婚約破棄をしたのだから、王子よ、わたしを探さないで‼︎

にのまえ

プロローグ (手直し)

「ルーチェ嬢あなたと婚約破棄をする。私は心の底からリリーナ嬢を愛してしまった」

「ごめんなさい、私もカロール様を愛してしまったの」


 頭がお花畑の二人は壇上に立ち、自分達の世界に酔いしれている。

 その後ろではリリーナ嬢親衛隊とでも言うのでしょうか?


 この国を担う、宰相の子息、騎士団長の子息、魔法省の子息、幼馴染みたちは怖い表情を浮かべてわたしを睨んでいる。

 そんなに睨まなくてもいいのに――この人達はわたしのことを二人を引き裂く、悪女だと思っているのでしょうね。



(もちろん、そんなことは致しませんわ)

 

 

 それよりもあなた達は周りをご覧になって、急に大声を出すものだから。

 せっかく舞踏会を楽しんでいた皆様が戸惑っていますわよ。どう収拾をつけるおつもりなのかしらね。


 それは頭の中に咲き誇るお花畑のせいでしょうね……


 シャンデリアが煌めく会場で一際目立つわたしのドレスと宝飾品を見ても、なんとも思わないのかしら?


 慰謝料――コホン、いいえ。


 この日の為にと作っていただいた、オートクチュールのドレスと宝飾品の数々。

 当の本人、カロール殿下はリリーナさんに夢中でしたから、これ幸いと好き勝手に高価な物ばかりを選ばせていただきました。


 でもご安心なさって、カロール殿下がリリーナさんに送っていた宝石よりはどれも安物ですわ。

 

 わたしは満足のいく慰謝料と迷惑料はいただきましたので……

 だから、今から言うことも決まっていますのよ。


「婚約破棄ですね承りました。国王陛下へのご報告、書類のことなどはすべてカロール殿下にお任せいたしますわね」


 にっこりと微笑んで、深くこうべをたれた。


 わたしの行動に驚いたのはお二人の方……あらあら、そんなに驚かなくてもよろしいのでは?


 お二人はこんな公の場で「どうしてですの!」と叫び、泣き叫ぶとでもおもっていたのでょうか?



 まぁ二年前のわたしでしたら、そうしたかもしれませんけど……



 カロール殿下のことはすでに吹っ切れておりますし、これからのことで頭が一杯ですわ。

 さて、わたしはそろそろおいとまいたしますか。


「ルーチェ嬢、本当にいいのか?」

「ねぇ、いいの?」


 なにをいまさら? 


 いいに決まっております。


「では、最後に一つだけ申し上げるとしたら――カロール殿下のことはお慕いしておりました。愛するリリーナさんとお幸せになってくださいませ、ですわね」


 会釈をして、二人に背を向けた。

 後ろで何をおっしゃっても、振り向くことは致しませんわ。

 だってわたしの役目は終わったのですもの。


 今日で悪役令嬢ルーチェは終わり。


 物語の通りに進むのなら公爵家も追い出されるでしょう。

 今日で窮屈だったお嬢様も終わり。


 このまま、わたしは消えようと思います。

 それでは皆さまごきげんよう。


 ――あ、言葉遣いも最後ですわね。

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