きまでは分からん」


 なるほど。

 以前の調査で知り合った市役所職員が、葬式で初めて教団員だと分かった市役所職員が沢山いたと言っていた。

 その多さは、恐怖を感じるくらいだったと言っていたな。


「だったら、この子を私達に保護させてもらえませんかね。

 教団員の上役や議員が何か言ってきたら、色々とSNSに投稿されますよと耳打ちして欲しい」


「色々とかね?」


「ええ、色々とです」


「さて奥さん。

 誘拐の脅迫電話がかかっていると思うが、どうなっているんだ」


 事情聴取ですか。

 俺達のいる前で事情聴取するなんて、情報を流してくれているんだね。

 警察官としては問題あるが、なかなか乙なことをやってくれる。


「そんなものかかてきていないよ!」


「だったら何で子供がいない。

 ここまで来て嘘を言ってもどうにもならんぞ!」


「ふん!

 嘘なんかついていないよ!

 家が嫌になって出て行ったんだろうさ」


「それはお前達が虐待したからだろう!」


「虐待なんかしていないよ。

 私達はできの悪い子供に躾していただけさ。

 教団も政党の議員さんも、それを認めてくれたよ。

 あんたのような下っ端警官に何もできないよ!」


 警察官がギリギリと歯を食いしばっている。

 今迄も色々とあったのだろう。

 教団や政党の圧力で、見逃さねばならない悪事があったのだろう。

 それでも腐る事なく、やれる範囲の正義を行ってきたのだな。


 だが、母親も嘘は言っていないように見える。

 誘拐犯は身代金目当てではないのか?

 だとしたら、愉悦のための誘拐か?

 その方が心配だ!

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る