3話〜コーヒーと。

「そう言うと思った。」

「へぇー。」


魔女、それは簡単に言えば異能力を発動するためのパートナー。

柊は不思議そうに俺をみる。まあ、当然だ。さっきからブラッドスミスだの、コンビだの言っていたしな。俺はお冷を置こうとすると柊は身を前に乗り出して。


「なら決ま……」

「というかなんで俺を選んだ?俺のどこがいいんだ?」

「ん?やっぱり顔かしら?私イケメンのブラッドスミスがいいなぁって西川先生に相談したの。そしたら須藤幻っていうイケメンで魔女を探してる子がいるって言われたからちょうどいいと思って。」


身を乗り出すのをやめてそう言いながら柊は自分の髪の毛を指でくるくると巻きながら答えた。

俺ははあ、とため息を吐いた。そしてふと思ったことを柊に再び質問した。


「そう言えばさっき西川先生がどーのこーの言っていたな。お前聖玉学園の生徒か?」

「……ええ、そうよ。」


少し、間を開けて柊はそう答える。でも、と続けて。


「詳しく言うと千葉の聖銑学園から転校してきたのよ。だから私は転校生ってところね。」


そう言うと柊はどこからともなく取り出したのかトレーディングカードゲームの大きさのカードを広げた。そのカードは22枚あった。俺は不思議に思いながらそのカードを見てるとマスターがコーヒーを届けに俺たちのテーブル席にやってきた。コーヒーを持ちながらマスターはそのカードを見て懐かしそうに。


「あら〜。それタロットカードじゃない!大アルカナの。柊ちゃんはタロット占いするの?」

「はい!……まあ、当たらないことが多いですけどね。

それで……ええっと幻!このカードの中から1枚えらんで!」

「さりげなく名前で呼ぶとはなかなかいい度胸してるじゃねえか。

……まあ、いいけど。」


そう言って俺は22枚のカードのうち、1枚をめくる。すると星の煌めく空間に輪があるカードをめくった。……これは。


「運命の輪のカード!幻。このカードの意味にね……運命の出会いって意味があるんだよ!今の私たちにぴったりだね!」

「ああ、そうだな……。

じゃねえよ!なんでそうなるんだよ!たまたまそのカードを選んだだけじゃねえか!」


それを聞いてマスターはいいえ、と首を振って。


「それは違うわ。幻。タロットカードは嘘をつかないわ。かつて私もタロット占いを受けたことあるけどタロットカードって意外と当たるのよね〜。

……まあ、信じるのも信じないのもアナタ次第よ、幻。」


そうするとコーヒーを置いてマスターはカウンターへと戻って行った。

俺はごほん、と咳払いして。


「それで……まあ、タロットカードは置いておいて、契約してもいいぜ。」

「ホントに!」

「ただし、お前が俺のイメージに本当に耐えられるのならな。」


コーヒーを1口、口に含むと俺は続けて。


「今まで2人、俺と契約しようとしたけど。2人ともイメージに耐えられなくてダメだった。

……俺は嫌われ者なのさ。」

「嘘。」

「ん?」

「嘘、幻は嫌われ者じゃない。」


俺はその言葉に笑いがでた。嫌われ者じゃない?俺が?嫌われ者だからこそこうして1人余ってるこの俺が?


「面白いことを言うな。柊は。」

「だって!」

「まあ、いいさ。これだけは言わせてくれ柊。コーヒーとシロップがある。混ざってるように見えて混ざってない。」

「?」

「つまりだ。俺達の契約はそれを無理矢理混ぜることと同じじゃないか?」


俺はコーヒーをさらにゴクッと一気に飲むとテーブル席から立ち上がって。


「明日、申請するからよろしくな。

……それじゃあマスターまたな。」

「あら、もう幻、帰るの。柊ちゃんは一緒に帰るの?」

「……いえ、少し考え事をしたいので。」


それを聞いてマスターは少し考えてから固い笑みで帰ろうとする俺に向かって。


「それじゃあ幻、またね。」


その言葉を背に受けて俺は喫茶〜蜃気楼〜を後にした。

……あんだけ契約をしようとした魔女は柊だけだった。あんな捨て台詞を吐いたのに……少しだけ俺は……期待してる?

西川先生の放課後のセリフが頭を過ぎっていた。


ーーー貴方はね、焦ってるわよ。顔を見ればわかるわ。ーーー


ーーーだって貴方は、助けを求めてる子犬の顔をしているわ。ーーー

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