第三話『召喚者』
ーー待て待て。明日までまだ猶予はある。それまでに俺を召喚したやつが現れて助けてくれることを祈ろう。他に俺にできることは見張りの獣人から情報を得ることだ。
護は再び獣人たちに問いただす。
「もう死刑確定なのかな…?」
「一度、この国の王に『死刑宣告』されたら確定だ。まあ露出狂なんて死刑免れるわけないんだから、黙って待ってろ。」
この国はどうもわいせつ行為に対しての考えが日本より厳しいようだ。日本でももちろん犯罪だがさすがに死刑までいくような罪ではない。
ーーあまり質問攻めもよくないな…。
「最後に一回きいていい?」
「なんだ。」
「この国の王様に会って死刑宣告されるかもしれない時っていつくる?」
「あと二時間後だ。」
ーー俺の運命、あと二時間で決まるのかよ。
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異世界に召喚された時って何かしらの能力を与えられたりすることが多いけど、今のところ護はそんな能力は感じていなかった。
しかも唯一持っていたスマホは電波が使えず、鉄クズ同然。没収されていなかったことが唯一の救いだが、持っていても意味がなかった。
打開策をどれだけ考えても思い浮かばなかった。持ち道具ゼロ。装備は初期装備以下。特技も呪文も使えない。今の護はRPGにでてくる村人Bのようなものであった。
唯一できることは、この国、ウルズ王国の王様に会った時に思いっきり弁明すること。上手くいけば死刑宣告を免れることができる、かもしれない。
護は残り二時間、頭をフル回転させて、王様への弁明の内容を考えることに徹した。
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そしてあっという間に二時間が経った。護を召喚した人間は現れず、彼はやはり自分の力で死刑を免れなければいけなくなった。
護は二時間ひたすらに考えた。どう説明すれば王様は分かってくれるのか。
考えに考えた結果、何も浮かばなかった。
「異世界から飛ばされたんです!」「気付いたらあそこにいたんです!」
なんて言いたいが、言ったところで余計に頭がおかしいと思われ、より悪い状況に陥るに決まっている。
ーーもう護に打つ手はなかった。
「どうしよっかな…」
ついつい独り言をつぶやいていた。
ずっと下を向いてしまっていた護が顔を上げると、護を見張っていた獣人二人が椅子の上でだらりと項垂れている。見た感じ寝ているようだ。
ーー死刑ほぼ確の男を前にして二人でうたた寝とは、いいご身分だなおい。
少しすると、二人共がゆっくりと椅子から崩れ落ちていった。
ーー!!
「おい、大丈夫か?」
護が牢屋の中から話しかけても二人の反応はなかった。しかし微かに息遣いが聞こえるため、死んでいるわけではなさそうだ。
どうなっているんだ、と疑問に思っていると、目の前の牢屋の檻がぐにゃっと曲がっていく。
「これもしかして俺の力…?召喚された時に与えられた能力!?」
「いや、違うよ。」
護の予想を否定するその低い声は、牢屋の外を眺めていた護の後ろ側から聞こえた。
ーーつまり、その声を発した男は、護しかいなかったはずの牢屋の中にいたのだ。
「はじめまして、イチノセマモル君。私の名前はエクトル・ガスパール。ガスパーと呼んでくれ。急に呼び出してごめんね。」
護が振り返ると、そこには宙に浮きながら足を組んで座っている男がいた。ピエロのような仮面で顔はわからないが、身長はおそらく190センチはあるだろう。華奢で、いかにもアウトドアとは無縁そうな体つきをしている。
『急に呼び出してごめんね』
ーーそうか、こいつか、俺を下半身裸のまま街中に召喚しやがったのは。
現れないと思っていた護の召喚者は予想外の場所に突然現れた。
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