第3話 (手直し)

 店が休みの日は朝は起きるのが遅い。

 福ちゃんもわかっているからか、来る時間を遅くしてくれているはず。


 でも、今日はいつもの休みの朝よりも寝坊をしいた。


 コツコツ、コツコツ、コツコツ。


 んんっ、誰かがガラス窓を叩く音が聞こえた。


「……誰?」


 目を覚ますと窓には怪しい影か見えてた。


「ホーホー」

「ふ、福ちゃん⁉︎」


 慌ててベッドから起きていつもの窓を開けた。


「ホホー」

「あはは……ごめん、いつもよりお寝坊だったね」


 そうだと言わんばかりに体全体を使って、コクリと頷く福ちゃん。

 わたしのお友達は時間に手厳しい。


「ホーホー」

「え、朝の挨拶を忘れてる? ……もう、忘れてないよ。おはよう福ちゃん」

「ホー」


 福ちゃんはそれに満足したのか、もう帰ると飛んで帰っていった。


「またね、明日ね!」


 さてと、わたしも仕事着の洗濯を終わらせてから、港町に出掛けよう。

 昨日作り置きをしておいた、硬めのツナのおにぎりにかぶり付いた。


 港が近いからお魚が美味しい、お魚のバーガーのお店に、串焼き、新鮮な海鮮丼。

 新しくオープンした、チョコレート屋にクッキー屋にも、覗きに行きたいところだ。


 もう一個と、お皿に手を伸ばしたのだけど。


「あれっ、もう無い」


 いつの間にかお皿の上の五個のおにぎりは食べ終えていた。

 

 さてと、やるか。店の裏の井戸に出て仕事着の洗濯を終わらせて。ワンピースに着替えて港町へと繰り出した。


 港街には着いたのはお昼ごろで、商店街の中は活気に溢れ。

 新鮮なお魚を求めた人達で混雑をしていた。


 わたしもその中に混ざりお財布片手にお店を覗く。


 一度はお給料日まで待てず宝石を売ろうとしたけと、この街では鑑定できる店が無く売るところがないと知った。

 やはり宝石の類は王都に行かないと扱う職人さんがいないらしく、ここでは無理らしい。


 ドレスと宝石達はタンスに貯金中だ。


 そんなに贅沢をしなければ、カリダ食堂のお給料でなんとかなる。

 古着と古本、後は食費だけだもの。


「んん~っ、いい匂い」


 串焼きの前で足が止まる、お店に入って海鮮丼を食べるか、店先の串焼きか迷う。


(どちらにしようかな神様の言う通り)


「よし決めた! 小海老の丸焼き串とアジフライをください」


「あいよ、ソースと醤油どっちにする?」

「醤油でお願いします」


 お店の前にあるベンチに座り焼きたての小海老の丸焼きを頬張り、揚げたてのアジのフライにお醤油をかけた。


 小海老がよく焼かれていて殻までパリパリ食べれて。


「エビの濃厚な味噌が美味しい」


「キュ」


(キュ?)


 小さな鳴き声がして前を向くと、向かい側の休日のお店の前に真っ黒で、もふもふな毛並みの子犬がお利口に座っていた。

 あの子は飼い主を待ってるのかな?


 可愛いつぶらな琥珀色の瞳なのね。

 その子は私と目が合うと、トテトテと走り、わたしの前にちょこんと座った。


「キューン」


 鳴き声も可愛いわ。


「キュン、キュン」

「ごめんね、小海老とアジフライは君にはあげられないの」


 辺りを見たけど、近くに飼い主らしき人はいないけど、どこかで買い物中?


「キューン」


 わたしを真似て首を傾げるポーズする、この子の可愛い。

 飼い主が来るまで、もう少し一緒にいたいと、お休みのお店も見渡せる時計台のベンチに腰掛けた。


 子犬ちゃんを膝の上に乗せて、ふわふわ、もこもこな毛を撫でて楽しむ。

 この子、首をしていないけど毛並みがいい。


「早く飼い主さんが来てくれると、いいね」



 そのとき、耳の奥が騒ついた……。

 

【キーーン】


 この場所でするはずの無い、音が頭の中に響く。わたしは子犬ちゃんを撫でる手を止めて、顔を上げ周りを確認した。

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