Calamity Armours前日譚

鳥皿鳥助

~1年前~

 





 ―――――???サイド―――――






 画面の向こう側で黒っぽい、よく分からない絵を背景に立っている男。

 彼は“Exceedエクシード Starsスターズ”という大企業の社長、星野ほしの影郎かげろうだ。


 彼の会社は脳波解析型VRヘッドセット……いわゆるフルダイブ型、“装着者の意識をゲーム世界に送る”装置を発明した。

 同業者が分解して解析するも、重要なパーツの一つが未知の技術で作られているらしい。それ故に機器本体は他企業が模造品を製造出来ないため、市場は独占状態。かの会社にソフトを作る余裕が無くなるほど売れている……と言われている。


 そんなExceedエクシード Starsスターズから、今回の会見はマスコミ各社にその存在が告知された。


『我社が家庭用ゲーム向けに開発致しました、“脳波解析型VRヘッドセット”の発売から数年……この世には、様々なVRゲームが普及しました。良いものから悪いものまで、正に星の数ほど……』


 情報を送られたマスコミ各社は驚愕した。

 今まではExceedエクシード Starsスターズは今までマスコミの取材を一切受け付けていなかった。そのせいで少々マスコミには嫌われている……なんてこともあったが、かの会社は法律に抵触するようなことはしていない。どちらかと言えばマスコミの方がヤバイことをしていたという噂はあるが……


 マスコミ各社は、やったことがやったことなだけにかの会社エクシード・スターズに嫌われている自覚はあった。ダメ元で中継行おうと許可を求めて連絡をとったらしい。するとあの社長は呆れるほどすんなり中継を受け入れてくれたとか。


 多くの人が注目しているであろうこの中継、画面の向こうにいる星野社長は緊張した様子も見せずに話を続けている。


『そして……その星の中に我社が開発したゲームは存在しませんでした。そう……存在しなかったのです。“今まで”は……』


 某動画サイトのネット中継では、画面が埋め尽くされるほどのコメントが流れている。

 かくいう俺も書き込んでいる。


『我社は来年…………VRゲーム、【Calamityカラミティ Armoursアーマーズ】の発売を宣言いたします! 』


 ネット中継では『ようやくか! 』『キタキタキタキタ―!! 』『待ってました! 』『遅かったじゃないか……』『歓迎しよう……盛大にな!! 』『全裸待機なう』『キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!』『今から全裸になったら風邪引くぞ、服着ろ』『やだ……イケメン……』『ウルサァァァァアァアアアアイ!! 』『おまいう』『すっ、すまん』『許さん』『大根役者はギルティ』といった中々にカオスなコメントで溢れた。

 テレビの方で解説をしていたアナウンサーも驚愕で言葉が出ない様子だ。


『私がそう宣言したところでどんなゲームかわからない以上、すぐに評価はできないでしょう。なのでこれより……ティザーサイト、そして先行PVを公開いたします』


 星野社長の言葉とともに検索用キーワードとURL、そして巨大なロボット等が背景にスライドショーの様に表示されていた。

 スマホで検索してみたがサーバーは既に落ちていた。早すぎるサーバーダウンではあるがそれだけの人が注目しているという事だろう。


『以上で今回の発表を終わりとさせて頂きます。お付き合い頂き誠にありがとうございました』


 星野社長がそう言うと、時間にして十数分程度の中継は終了した。

 テレビ中継ではアナウンサーと評論家があれこれ喋っている。が、俺はあれこれ喋っている人達に興味は無いのでさっさとテレビの電源を切った。


 俺はソファーに座りながら、先程中継で映像を少し見た【Calamityカラミティ Armoursアーマーズ】について考え込む。

 パット見でも映像はかなり綺麗なもので、来年発売ということは今からβテスターの一般公募などもやるのだろうか。

 俺は今年、手が空いていないから出来るやつが羨ましい限りだ。


 それにしても……


「来年は出来るかな~……いや、出来るかじゃない……やるんだ……!! 」

「そうかい。ならさっさと仕事を済ませることだね、新入り君。この仕事が終わればしばらくは休めるだろうさ。多分だがね」

「うっ……分かってますよ係長…………」


 うっかり漏れ出た言葉を拾った課長と俺は、古いテレビのある休憩室から外新品中骨董品なデスクへと戻っていった。






 ―――――掲示板サイド―――――






【来年】カラミティアーマーズについて語り合うスレ Part1【発売】


 1 名前:名無しのCA乗り希望者

 ここはつい先程発売が発表された【Calamityカラミティ Armoursアーマーズ】、公式略【CA】について発売を心待ちにしながら語り合うスレだよ。

 基本自由だけど節度は守ってね?


 次のスレは>>950が建ててくだちゃい。






 881 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>776

 ES社がVRソフトを売らなかったのは生産ラインが足りないからとかの理由だったはず


 882 名前:名無しのCA乗り希望者

 おっすおっす~

 まだ公式サイト見てないけど来たぞー……ってかもうこんなにスレ進んでんだ


 883 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>776 >>881

 その辺は公式発表無いからただの噂だけどね


 884 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>882

 いらっしゃい

 公式サイトは見る価値あるよ……まだ鯖落ちしてるけどな!!


 885 名前:名無しのCA乗り希望者

 鯖落ち長すぎでね? もう発表から6時間だぜ……


 886 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>882

 遅かったじゃないか……


 887 名前:名無しのCA乗り希望者

 そりゃあ、世界で初めてフルダイブVR装置を作った会社の緊急会見だからな

 日本だけじゃなくて海外連中も注目しているだろうよ

 そうなると国内だけじゃなくて海外からもアクセス集中するよねって言う


 888 名前:名無しのCA乗り希望者

 海外勢と言えばさ、海外展開ってどうなるんだろうね


 889 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>886

 貴様は“CA”じゃなくて“AC”乗りだろうが


 >>888

 発売地域どころか値段も操作方法も一切分からないって言う


 890 名前:名無しのCA乗り希望者

 公式サイト見た感じだとかなりクオリティ高かったし来年までで時間足りるのかな? 終盤になったらストーリーのクオリティが落ちるとかありそうで怖い


 891 名前:名無しのCA乗り希望者

 ストーリー設定以外のゲームシステムってティザーサイト見た感じだと全くの不明なんだよな……?

 今から不明な部分を作ってるとして……最悪はES社のプログラマーが徹夜するのか、発売を延期するのか……


 892 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>891

 前者はヤメロォ!(建前) マジでヤメロォ!!(本音)


 893 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>891

( ―人―)ES社社員……南無南無……


 894 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>891

( ―人―)南無南無……かわいそうに……


 895 名前:名無しのCA乗り希望者

 開発が間に合いそうにないなら発売延期していいのよ……

 マジで発売延期して良いのよ……?


 896 名前:名無しのCA乗り希望者

 あの会社はホワイトって噂だから大丈夫やろ………………大丈夫だよね? 大丈夫だろ??

 星野社長を信じてるからね???


 897 名前:名無しのCA乗り希望者

 今北産業

 やっと公式サイト見れたんだけどなんやあの映像ゥ!

 ES社頭おかしいんじゃねぇの(褒め言葉


 898 名前:名無しのCA乗り希望者

 どうせあの武器強さも動きも、全てムービーだけなんだろ? ESマジックなんだろ!?

 俺は詳しいんだ……ッ!!


 899 名前:名無しのCA乗り希望者

 すごく綺麗な映像だと思いませんか?

 僕は(まだ見れてないので)思いませんけど。


 900 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>898

 それがありえるかもっ♪


 901 名前:名無しのCA乗り希望者

 操作がどうなるか分からないのはちょっと不安要素だよな

 コックピット視点になるのか、ロボ視点になるのかとかも分かんないし


 902 名前:名無しのCA乗り希望者

 あー、その辺も確かに気になるねー


 903 名前:名無しのCA乗り希望者

 そっちもだけどカスタマイズ関連もお忘れなく

 機体開発が自分の手で出来るのかとかNPCに作らせるだけなのか気になる


 904 名前:名無しのCA乗り希望者

 某VRMMORPGだとプレイヤー製の武具もNPC製の武具もあったしCAも多分同じになるんじゃない?


 905 名前:名無しのCA乗り希望者

 既存のロボットを組むだけじゃなくて自分の手でロボット作れるなら面白そうではあるけど

 ……システム的にもプレイヤー的にも面倒なことになりそう


 906 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>904

 また別のオフラインファンタジーのやつだと武具は全部自分でトンテンカンテンしないといけないとか面倒なのがあってだな?


 907 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>905

 それ。自分の手で1から作りたくはある

 ただなぁ……容量とかシステム面がキツそうだよなぁ……


 908 名前:名無しのCA乗り希望者

 某ハリなウッドの映画か! ってぐらい映像が綺麗かつ大迫力だった


 909 名前:名無しのCA乗り希望者

 おうおう、どこぞのフ□ムみたく手抜き()なのかぁ?

 変態技術者共が……ッ!!


 910 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>906

 あれはあれでコアなファン付いてるから……


 911 名前:名無しのCA乗り希望者

 公式サイトのストーリー説明見た?

『惑星は戦場へと成り果て、人々は人工的に作られた衛星へとその居住地を変えていった』ってやつ


 912 名前:名無しのCA乗り希望者

 見た

 最初見た時「どんなf○? 」ってなってたわ。でも複数勢力で争ってるから「宇宙に行けたV○じゃん」になった


 913 名前:名無しのCA乗り希望者

 あれな~……宇宙に住んでるなら宇宙での戦闘とかあるのかな


 914 名前:名無しのCA乗り希望者

 VRで宇宙○紀とか絶対に酔う(確信)


 915 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>913

 見た感じ宇○世紀は無理なんじゃないかな

 ブースターとか結構付いてたけど地上戦がメインって感じだったし


 916 名前:名無しのCA乗り希望者

 ムービー中でやってた回し蹴りとか使えるのかな

 出来るならゲーム内でも使ってみたい


 917 名前:名無しのCA乗り希望者

 公式のティザーサイト見た感じだと補助AI次第っぽい……のかな?

 以降で調整とか変更あるかもしれないらしいけど複数種類のAIを用意するらしい


 918 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>916

 その辺もカスタマイズ次第っぽい

 補助AIとか特にいじらなくても良い詳細設定と機体カスタマイズとかの絶対にいじる必要のある設定があるらしい。発売する頃には変わってるかもしれないけどな


 919 名前:名無しのCA乗り希望者

 カスタマイズ項目中々に多いのな

 またガレージで一日を費やせるのかぁ……楽しみだなぁ……


 920 名前:名無しのCA乗り希望者

 そんな特化機を組んで喜ぶか……変態共がッ!!


 921 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>920

 ありがとうございます!


 922 名前:名無しのCA乗り希望者

 ↑の変態はさておき、特化機は作ってみたいよね

 ロマンがある


 923 名前:名無しのCA乗り希望者

 個人的には癖の少ないオールラウンダー機がすこ


 924 名前:名無しのCA乗り希望者

 鯖落ちって解消されたの?

 まだティザーサイト見てないから落ちてないなら見たいんだけど。


 925 名前:名無しのCA乗り希望者

 そろそろ解消してるんじゃない?


 926 名前:名無しのCA乗り希望者

 ムービーの途中でちょろっと出てきたケーブルまみれの機体、あれ格好良かったよね

 実験機的なやつ


 927 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>935

 サンクス、見てくるわ


 928 名前:名無しのCA乗り希望者

 その後、>>927 を見た者は居なかったという……


 929 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>928

 あっ……


 930 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>928

 嫌な……事件だったね……


 931 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>928

( ―人―)南無南無……可愛そうじゃない>>928君……


 932 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>928

 スコップで殴打リンチされるのかぁ……


 933 名前:名無しのCA乗り希望者

 おいおい、>>928 君……騙して悪いが俺はこの通り生きてるぜぇ? 死体の確認はきっちりしねぇとなぁ……


 934 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>933

 で、ティザーサイト見てきた感想は?


 935 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>933

 ナッ……ナニィィィィイイ!? 俺の究極奥義を受けてなお生きているだとォォォオ!!

 貴様……常人ではないなッ!!


 936 名前:名無しのCA乗り希望者

 うるさすぎて草


 938 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>934

 最高にワクワクした

 全体的にワクワクはしたんだけどさ……特に印象に残ってるのは最後に出てきた惑星を囲んで回転してた3つの人工物な

 あれは中に行けるのかな?


 939 名前:名無しのCA乗り希望者

 大きな人工衛星……どこぞのエイ○ースみたいに爆発事故起きそう


 940 名前:名無しのCA乗り希望者

 ストーリー説明の書き方的には多分居住ユニットが大半なのかな

 だとしたら研究施設は地上?


 941 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>939

 おいばかやめろ


 942 名前:名無しのCA乗り希望者

 あー、確かに研究所地上はありそう。んで、プレイヤーは人工衛星に入れないとか、○aのクレイドルみたいなシステムになりそう


 943 名前:名無しのCA乗り希望者

 そういえばクレイドルって○Dでも出てきたんだっけ?


 944 名前:名無しのCA乗り希望者

 長距離射撃と近接、どっちが強いんだろうな


 945 名前:名無しのCA乗り希望者

 んなもん使いこなせば全部強いだろうさ。

 だから全部の武器を使うんだよォ!!


 946 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>943

 自分は見たこと無いけど見てないけどそうらしいよ


 947 名前:名無しのCA乗り希望者

 武器も良いけどロボゲーならパーツもな

 ゲームシステムにもよるけど組み合わせでエグい効果出すやつがたまにあるから


 948 名前:名無しのCA乗り希望者

 βテストやるんだったらその辺の検証も出来たら良いな~……

 物によってはリリース時に大幅修正されてそうだけど


 949 名前:名無しのCA乗り希望者

 出来ることならカスタマイズ項目多いならテンプレ装備の開発とか早めにやって欲しい

 正直カスタマイズに自信ないから……


 950 名前:名無しのCA乗り希望者

 次スレ立てたぞ

 https://www…………


 951 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>949

 それ

 マジで頼む


 952 名前:名無しのCA乗り希望者

 >>949

 カスタマイズ項目多いのはなぁ……他の要素を楽しみたいんで……


 >>950

 スレ建てサンクス


 953 名前:名無しのCA乗り希望者

 そら、VRだからロボ要素以外を楽しみたい奴も居るわな。


 >>950

 ありがとう



 こうして掲示板は更に会話が進んでいったとか進んでいなかったとか……






 ―――――Exceedエクシード Starsスターズ サイド―――――






 とある星、とある国、とある施設…………その一角にある薄汚れた部屋。

 そこには周りと同様に白衣を汚れさせた男、そして屈んだ状態で沢山のケーブルに繋がれたロボットが佇んでいた。


 しばらくケーブルに繋がれたロボットを何処か淋しげな視線で眺めた薄汚れた白衣の男。彼は再び動き出し、忙しそうに机に散らばった大量の資料を片付けていた。

 白衣の男は数十分で全ての資料をコンテナの中にしまい込み、コンテナの上に座り込んだ。

 その視線はすっかり設備が回収され、見た目が寂しくなった施設を見回した。

 あちこちに付けられた小さな傷、そこそこの大きさのへこみや燃えたあとの模様。その一つ一つには様々なエピソードが存在する。


 ――あそこの傷は試験稼働の時にうっかり付けたやつ、そっちの傷はパーツ交換時にうっかり落としたパーツのせいで出来たやつ、こっちのへこみはジェネレーターリミッターをうっかり付け忘れて爆発させた時に出来たやつ……


 だが、最後に目につくのは……


「すまんな、完成させられなくて。俺たち……役目を終えちゃったよ……」


 この施設で一番大きな物、それはCalamityカラミティ Armoursアーマーズ……略称【CA】、その試作機だった。


 この機体を眺めている彼とは別チームの奴らが作った量産機とはまた違った設計思想、現地民との協力で作り上げられたこの機体。データ収集が出来なかったが為に完成はしてるとは言えない。

 だが……そんな未完成段階ですら、計算上は数分で数十の量産機を屠れると出ている。

 だがそんな高性能機もパイロットが搭乗し、動かさなければただの鉄くず。この言葉に幾度となく腹を立てたが彼らの言い分は間違ってはいない。


「だが……運命のパイロットさえ見つかれば……」


 そう、少々高性能過ぎるが故に操縦が困難になったのだ過ぎたのだ。

 協力してもらった現地民曰く『AIも機体も万全の状態だ。あとは“運命のパイロット”さえいればどうにかなるさ。まぁ、それが大きな問題なんだがね』とのことらしい。彼も“運命のパイロット”がここまで見つからないとは思っていなかったらしく、何度か頭を下げてきたことがあった。だが彼らと共に過去の文献を漁り、機体を作り上げるのはとても楽しかった。だから謝らないでくれとその度に伝えたこともあったな……


 機体に手を当て、下を向きながらそんなことを思い返していると一人の男が入ってきた。


「失礼します、主任。そろそろお時間が……」

「そうか……そうだな。そろそろ行くとしよう」

「主任、こちらはどうしますか? “向こう”に持ち帰るには少々大きすぎる上に保管、整備を行う施設の確保は難しいと思われますが……」


 部屋に入ってきた男は彼の部下に主任が荷詰めをしたコンテナを外に出すよう指示し、最後に残った試作型CAに目を向けた。


「これは置いていく。君の言う通り、“向こう”には置き場所も必要もないからね……」


 そう呟く“主任”と呼ばれた白衣の男。

 後から部屋に入ってきた男はやや早足気味にこの部屋を去っていった。

 主任も彼の後を追い、部屋を出ようとしたが……


「おっと……こいつは置いていくとしよう。運命のパイロット君が、ロボット愛に溢れる奴である事を祈るよ」


 主任は唯一持っていたその手に分厚い紙の束を試作型CAのコックピットに置くと、先にこの場を去った男の後を追った。


 主任が最後の最後にコックピットへ置いていった分厚い紙の束。

 それはこの機体の関連資料だった。


 そしてそこには……



【機体名】アルゴン



 そう書かれていた…………




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