第111話 空飛ぶ怪獣・2

No111

空飛ぶ怪獣・2



 グレイドレバファロの討伐依頼を受けた俺とマダラは荒野にやって来た。そして、グレイドレバファロの群れを見つけて奇襲し、一頭を魔法で討伐した時に異変は起こった。


 マダラの数倍はある空飛ぶ怪獣が現れ俺達に襲いかかってきた。俺は、一旦避難をしたがマダラの説得により空飛ぶ怪獣に相対する事になった。


 「うおぉぉぉーーー!くらえっ、炎弾乱舞っ!!」

 俺はマダラが空飛ぶ怪獣を引き付けてる隙に魔力を練り上げ火魔法を放った。幾つもの拳大の火の玉が空飛ぶ怪獣に向かって直撃するが、まったくダメージを受けた気配もなく、燃え移ることもなかった。


 空飛ぶ怪獣は、俺の火の玉など気にした様子もなくマダラの攻撃を警戒しながらも、自身の鋭い爪でマダラに攻撃を繰り出していた。


 『セイジロウ、其奴の体表は鱗に覆われていて並の魔法や斬撃は効きにくいじゃろ。有効なのは鋭い刺突か強い打撃、並の以上の魔法攻撃じゃ』


『知ってるなら、早く教えてくれよっ!』

『ワレも知っていた訳ではないぞ、戦闘中の推測からじゃ。それに、冒険者のセイジロウが魔物に詳しくなくてどうする? 日々の精進が足らんのではないか?』


 別に今説教しなくていいだろに....しかし、思念をしながらよく器用に攻撃を交わしてるよな....


 しかし、俺の魔法の威力じゃちょっと攻撃力不足なんだよな。唯一有効と思える魔法は土魔法か....


『マダラ、そいつを地面に落とせるか? もしくは翼にダメージを与えて飛べなく出来ないか?』

『ふむ、それぐらいなら手を貸してやろう。じゃが、セイジロウにも手伝ってもらうぞ?』


『良いぞ、魔力を練るから少しだけ時間はをくれ。準備出来たら合図する』

 俺はマダラが攻撃出来るように、空飛ぶ怪獣の気をひくために魔法の準備に入った。


 ヤツが滑空してくるタイミングを見逃さないように注視した。......そして、ヤツがマダラに向かって滑空してくるタイミングで、

『マダラ離れろっ!.....砂塵旋風っ!』


 ヤツの真下から荒野の砂を巻き上げるように風の竜巻を起こした。


 グギヤァァァァァーー!


 と、砂を巻き上げた竜巻を嫌がるように咆哮し、その場から逃げるように翼をバタつかせるが強い風圧によって上手く翼を使えないでいた。


 そんな簡単に逃げられる訳にはいかないんだよっ! マダラ、しくじるなよっ!


 そんな風に内心で思っていると、砂塵旋風によって行動を拘束された空飛ぶ怪獣に向かってマダラが飛びかかり、ヤツの片翼を切り裂いた。


 空飛ぶ怪獣は翼の制御を失い、切り揉みしながら地面に向かって落下してきた。


 俺はすぐに魔力を練り上げ地面でバタついてる空飛ぶ怪獣に魔法を放った。


「土穴葬送っ! からのっ! 土槌乱舞っ!」


 バタつく空飛ぶ怪獣の地面に落とし穴を作り、すぐに土柱の乱れ打ちを浴びせた。


 空飛ぶ怪獣は断末魔の咆哮をあげたが、その声もすぐに聞こえなくなり辺りは静けさを取り戻した。


「はぁぁ....マダラ、ちょっとヤツが死んだか確認してくれるか? 死んだフリしてるかも知れないし」

『ふむ.....間違いなく死んでおるな...ホレ、影の中にも入ったわ。よくやった、セイジロウ。良い手土産と武勇伝が出来たの』


「煽ったのはお前だろ....ちょっと疲れたから休ませてもらうぞ。魔力もかなり使ったし....とりあえず、周辺を元に戻したら休めるとこに移動しよう」


 俺は、自分で作った落とし穴と土の柱を元に戻して地面を元通りに戻した。荒野だから別にほおって置いてもいいだけど、これのせいで誰かが怪我をしたり死んだりするのはごめんだからな....


 あぁ、あとあっちの防御壁も元に戻さなきゃ.....こんな土針が生えた防御壁なんてセンスが無いにもほどがある。今度は、もう少し見た目が良い防御壁を作る練習をしようかな? 本当ならアニメみたいな魔力障壁とか作りたいけど、いまいち仕組みが分からないんだよな....


「マダラー、終わったから移動しようぜっ。もう疲れたよー!」

『ふん、良い運動になったじゃろ? これで少しは腹についた脂が消費できたじゃろ』


「もう少しやり方があっただろ? 誰が命懸けのダイエット方法を考えろなんて言ったんだよっ!」

『セイジロウにはこれぐらいがちょうど良いのじゃ。いつも、買い食いばかりしてろくに体を動かさんからこうなるんじゃ』


「お前がアレ買え、コレ買えって言うから付き合ってるんだろ。しかも、お前が選ぶヤツは全部旨いんだからしょうがないだろ!」

『ワレのせいにするでない。買っても食わなければよいじゃろ。代わりにワレが食うがの』


「お前のそういうとこ嫌いだっ!!」


 そんな言い合いをしながら、荒野にくるときに見かけた少し小高い丘にたどり着き体を休める事にした。


▽△△▽▽▽▽△


 数時間の休憩をした後、このまま移動してもルインマスの街に着くのは陽が沈んでからの到着になると思ったので、今夜はここで夜営する事にした。


「マダラ、今日はここに泊まって明日帰る事にしよう。それより、グレイドレバファロの死体とかどした? 影の中に入ってる?」

『ああ、数頭逃がしたがワレが狩ったヤツと、セイジロウが倒したヤツは入っておるぞ』


「そか、なら今回はそのままにしといてくれるか、あと空飛ぶ怪獣もな。ギルドに戻ってから解体してもらって肉は鉄板焼きで食べようぜ。空飛ぶ怪獣も食えるようなら一緒にな」


『そうじゃな、どちらも焼いたら旨そうじゃからな。なら、セイジロウはここに居れ。ワレは少し糧となる魔物を狩ってこよう』


「そっか、わかった。犬狼は影に入れてくれてるよな?」

『入っておるぞ、では夕食の準備をして待ってるのじゃ』


 マダラが森に入る前に食材と調理道具を出してもらい、それから遠目に見える森に向かって駆けて行った。


 しばらくして夕食の準備が出来上がる頃にマダラが帰ってきた。


『セイジロウ、戻ったぞ』

「おかえり。で、収穫はあったか?」

『大した魔物はいなかったの。強いて言えば蜘蛛の魔物ぐらいかの。ちょうど、糸を張って獲物を待ち伏せていたからのぅ、ワレが逆に狩ってやったわ』


「お前、容赦ないな.....まぁ、別に良いけどさ。マダラが狩ったヤツは好きにしていいよ。んじゃ、夕食するか! いつもの野菜スープだ。マダラは露店で買った串焼き肉と魚介類を出してくれよ?」


『んっ? すでに食したぞ。荒野に行く途中で無くなったわ』

「はっ? それ食っちゃダメなやつだろ! なんで食べちゃうんだよ、バカっ!」


『アレは食べるなとは言わなかったではないか。ワレのせいではないぞ!』

「お前のせいだろっ! 普通、討伐依頼の出発前に買ったら夕食に使うと思うだろっ?」


『そんな事は分からんではないかっ! ワレのおやつだと思うじゃろが!』

「んなわけあるかっ! ...っくそ、怒鳴ったら腹が余計に減った...お前のおかわりは無しな! 食材を食った罰だ」


『それは無いじゃろ! アレはセイジロウが言わないのが悪いんじゃぞ! ワレにもおかわりをよこせっ!...ガツガツ...』


「あっ! 勝手にスープを食べるなっ! 俺のが無くなるだろぉーー!!」


 そして結局、野菜スープの半分はマダラに食われた。

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