異世界人狼ゲーム~人狼暗殺者は竜騎士として空を駆ける~

狼煙(アズ)

第1話 始まりの風

 町にある鐘の塔の上、少年は始まりの風を受ける。雪解け水の様な美しい銀髪、美しい海の様な水色の瞳、頭には獣の耳があり、腰からは髪と同色のふさふさな尻尾が垂れている。口角が吊り上がり、犬歯がギラリと輝いた。彼の名はアレン=クリスフィロー。人狼の少年である。

 服は戦兵団ギルドの裏組織である暗夜団シャドウナイトの黒い制服とロングコートを羽織り、腰には刀が一本下げられている。

 ――今日から俺は《職業ジョブ》を手に入れるんだ!

 アレンはそう思った。何十メートルもある塔から飛び降りて、空中でモモンガスーツを開く。ヒューっと風を切りながら高速で空を移動し、開けた所へ着地。そこには、大きな建物があった。白っぽい壁に赤いレンガ造りの屋根。冒険者組合だ。

 中に駆け込み、受付に行く。中は酒場と併設されていて、昼から飲みまくっているオジサンが多かった。その中、一人目が合ってしまった。赤いロングコートを羽織り、フードをかぶっている。髪は黄金色で長髪。目はルビーの様な赤い瞳だった。

 彼女はとっさに顔をそむけた。


「何だったんだろう」


 アレンはそう呟いて、受付に向かった。


「本日はいかがなさいましたか?」

「ジョブを授かりに来ました」

「では、この石に手を当てて下さい」


 目の前に水晶玉が出された。美しく滑らかな球体に右手を触れる。かっとまばゆい光を放ち、文字が浮かび上がる。


「…こ、これは――」


 受付嬢が驚きと共に呟いた。浮き出た文字は《竜騎士》だった。ふわぁっと体から湧き出てくる喜びの気持ちが爆発しそうになる。《竜騎士》は三大聖職の一つでとても希少なジョブなのだ。


「凄いです!竜騎士判定が下されました!」

「「「うおぉぉぉぉおおお!」」」


 受付嬢が叫ぶとそれに反応して周りの冒険者が叫び出す。


「ジョブカードを発行いたしました。再発行には銀貨1枚かかりますのでご注意を。更新は受付で承っております。では、竜騎士の相棒であるドラゴンをお選びください」


 カードを受け取り、前に置かれた色とりどりのクリスタルを凝視した。このクリスタルは封印結晶と言われるもので、ドラゴンの赤ちゃんが封印されているのだ。左から赤、青、緑、茶色、黄色、水色、白、紫があった。色は属性を示しているらしい。アクトは真剣に悩んだ末、白いクリスタルに決めた。


「白龍結晶ですね。はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 俺は白銀の結晶を握った。「宜しく」と声をかけると返事の様に白銀の結晶が煌めいた。

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