第7話


 一体このは何を言ってるのか。


 以前、妹の美晴から酔い潰れた私を運んでる最中に偶然出会った同級生が家まで運ぶのを手伝ってくれたという話は聞かされていたけど、こんなハイスペックJKだったとは。


「ええとセオイちゃん、それは・・・最近付き合い始めた彼氏が奥手で、セオイちゃんがリードしたい、てこと?」


 いえ、と目の前の美少女は真っ直ぐあたしを見すえたまま首を横に振った。


「私はある男子に告白をしました。すると『今は童貞を捨てる以外には何も興味を持てないから』と言って断られたのです。私は悔しさの余り『彼の童貞を奪い、私にベタ惚れの状態にした上で捨てる』と大切な友人の前で宣言してしまいました。我が家の家訓は【有言必行】です。その為にもお姉さんの御教授が必要なのです」


 うん、話の半分くらい意味が分からん。


「とりあえずあたしは君にエロテクを仕込めばいいてことかい?」


 はい、とセオイちゃんは頷いた。


「ただ、私に必要なのは基本です。基本を教えて頂ければ、あとは私のやり方を追求していけると思うのです」


 基本かぁ・・・。


 私はキャバでけっこう頑張ってて、いまナンバー2なんだけど、実はセックスの経験はない。どうしよ、なに教えよう。


「まぁ、まずはキスだよね」


 我ながら当たり前すぎることを言ってしまったが、セオイちゃんは真剣な眼差しで頷いた。


「キスには、どういう流れで持っていけばいいですか?」


「まぁ普通に、お酒に酔ったふりをして・・・」


 お姉ちゃん!不意に背後から呼ばれて振り向くと、我が妹が怖い顔で睨んでいる。


「お酒は、ダメ!」


「ああ、うん。そうだよね。高校生だもんね」


 なにこのアウェイ感?なぜあたしが追いつめられているの?


「キスは・・・まぁ、あなたは高校生だから、遊園地に行ったりして、暗くなったタイミングでチュッとすればいいんじゃね?」


 ふむ、とセオイちゃんはアゴに手をしながら頷いた。納得してくれたのかな?


「柔道には右組、左組とありまして、今は両手で相手の袖を掴んだら反則で、足を取っても一発アウトです。キスにも右とか左とか、キス中にそれをしたら一発アウトとかて、あるのですか?」


 こりゃ面倒くさいなぁと内心ため息を吐いた。とりあえず今まで友達から聞いた話を、私が体験したことのように話しておこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る