第110話「第三部の登場人物」

――聖王国


 聖王 ヒエロス・アヴェスター 五十五歳


 綺羅びやかな金糸の聖衣に身を包んだ恰幅かっぷくがいいおっさん。

 聖王は、始まりの女神アリアが生み出した最初の人族の末裔と言われる聖人である。

 良く言えば温和そうで悪く言えばどこかおっとりと頼りなげな聖王は、その見かけからはとてもそうは思えないがこの世界で唯一、創造神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを持つ神の代行者である。


 大司祭にして大宰相 リシュー・エーグノ 三十九歳


 豪奢な赤いローブを翻した、非情かつ傲慢そうな印象のその壮年の男性。

 聖王国の序列第三位。聖王の外戚でもあり、大司祭にして大宰相にして公爵の地位にある。

 名目上は聖王に従っているものの、国の実権はリシューの派閥が握っている。


 聖姫 アナスタシア・アヴェスター 十七歳


 美しいドレスに身を包んだ王女。

 セミロングの銀髪プラチナブロンド。ほっそりとした体躯に、淡雪のような肌。

 碧い瞳にどこか優しげな光をたたえる一方、引き結ばれた口元が芯の強さを感じさせる。

 聖王ヒエロスの一人娘であり、いずれ継承者となる聖王国第二位。

 ただしその地位は、お飾りとしてであり実権は大宰相リシューが握っている。


 枢機卿 グハン・エルク 四十二歳

 

 黒い僧衣を身にまとった男。

 聖王国の大臣とも言える枢機卿は十二人いるが、グハンは十三人の員数外の枢機卿である。

 それは彼が、聖王国の諜報組織である『暗部』を担当しているからだ。

 その性質上他の聖職者からは見下される存在であったが、リシューが大宰相になってからは重用されて地位も向上している。

 それゆえグハンはリシューに忠誠を誓い、積極的に諜報活動を行ってきた。


 暗黒騎士 グレイブ・ガス 三十五歳

 

 正式な聖王国の騎士をその白銀の甲冑から白騎士と呼ぶが、聖王国の諜報組織である『暗部』に仕えているグレープは暗黒騎士と呼称される。

 格好も他の騎士とは違い軽装で、騎士の誇りにはこだわらない。

 金髪で渋い声が特徴のおっさん。

 鎧を装備することもあるが、暗黒騎士の名称は白騎士と対比させるだけの蔑称で黒い甲冑を身に着けているわけではない。


 英雄神の加護☆☆《ツースター》に加えて、与えられた暗黒神の加護★★★★フォースターで星六。地味に星五の限界を突破している。

 これは偶然ではなく、暗黒神ヤルダバオトに目をかけられている一人であるため。

 グレイブが選ばれたのは、その悪運の強さか。

 望んで与えられた神技は耐火で地味ではあるが、神技の使い手との戦いでは経験豊富なグレイブは爆弾を駆使して効果的な攻撃を模索する。


――猫耳商会


 船長 クリスピー


 揺れる猫耳。首に可愛らしい鈴をつけた赤毛の猫妖精ケットシー

 小柄な身体に船長服を身に着けている。

 全然似合ってないが、これでもベテランの船長である。


 支店長 フレーク

 

 商人服を着た少し困り顔の黒毛の猫妖精ケットシーの男の子。

 聖王国方面の支店長を務めている。

 心配性で知性派、船では参謀役。


――月狼族


 月狼族の族長 ルナ 十八歳


 灰色に濁った凶暴そうな瞳、猛々しい表情。

 戦士として引き締まった身体を持つ。

 一族の長として、厳しい環境をくぐり抜けてきた。

 大宰相リシューに一族を滅ぼすと脅され、大恩あるアナスタシアを暗殺することを迫られる厳しい立場に置かれる。


 月狼族の戦士長 ドウカン 五十五歳。


 大柄な戦士。月狼亭では、器用に料理人もこなす。

 若いルナに族長の重荷を背負わせていることを気にしており、命をかけて支えようとしている。


――タダシの子供たち。最初の十人。


 イセリナの子 リョウ

 

 タダシの最初の子であり長兄。

 エルフの始祖、古王エヴァリスの血を引く元女王であるイセリナの子。そのため、タダシ王国の王太子となることが確定している。

 少し耳が長いのは海エルフであるイセリナの血、可愛らしい銀髪の子供。

 瞳はタダシと同じ黒。

 癒やしの神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 マールの子 ミライ


 長男のリョウに続いて産まれた長女で、タダシとマールに良き未来があってほしいと願いを込めて名付けられた。

 マールと同じく穏やかで優しそうな印象を受ける。

 農業神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 マチルダの子 セージ


 マチルダの産んだ長子ということで、すでにフロントライン公国の王太子となることが確定している。

 タダシ譲りの黒目に、マチルダ譲りの金髪の髪。

 名前の由来のセージは、公国でもハーブとして使われるサルビア種の多年草。

 優しく人の役に立って欲しいという願いと、政治を司る立派な人物になって欲しいというダブルミーニング(母親のマチルダが脳筋なだけに……)。

 赤子にしてすでに強そうで、マチルダ譲りのパワーを引き継いでいるのが見て取れる。

 公国の未来がかかっているので、ともかくも元気に育って欲しいと関係者一同が願っている。

 英雄神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 獣人の勇者エリンの子 ユウキ


 エリン譲りの燃えるような赤髪の男の子。

 芯が強そうに黒い瞳を輝かせている。

 エリンの子だからこれしかないだろうと、ユウキと名付けられた。

 英雄神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 商人賢者のシンクーの子 ケント


 猫妖精ケットシーの血は強いのか、この子はシンクーにそっくりな青い髪で青い瞳だった。

 とても賢そうな顔をしている。

 聡明な子となるように、ケントと名付けられた。

 知恵の神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 シップの子 タクミ


 赤子ながらどっしりとしていてどこか泰然とした印象を受ける。

 この子は大物になるんじゃないかと、タダシは密かに思っている。

 大工のシップの子なので、偉大な職人になるようにタクミと名付けられた。

 鍛冶の神の☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 アーシャの子 ヒスイ


 キラキラ光る物が好きで、アーシャが手慰みに加工してた翡翠のアクセサリーを掴んで手放さなかったためにそう名付けられた。

 黒髪に好奇心の強そうな黒い瞳で控えめなアーシャに似ず、やんちゃな子になるかもしれない。

 鍛冶の神の☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 ベリーの子 ミズホ


 無邪気で元気そうな女の子。

 とにかく元気に育って欲しいという願いで名付けられたミズホの名は、水穂であり立ち上がる稲穂であり、タダシの故郷の日本の美称である。

 農業神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 ローラの子 オリベ


 ローラ譲りの金髪に黒い目。

 気品のある男の子で、どこか泣き方も上品な感じがする。

 鍛冶の神の☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


 リサの子 リツ


 タダシ王国の将軍となったリサは、子供にも国を守る立派な兵士になって欲しいと聞いてタダシがリツと名付けた。

 律は実直という意味もあるし、健やかであれという願いもある。

 艷やかな黒髪でくりくりっとした黒目の子供。

 端正な顔立ちのリサの血筋か、かなりのイケメンで何となく将来女泣かせになりそうな雰囲気がある。

 英雄神の加護☆☆☆☆☆ファイブスターを与えられる。


――自由同盟都市諸国


 北派代表 ロドン・ロック 五十歳

 

 北派の十二都市を代表する。

 北の商業都市ロック市長。

 北の帝国に近いため、半ば臣従する形でかろうじて独立を保っている。

 都市代表として若いのだが、父親より地位を引き継いだロドンはかなりの日和見。

 北の帝国が怖いので臣従したいが、タダシ王国の物資も欲しい。


 東派代表 ダルク・ノーブル 八十八歳


 東の大都市ノーブル市長。

 東派の十二都市を代表する老人。

 自由都市同盟会議でも長老格で、あまり喋らないがその発言には重きを置かれている。

 こちらも北の帝国にほど近いため、北派ほどではないが北の帝国派。

 静かに情勢を見定めている。

 北の帝国に面従腹背しつつ、タダシ王国の物資も欲しい。


 西派代表 テレサ・ナーセル 三十五歳


 西の鉱山都市ナーセル市長。

 西派十二都市を代表する女傑。

 三十代半ばのテレサは、都市代表としてはかなり若く自ら剣を取って魔族と戦う苛烈な女性であるため、女傑テレサと呼ばれている。

 西派都市は、北の帝国にも聖王国にも遠く独立心が強い。

 魔族の領地、特にドラゴン平原に国境が面してるため、その被害は深刻であった。

 自由都市同盟の勢力均衡論から聖王国に味方する派閥であったが、タダシ王国が襲来するドラゴンを鎮めてくれたため、タダシ王国に心を寄せている。

 タダシ王国の物資が欲しい。


 南派代表 ド・ブロイ 四十四歳


 南の城塞都市ロイセンブルクの市長。

 南派の十二都市を代表する。

 もともとロイセンブルクの警備隊長だった男だが、十年前に警備隊を使ったクーデターにより執政会議より権力を奪取した。

 そのため支持基盤に弱いところがあり、自由都市の地位を保ちながら聖王国子爵の地位をもらい、統治の正当性を保持していた。

 しかし、南で国境を接していたフロントライン公国がタダシ王国派になったため、自由同盟の中でも孤立している。

 ブロイは統治の仕方が強権的で苛烈であり、タダシ王国への逃散ちょうさんが繰り返されていた。

 タダシ王国を逆恨みして、公国との国境を封鎖したことが致命傷となり再び市民革命が起こって、ブロイの統治は二十年で終わることになった。


――帝国軍


 キール・ゲーリック 四十歳


 帝国軍人。階級は、海軍大佐。

 超弩級戦艦ムサシの艦長。

 ベテランの船乗りであり、旧式の船舶にも詳しいことを買われて三百隻近い聖王国軍艦隊の実質的な指揮も任されていた。

 しかし、本人はあまり気乗りはせず貧乏クジだと感じていた。

 その不安な予感は的中して、タダシの新戦法の前にムサシは轟沈。あえなく敗れ去る。

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