第100話 ビールサーバー製作と珊瑚の腕輪

No100

ビールサーバー製作と珊瑚の腕輪





 翌朝、目を覚まし手早く昨日の残りの夕食を温めなおし、今までに買い溜めていた露店の料理をマダラの影にから取り出し朝食にした。


「よし、メシも食べたし、ルインマスに帰るかっ!」

『ふむ、では行くとするかの』

 夜営の道具をマダラの影に仕舞い跨がると、ルインマスまでの帰り道を指示しながらむかった。


 帰り道で遭遇したホーンウルフやマーダースネーク、ヴェルフベアなどの魔物をマダラに狩ってもらいながら半日ほどの時間をかけてルインマスの街に帰ってきた。帰りに狩った魔物はマダラの糧にした。


 時刻を確認すると昼を少し回ったぐらいの時間だったので、メイン通りで買い食いしながら冒険者ギルドに向かい着いた。


「シンディさん、ただいま帰還しました」

「セイジロウさんっ! ずいぶんと早い帰還ですね? もう討伐してきたのですか?」

 受付嬢のシンディさんが驚いて聞いてきた。

「はい、俺にはマダラがいますからね。距離は然程問題になりませんよ。討伐証明と魔石がありますのて確認してもらえますか?」


 俺の説明を聞いて納得したのだろう。手続きを進めてくれた。

「そうでしたね......魔石は売却でよろしいですか?」

「はい、売却でいいですよ」

「では、少々お待ちくださいね」


 よし、コレでしばらくは金が持つかな....あとは、適当に討伐依頼と採取依頼をしてギルドマスターの返事を待っていればいいか...


「--お待たせしました、セイジロウさん。今回の討伐報酬と魔石の売却金ですね」

「はい、確かに。それと、ギルドマスターからギルドの食事処の件は何か聞いてますか?」


「例の件ですね....ある程度は決まりつつあるみたいですよ。あとは、細かい調整が済み次第ご連絡できると思います」

「そうですか、わかりました。では」

 と、冒険者ギルドを出てアンリエッタ邸へと向かった。


 アンリエッタ邸に着くと執事のシバスさんに案内され、アンリエッタさんに素材の受け渡しをした。

「アンリエッタさん、コレがウェットグレイトードの舌になります。ある程度の処理はしてありますが、あとの細かい処理は任せてもよろしいですか?」


「はい、任せてもらいます。魔導具用に特殊処理と加工をしてから試作製作を行い、実用品を製作しますね。五日間ぐらいで出来ると思いますので」


「以外と早いですね、もっとかかると思ってましたよ」

「すでに、製作図は書いてありますから。試作を作って細かい所を修正すれば実用出来ますよ。構造としては単純な分類になりますから」


 さすがは一流の魔導具師だな。これなら、問題なく出来そうだ。気温も高くなってきたし完成すれば本格的な火水季には間に合うな.....


「では、よろしくお願いします。今日はこれで帰りますね。明日からまた倉庫整理を始めますから」


 ふぅ....とりあえず一段落だな。さて、たまには街中でもゆっくりブラブラするかな....


▽△▽△▽▽△▽


 アンリエッタ邸を出たあとはメイン通りを散策して回った。露店で食べ歩きをしつつ、通りにある店を横目に見ながら気になった店に入ってみた。


「こんにちはー!」

「はーいっ! いらっしゃいませー!」

 と、ハキハキした女性の店員が挨拶を返してくれた。


 見た目は若く歳は20代前半に見える。白藍色の髪を後ろで一纏めにして、白色と空色のシャツとスカートを着た可愛いらしい女性だ。

「ちょっと気になったので少し商品を見させてもらって良いですか?」

「いいですよ。わたしは細工屋店主のレイラです。お土産ですか?」


「そんなとこですよ。私はセイジロウと言います。よろしく」

 レイラさんは細工屋の店主だった。自己紹介しつつ話を聞いて見ると、海で採れた貝殻や珊瑚、海宝、流木、魚骨などを細工し装飾品や日用品なんかに加工し販売してるそうだ。


「へぇ、なかなかに細かい細工をしてるんですね」

「そうですね。毎日コツコツと作業してます。セイジロウさんは、何してる人ですか?」


「私は、冒険者ですよ。まだ、初心者を脱したぐらいですから大した事ないですよ」

「えっ、冒険者だったんですか? 見えないですね。喋りからして商人かそれに準ずる人かと思ってました!」


「ハハ、喋りは成人してからずっとこれですからね。冒険者になってまだ一年も経ってないですし、元々異国出身ですから」


「異国と言うとグルガニウム国の人なんですか?」

「いえ、異大陸の異国出身ですよ。今は、旅をしつつ冒険者で生計を立ててます」

「へぇ。そうなんですか!? どうですか、ルインマスの街は? 気にいりましたか?」


「えぇ、活気があって物資も豊富で気にいってますよ.......この珊瑚を使った細工は綺麗ですね」

「気に入ってもらえて嬉しいです! しかも、その珊瑚の腕輪は自信作です! 細工するの大変だったんですよっ!」

 と、自分が制作した物を誉められると嬉しそうに言った。


「確かに....細かい紋様が素晴らしい....腕輪は魚骨ですか? 着色もしてあって色もいいですね」


「セイジロウさん、なかなかな目利きです! 正解です、魚骨の腕輪に珊瑚の細工を飾り付けた物ですっ! ちなみに、プレゼントですか? そうですね? しちゃうんですか? 安くしますよ?」

 女性らしく目をキラキラしながら聞いてくる。


 やっぱりわかる? そりゃ、男が付けるような腕輪じゃないからな....目に入った時にフローラさんに似合うと思ったんだよ!


「はい、プレゼントです。その女性を思い浮かべたら似合うと思ったので」

「キャー! 言いきりましたねー!! どんな人なんですかー? 恋人? 婚約者さん? もしかして奥さん?」

 女性はこういう話が好きだよな.....


「ハハ、まだ恋人ですよ。それで、いくらになりますか?」

「銀貨四枚ですよ!......でも、銀貨三枚と大銅貨五枚でいいですよ! その代わり、また買いに来てくれるなら!」


「では、それでお願いします。良いお店なので、コレを渡す人にも手紙で紹介しておきますよ」


「ありがとうございます!! お幸せにー!」

 賑やかなレイラさんに腕輪を包装してもらい代金を払ってから通りをブラついた。


 陽暮れまでブラ着いたら"餌付け亭" に戻り夕食を食べてからフローラさん宛の手紙を書いた。

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