第110話 空飛ぶ怪獣・1
No110
空飛ぶ怪獣・1
翌日は朝早くに目覚め、朝食を食べてから冒険者ギルドに向かった。さすがに朝の早い冒険者ギルドは冒険者達で混んでいた。
俺は依頼提示板を見ながら、条件の良さそうな依頼を探す。そして、良さそうな依頼を剥がし受付嬢のシンディさんの列に並んだ。
「シンディさん、おはようございます。手続きをお願いします」
「セイジロウさん。おはようございます、今日は依頼ですね。.....はい、手続きは完了です。セイジロウさんとマダラなら平気だと思いますが油断はしないで下さいね」
「はい、心得てます。では、いってきます」
と、受付嬢のシンディさんと挨拶を交わして第三西門に向かってマダラと一緒に歩いていく。途中の露店で串焼き肉や魚介焼きを買い溜めしマダラの影に保管していく。
『それで、何の依頼を受けたんじゃ?』
「んっ? グレイドレバファロの討伐依頼だな。頭に三本の角を生やしたデカイ牛だと思えば良いさ。ただし、足はマダラと一緒で六本足みたいだな」
『ほぅ、なかなかに挑戦的ではないか。良いじゃろ、ワレが狩ってやろうではないか!』
「うん、やる気なのは良いけどやり過ぎないようにな....ちなみに、グレイドレバファロがいる場所までいく間に接敵した魔物も狩るからな。今回は資金稼ぎとダイエットも兼ねてるから、俺も積極的に動くぞ!」
『いつになくやる気じゃな。では、ワレに付いて来いっ! まずば、走り込みからじゃ!』
「いや、積極的とは言ったけどそこまでじゃないから.....とりあえず、乗せてくれ」
『..........どうしようもない奴じゃ』
と、第三西門を出てからマダラに跨がり討伐対象がいる場所に向かった。
マダラに股がりグレイドレバファロが集まる荒野を目指した。ルインマスの街か馬車で通常なら三、四日の距離がかかるがマダラならほんの数時間で着く。
今回は、荒野に向かう道中? (実際は道なき道だな。主に森の中だけど.....) を走りつつ接敵した魔物は狩ってきたから、荒野に着いたのは昼近くになった。
森の中を駆け、草原を駆け、そして、今は荒野に降りたっている。
「マダラ、この荒野に十数頭規模のグレイドレバファロがいるはずだ。まずは荒野の水場を探そう」
『すでに索敵を開始しているぞ、少し待て』
「さすが、マダラだな」
『ふん、これぐらいは当然じゃ! して、今回はワレが全部を狩って良いのか?』
「そうだな....一、ニ頭は俺も討伐したいから逃げ出したグレイドレバファロは俺にやらせてくれ」
『良いじゃろ......ふむ、見つけたぞ! ヤツラはこっちに向かって来ているな。セイジロウ、ワレに乗れ。犬狼をニ匹、セイジロウ付けるから逃げるグレイドレバファロを上手く誘導して狩るのじゃ』
「分かった、近場で下ろしたらマダラは狩り始めてくれ」
俺はマダラに股がり、マダラの影の能力で見つけたグレイドレバファロの群れに向かった。俺は群れの近くで下ろしてもらいマダラが群れに突っ込んでいった。
マダラの襲撃に驚いたグレイドレバファロ達がバラけて逃げ始めた。俺はそ一頭に狙いを定めて、魔法を放った。
そして、喜びを表そうとした瞬間、
ガクガギヤァァァァァーー!
今までに聞いたこともない、異様な咆哮が聞こえ、すぐに聞こえた方を見るとそこには、空飛ぶ怪獣が視界に入った。
数瞬の間、俺は思考を停止していた。ただ、非現実な光景を目の当たりにすると呆けるあれだ。
たまにいるだろ。従姉妹が泊まりにきていていつもと同じ流れで風呂場の扉を開けたら、髪をタオルで拭いている全裸の従姉妹を見ちゃった時とか.....
急ぎ足で建物の角を曲がったら、女性とぶつかってその勢いのまま押し倒してしまった時とか.....
歩きながらスマホを見ていたら車に跳ねられた時とか....
俺は今それを頭の中に浮かべながら、現在の状況を理解しようと懸命な努力をしているがまったく分からない。まず、あの空に浮かぶ怪獣は何なのかと.....
『セイジロウっ! 呆けるな! すぐにその場から走って距離をとるんじゃ! 時間はワレが稼ぐっ!』
と、マダラの思念が頭の中に響き渡り俺はすぐにその場から走り距離をとった。
百メートル程の距離を走った俺はすぐに魔法で防御壁を造り出した。
「土針堅牢壁っ!」
半ドーム状の壁面に土針を生やした壁を造り出し、その小さな小窓から外の様子を伺う。
するとマダラがあの空飛ぶ怪獣と戦っていた。
「なっ...なんだよあれは...」
俺はマダラと比べて数倍はありそうな空飛ぶ怪獣に驚いていた。
ふっと前の世界での怪獣映画を思いだし、つい地球防○軍を呼びそうになったがここは異世界だったと思い出した。
「マジであんな映画の中のような怪獣がいるんだな.....マダラは今のところ大丈夫そうだけど...」
あの時マダラの思念が頭に響かなかったら俺はどうなっていたか....マダラに感謝だな。帰ったら好きな物を食べさせてやろうかな....
しかし、あれはどんな魔物だ? 見た感じと異世界ファンタジー知識に当て嵌めればドラゴン? に見えなくも無いが....
少し小さいし、形も比翼に鉤爪なら....飛竜、ワイバーンとか呼ばれる魔物に相当しそうだな。ゲームなら属性攻撃にブレス攻撃、稀に雷撃なんかもあるけど.....雷撃はヤバイな.....
『マダラ、さっきは助かった。こっちは防御壁を張って安全は確保した! 送れ』
って、ついついやってみたくなるよね。まぁ、トランシーバーは持ってないけど....
『何が防御壁じゃ! お主も戦闘に参加をせんかっ! そんなんじゃ、腹の脂は落ちんぞ!』
アイツはバカか!? あの空飛ぶ怪獣と戦えと? 魔法が使えるからといって勝てる訳がないだろ! 俺は、チートをもらった異世界主人公じゃないの! ただ、迷ってつい異世界に来ちゃったサラリーマンなの!
『お前はこんな状況なのに、俺に戦えと言うのか?....無理だから。ダイエットは、次の討伐依頼からやるよ。ソイツはお前にやるから。なっ?』
だってほら、マダラはあの空飛ぶ怪獣の上空からの攻撃をヒラリっと身軽に避けてるじゃん。上空から滑空しながら、マダラに掴みかかるように伸ばされたその鋭い爪が生えてる足からヒョイって....
『何を腑抜けた事を...えぇーい、鬱陶しい鶏ガラじゃのっ!!.....良いから、戦わんか! ワレがこの鶏ガラを惹き付けておくからセイジロウは魔法を放って攻撃をするんじゃ!』
えーっ.....スパルタ過ぎでしょ。別に今のままならマダラだけで倒せそうじゃん。今回は唐突で心の準備が出来てないんだよ...
『マダラ、せっかくのお誘いだけど今回は断るよ。アポイントも取ってない客とは会わないん主義なんだ。だから、その空飛ぶ怪獣さんにはアポイントを取ってからくるように言ってから帰ってもらって』
『何、ワケわからん事を....なら、フローラに会った時にワレからセイジロウの武勇伝を伝えてやろう。鶏ガラに怯えて檻の中で泣きべそをかいていたとな。それで良いならワレが鶏ガラを狩ってしまうが良いか? んっ?』
マダラのやろぉ...脅してきやがったな。しかも、フローラさんを出汁に使いやがって....良いだろう、俺の本当の実力を見せてやるよ! コツコツと魔法の訓練をして来たんだ。それに、異世界ファンタジー知識が俺にはあるんだ。空飛ぶ怪獣の一匹やニ匹ぐらいブッ飛ばしてやる!
俺のチートを見せてやるよっ!
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