第160話 マダラとキャンプ・2

No160

マダラとキャンプ・2



 マダラが森の中へと入って行ってから昼時まで透縛鎖靭の訓練をした。魔力の残量が体感的に少なく感じた頃に一度訓練を切り上げで、昨夜に使った調理魔導具の準備をしてるとタイミングよくマダラが森から帰ってきた。

『セイジロウ、帰ったぞ。昼食にしようぞ!』

 帰ってきて早々にマダラは言った。


「昼食は良いけど、マダラがいないと食材が無いんだよ。やっぱり、保存や収納できる鞄や魔法を覚える必要があるよな」

 と、マダラと一緒に行動をしてるが不意の時の不便を感じてしまう。一時の短い時間なら不便は我慢できるが、万が一に別行動をとった時にはかなり困る。


『なら、セイジロウもワレと同じように魔法を使えば良かろう』

「そうは言うけどやり方も原理も理解も出来ないんだよ。魔法はイメージが大事だろ? マダラと俺では存在も違えば知識や能力も違うんだ。マダラが使えと言っても俺にはその理解力がないし、魔力がある世界にいたわけじゃない。ましてや、この世界は想像の中にしか存在してなかったんだから」


 アニメやラノベ、ゲームや漫画の中でしか存在していなかった異世界だ。現に魔力なる力を使って魔法を発動できるようにはなっているが、じゃあ使ってみろと言われても使えるもじゃない。


 マダラの影から肉や魚介類、パンや野菜を出してもらい昼食の準備をしながら会話を続ける。


『そんな事を言っていても仕方あるまい。セイジロウが不便だと思うなら使う方法を考えるんじゃ。セイジロウが居た世界での知識や経験を元に想像して創造すれば良かろう。それに、魔法でなくとも保存や収納出来る魔導具の開発をしたりもできるじゃろ』


 確かに。冒険者達の話を聞く限では見た目以上に収納出来る魔導具はあるらしいし、異世界特有のアーティファクトも探せばあるかもしれない。

 これから世界をゆっくりと見て回っていけばまだまだ未知の場所はたくさんある。焦らずゆっくりと世界を見て回ろう。


「そうだな。まずは出来る事からだ。天装具の使い方と魔法の訓練をしっかりしよう」

 マダラと喋りながらも調理は行い、肉も魚も焼けている。鍋スープにパンも準備してあるし、露店料理もある。さっそく昼食にした。


△▽▽△△▽▽△


 マダラと一緒に昼食を食べたあとは少し休憩をしてから天装具の透縛鎖靭の訓練に戻った。

 魔力的にはそんなに回復をした分けじゃないが、午後の訓練ぐらいなら問題ない。午前はまだ扱いが拙かった分、魔力を余計に使ったがそれも学習した。午後は適量の魔力を使いつつ、透縛鎖靭の効率を上げていく。


 繰り返し丁寧で瞬時に思った長さや太さに透縛鎖靭を変化させて、木の幹に向かって操作する。上下左右に操ったり螺旋を描いて一点集中で貫くように操ったりした。

 さらに、木の幹に巻き付けてみたりと思いつく限りの攻撃方法を試してみた。


 時には立ち位置を変えたり、少し駆け足で操作をしてみたりと試行錯誤していく。魔物との接敵をイメージしたり、対人でのイメージをしたりと自分の不利な状況をなるべくイメージしてシミュレーションしていく。


 そのほとんどが討伐できず、隙を付かれて命を落としてしまった。そこから、自問自答しイメージを修正していく。それを何度も何度も繰り返し行った。


 訓練に集中してるとすでに陽が傾き始めていた事に気付き、体力や魔力もずいぶんと減っているのにようやく気が付いた。

「はぁ......すでに夕方になるのか....今日はここまでだな。ずいぶんと真剣に訓練をしたけど、まだまだ修正箇所は多いな.....」


 俺は周囲の警戒をしつつ、近くの岩に腰かけて休憩をする。休憩してる間にさっきまでの訓練を思いだしどうすればもっと良くなるのか、自分自身の命を守れるのかを考える。

 しばらくは、そんな風に考えてると森の茂みからマダラが現れた。


 マダラはゆっくりと歩み寄ってきて思念を飛ばしてきた。

『ふむ、どうやらずいぶんと訓練をしていたようじゃな』

「あぁ、それなりにはやってみたがまだまだだ。改善点がかなりあるよ。自分一人じゃ生き延びるのがギリギリだ。しばらくは、訓練が必要だと思う」


『セイジロウがそう思うならそうなんじゃろ。だが、セイジロウにはワレがいる。ワレにはセイジロウおる。焦らずじっくりと自分を守れるようになればよいじゃろ。明日からまた訓練すればよい。ワレは腹へったぞ。夕食を所望する』

 と、ちょっといい話になるかと思えば次に出た言葉はメシの話だった。

 マダラのいつもと変わらない態度にちょっとだけ心に余裕ができた。


「りょーかい。んじゃ、メシにしますか! 今日は何を作るか~」

 

 それから、夕食をマダラと一緒に食べてすぐに眠りについた。久しぶりに体が疲れはてるまで訓練をした。魔力も限界の一歩手前までつかったし、実のある一日だった。



▽△△△▽▽△△△


 それから、数日後には新たな透縛鎖靭の使い方をマダラに教えてもらった。

 今日はその訓練にマダラも一緒になって付き合ってくれている。

『では、セイジロウ。基礎的な防御の訓練からを始めるぞ。ワレが魔法を放つから手段問わず防いでみるんじゃ』


 マダラと俺はある程度の距離をとり対峙している。これから、マダラが俺に向かって攻撃をしてくる。俺は透縛鎖靭や魔法を使ってマダラの攻撃を防ぐ。

「準備は完了してる。いつでも良いけど威力は抑えてくれよ!」

『分かっておる。死なない程度には抑えようではないか。訓練じゃからなっ!』

 と、薄ら笑いを浮かべながらマダラは言った。その顔がどうみても楽しんでる顔にしか俺には見えなかった。

 端から見たら強者が弱者をいたぶる笑みに見えただろう。


「言葉と顔が合ってないぞっ! 本当に分かってるんだろうなっ!?」

 と、そんな事を言ってる間にマダラの魔法攻撃が始まった!

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