第129話 火水祭・2

No129

火水祭・2




 アンリエッタ邸で話をした後は、昼食を裏庭でいただき午後は水を弾く服の話題になった。


 俺とマダラ、アンリエッタさんは場所を屋敷の室内に移し、メイドのメイリーンさんが用意してくれた紅茶と焼き菓子を片手に話を始めた。

「セイジロウさん、話はシバスから聞きましたよ。ずいぶんと壮大な話になってるそうですね?」


「壮大ですか? ただ、水を弾く服を作るだけですよ」


 まぁ、この世界では水着なんて無いから、知らない人からしたら驚くのは無理ないか.....


「セイジロウさんの話はいつも最初は小さいのですが、気がついたら大火になってるんですよね。鉄板焼きの件がそうですし」


「あれは、アンリエッタさんが火に油を注いだからですよね? 最初は冒険者ギルドの食事処だけでやる話だったのに....」


 あれは、アンリエッタさんが悪いよ。面白そうとかギルドマスターが独り占めするとか何とか.....で、勝手にギルドに行って話を大きく.....いや、俺もつい楽しくて話に乗ったから相子か?


「あら、セイジロウさん? どうやらご自身にもどこか思いつく事がおありの様な顔をしてますよ?」

「いっ、いやいやそんか事ないですよ。そういえば、鉄板焼きの話は進んでるんですか?」


 冒険者ギルドで契約をしてから、話が来てないからどこでどうなってるのか分からないんだよな....ついでに、ランクアッブの話も来てないし....


「鉄板焼き店はしっかり進んでますよ。祭りの期間中は職人さん達は休みですけど、祭りが終わりそう日にちが経たない内には開店できます」


「おお、ついにですね。どこら辺に店を出すんですか?」

「お店は、メイン通りを漁場場に向かう途中にまずは二店ですね。あとは、冒険者ギルドと錬金術ギルド、商業ギルドの近くに各一店ずつ。あとは、各街門の近くに一店ずつです。全部で十店を同時オープンです」


「うわぁ、それはまた大胆ですね。場所はともかく集客と単価はどうなんですか?」


 初っぱなから十店舗か.....当たればデカイが外れたらかなりの痛手だな。三ギルド合同の計画とはいえ大丈夫なのか?


「ふふ、セイジロウさんはちょっと顔に出すぎですね。見ていて楽しいですよ!」

「えっ? そんなに顔に出てますか?」


「ハッキリとは出てませんよ。ただ、付き合いが長くなると分かりますよ。今では、それなりに分かりますからね」

「アハハ...あまり見ないで下さい。それで、どんな感じなんですか?」


「各店舗区域によってコンセプトを変えて見ました。街門に近くの店舗は低価格から中価格で、幅広い客層を狙った万人向けですね」


「街の門ですから、人の出入り知名度はかなりの優位ですからね。良いと思いますよ! 宿も近くにありますから値段が合えば定期的な集客はできますからね」


「そうです。まずは知ってもらわないとですから。次は各ギルド近くの店舗は中価格でボリュームがあるメニューを売りにした店舗です」


「主にギルドを狙い打った感じですか?」

「それもありますが、やはりギルドと言うのは人が集まりますし、懐の暖かい人が多いですから。価格は安くはないけどお腹一杯に食べれるならって感じですかね」


「なるほど、冒険者達には喜ばれますね。腹が減ってはなんとやら、ではないですが、安くお腹が一杯になるのは大事ですから」


「えぇ、確かに大事です。安く美味しいに越した事はありませんからね。最後は、漁業場近くの店舗ですね。こちらは漁業場に勤める方とマーマン種の方を狙いにしてみました」


「へぇ、それはなかなか面白いですね。個人的には大好きですよ、そういうの」

 鉄板焼き店が出来るのも漁業を生業にしてる人達あってだし、マーマン種と漁業の人達の繋がりは抑えておかないと仕入れにも影響がでかねないしな。


「さらに、このお店は持ち込み有りの調理有りで、ある程度自由なお店にしました」


「何故ですか? 人とマーマン種の繋がりぐらいならそんな自由にしなくても何とかなるのでは?」


「それとは関係なく新たな料理レシピと食材の提供を目的にしてますね。漁業関係の人が知る料理レシピやマーマン種が知る料理、市場に流れない珍しい魚介類や珍味などを知れば、さらなる店の発展と強味になりますから」


「へぇ、ずいぶんとまぁそこまで......感服しました。もうお腹一杯ですよ。どうせまだ私が考えつかない事も考えてるんですよね?」

「どうでしょう? 案件はあると思いますけど、今は鉄板焼き店の定着化が優先ですね」


 ただ、鉄板焼きで料理が食べたいだけが始まりだったのにな....話が膨らむとここまで膨らむのか。


「あの、街中の方は分かったんですけど、ギルド内の鉄板焼きはどうなってるんですか?」


 元ネタの方はどうなってるんだ?


「そちらは、マレルさんの持ち場になりました。主に肉料理と天ぷらがメインですね。ほかの店舗でも同じく天ぷらと肉料理は出しますが、料理メニューはマレルさんオリジナルメニューにしてます。あと、パフォーマンス調理も行いますね」


「おぉ、ギルドの食事処とはいえ、自分の好きにできる店舗が持てたんですね。それは、良かったですよ!」


「本人も大変喜んでましたよ! しばらくはギルドの食事処で頑張ってもらえたら次の店はマレルさんの店にしようと考えてますから、マレルさんのお店が出来たら一緒にお祝いをしましょう」


「もちろん、喜んでっ!」


 俺の知らないとこで色々と動いてるんだな。とりあえず、鉄板焼きの方は何とか軌道に乗りそうだから俺の方は水着制作に力を入れたいな!


 水着~、嬉しい水着~、エヘヘ....

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