第105話 想定外

No105

想定外




 新しい魔導具のお披露目を兼ねた食事会も盛り上がり、マダラが捕ってきた食材も昼を過ぎ始めると底を尽き始めてきた。


 食材が尽き始めたので俺はマダラに食材の調達をお願いした。

「マダラ、夕食用の食材を捕ってきてくれるか? その間に、唐揚げとトンカツ、天ぷらにフライドポテトを準備しておくからさ」


『なぬ? それば一大事じゃな。すぐに捕ってこよう。ワレの分の揚げ物はしっかりと確保しておくのじゃぞ? 確保しておかなかったら食材は渡さんぞ!』


「分かってるって。じゃ、頼むぞ!」

 と、マダラに頼んだ後はアンリエッタさんに話をしに向かった。


「アンリエッタさん、少し話があるんですけど良いですか?」


「ええ、構いませんよ。シバス、メイリーンは食事を楽しんで来なさい。わたしは、セイジロウさんと話がありますから」

 執事のシバスさんとメイドのメイリーンさんがアンリエッタさんに言われて席を外した。


「お気遣いありがとうございます。ですが、少し申し訳ない気持ちになりますね」


「良いのですよ。シバスもメイリーンもたまには息抜きが必要なんですから。せっかくセイジロウさんがこの様な場を設けてくれたのです。わたしから命じなければ二人は楽しめませんから」


「そう言ってくれると私も浜焼きを提案したかいがあります。それで、話なんですが--」

 俺は、レイラさんから聞いた話をアンリエッタさんに話した。川や湖では水遊びをするが海辺では水遊びをしない事、その理由も。さらに、水遊び用の衣類が存在しない事を。


「--そうですね。滅多に海辺では遊びませんね。一番の理由は危険だからでしょうね。海に限らず水棲の魔物は存在しますし、水場で行動も制限されますから」


 それはそうだな.....海辺では砂浜によって足元は不安定だし、岩場もあるから陸場より戦いづらい。さらに、水中に潜られたり引きづり込まれれば、戦闘の難易度は変化する。危険な場所に行かないのは当然だ。


「....ですよね。分かりました、海水浴は諦めます」

「セイジロウさんにしては珍しく諦めが早いのですね」


「えぇ、さすがに海の魔物を全て討伐するには広いですし、見える範囲だけならとも思いますけど海中に対する攻撃手段も無いので....仮に出来たとしても焼け石に水で、次から次へと魔物はやってきますから」


「まぁ、そうですね。ですが、ある程度の範囲と魔物を討伐する戦力が確保出来たらどうでしょう? 話は現実的になりませんか?」


 それは....まぁ、確かに。さっき少し海辺を確認したけど遠浅っぽいんだよね。だから、区画制限とかして簡易な結界や防護壁的な魔導具があれば、海水浴ができる限りのかもしれない。あとは、安全を確保した海を魔物から守る為の戦力か迎撃する魔導具を設置すれば......いけるか?


「アンリエッタさん、何か考えがあるのですか? .....いえ、ありますね。私に教えてくれませんか?」

「ふふふ、良い顔になりましたね。良いでしょう」


 その後、海水浴場にする為の問題点とその問題を解決する為の話し合いがしばらく続き、マダラが食材確保で帰ってくる陽暮れ前まで続いた。


 しかし、マダラが確保したのは食材だけではなかった.....



▽△▽▽▽△▽▽▽▽▽▽


「なぁ、俺はお前に食材確保を頼んだよな?」

『そうじゃ、だから食材は捕ってきたじゃろ? 魚に貝にたくさんじゃ。魚はちょこまか動くし、貝は見つけるのに苦労したんじゃぞ? なのになぜワレはこの様な仕打ちを受けねばならんのじゃ!』


「それは、お前が食材以外を持ってきた....いや、咥えてきたからだろっ! なんで、人を咥えてくるんだよ!」

『仕方ないじゃろ。ワレが魚を捕らえてる時にワレの攻撃範囲に現れたのじゃから。ワレは不可抗力じゃ。其奴が悪いんじゃよ...ふんっ』


「お前なら魔物と人の気配ぐらいは判別出来ただろ? そうすればこんな事にはならなかったんじゃないのか?」

『其奴は人の気配とは違っておる。見た目は人に酷似しておるが、気配は人のそれとは違っておるのじゃ。ワレが間違うのも仕方ないのじゃ。それに、其奴は海中にいたんじゃぞ? さすがにワレでも海中までは見通せん』


 と、俺とマダラはみんなが居る場所から少し離れた場所でマダラに事情ついでに説教をしていた。なぜマダラに説教をしているのかと言うと......


 陽暮れ前にマダラが食材確保から帰って来たのは良いが、マダラの口には人が咥えられていた。


 それを見た俺とアンリエッタさん、ギルド受付嬢のシンディさんはすぐにマダラが咥えてる人の容態を確認した。と、同時にマダラに話を聞く、と食材確保の時にマダラの攻撃範囲内に紛れていたらしく、マダラの攻撃をくらったらしい。


 マダラは、セイジロウから人を傷つけてはいけないと命令を受けていた。が、命令を破った時に発生する罰が発生しなかった為に、マダラは人だと認識しなかったが、外見は人に酷似してる為に咥えて戻ってきたと言った。


 マダラから話を聞いたセイジロウは、マダラに非が無いことは分かっているがそれでも、怒らずにはいられなかった。マダラの能力、実力があれば避けれた問題だった....かもしれない。もし、事が大きくなればマダラはルインマスに居られなくなるかもしれない。


 せっかくルインマスの街に馴染み始めてきた時に起こった今回の出来事はマダラやセイジロウにとってはかなりの不祥事だ。従魔の主として八つ当たり気味に説教をしてしまうのは情けないが、マダラが築いた信頼が崩れてしまうのがセイジロウには悔しかった為だ。


 セイジロウがマダラに悔しさをぶつけていると、細工屋のレイラさんから声がかかった。

「セイジロウさん、さっきの人が目を覚ましましたよ。シンディさんとアンリエッタさんが事情を聞いてますから、セイジロウさんも来てもらえますか?」


 そう、レイラさんが俺に伝えた。俺はすぐに返事を返しレイラさんはまた戻って行った。

「っ! はいっ! すぐにいきます!」

 

俺はマダラの方に向き直り、

「マダラ、八つ当たり気味になってすまなかった。【お座りの命令を解除する】.....マダラ、また新しい街を探そうな....俺はマダラと一緒に、笑って楽しく暮らせる街を探すよ」


『.....ワレはセイジロウと一緒ならどこでも良いわ。ワレはセイジロウの守護者だからな......セイジロウ、すまんな』

 と、初めてマダラの謝罪を聞き少し驚いたが、マダラの頭を撫でると被害にあった人がいるとこに俺とマダラは向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る