第75話 倉庫整理

No75

倉庫整理




 アンリエッタ邸で昼食後の休憩が終わりいよいよ倉庫整理にとりかかる。アンリエッタさんと執事のシバスさんは仕事があるそうなので、メイドのメイリーンさんに倉庫まで案内をしてもらった。


 倉庫の入口は大扉と小扉の2つの扉があり、俺たちは小扉から倉庫内に入った。倉庫内は薄暗く天井部には申し訳程度の明かりとり窓が付いてるだけだった。


「セイジロウ様、こちらに倉庫内を照らす為の魔石がありますので、この魔石に魔力を入れてもらえますか?」


 メイリーンさんに言われるままに魔石に魔力を流すと、天井部に取り付けられた魔力灯が明かりを放った。


「コレは倉庫内の魔力灯に明かり灯す核魔石です。この魔石から魔力回路を伝い魔力が流れ魔力灯が点きます。倉庫整理をするときはご使用下さい。ちなみに、どの倉庫も小扉付近にありますから覚えておいて下さい」


 さらに、核魔石に備え付けてあるゲージが魔力灯の点灯時間を表してるそうだ。ゲージの数値を目安に魔力を流せば時間調整ができ無駄な魔力を使わなくて良くなる。とりあえず2時間分の魔力を流しておいた。


 メイリーンさんと倉庫内を歩いて見て回ると、木箱の山だらけだ。あっちこっち、そっちこっちに至るところに大小の木箱が無数にあった。


「....かなりの数ですね...コレがみんな魔導具なんですか?」

 隣を歩くメイリーンさんに聞いてみた。


「いえ、全部では無いですね。6割ぐらいが魔導具に関する何かしらの部品、素材になりますね。あとは、完成、未完成品の魔導具です。こちらが、この倉庫内にあると思われる目録になります」


 メイリーンさんから少し厚みがある紙束を受け取って目を通す。


「.......コレを確認しつつ倉庫内を整理すれば良いんですね?」

「はい、やり方は全て任せるとシバスから伺ってますが、それでよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫ですよ.....ちょっと予想より多いですけどね」

「ご無理をなさらずに、頑張ってください。わたしは、屋敷に戻ります。陽暮れ前にまたお伺いします」


「はい、分かりました。夕方からは冒険者ギルドの食事処の依頼がありますから」

「承知しました。では、よろしくお願いいたします」


 メイリーンさんが倉庫から立ち去り、さっそく俺は木箱の中身と目録の内容を照らし合わせていく。


 中身と目録品が一致したものをマダラに言って一度影に仕舞ってもらう。そして、魔導具、素材系、部品系、その他に分ける。


 ある程度の数をマダラの影に入れたら、倉庫内の掃除をして分類事に影から取り出して並べ直す。この作業を少しずつ繰り返して行くだけだ。


 本当はマダラの影の中に大量に入れたいが、入れた分だけ魔力を消費してしまう。


 マダラ自身の魔力を消費して影の中に物品を入れる事は出来るが、消費した魔力は魔物から摂取するか俺の魔力でしか回復しない。


 俺の魔力を補充した魔石を幾つかマダラの影に入れてあるから、その魔力を使いたい所だがその魔力を補充するのは俺になるし、影の保管にも魔力が必要なので湯水の如くは使えない。


 自分で持ち上げられない物や高い場所にあるものなどをマダラに、それ以外で運べるものは俺が運び、魔力の消費を抑えた半肉体労働になるわけだ。


 魔法が使える世界でも、魔法には制限や制約、ルールが存在し何でもかんでも自由自在なワケではない。この世界にはこの世界のルールがあるのだから.....


「しかし....終わらねぇ.....全部の倉庫を片づけるのに何日かかるのか....」

『セイジロウ、次はどうするんじゃ?』


「えっと....さっき影に入れた木箱をこっち出してくれるか?......パカリっ。....よし、合ってるな」

『しかし、アンリも良くこれほどの物を貯めたもんじゃな』


「そうだな....ちょっと貯めすぎ...あれ? マダラ、アンリエッタさんの事をアンリと呼んでるの?」

『そうじゃぞ、アヤツが呼べとうるさくての』


「えっ? 思念を使ったのか?」

『使っておらんよ。アンリの前では獣の鳴き声じゃ。それでも、何となく分かるんじゃろうな。ワレもそれなりに発声を代えて対応しておる』


「そうか...まぁ仲良くなるのは悪い事じゃないからな。その辺はマダラに任せるさ。さて、時間も少ないからさっさとやるかっ!」


 その後は、メイリーンさんが呼びに来るまで倉庫整理をした。アンリエッタさんに進捗を伝え明後日に来る事を言ってから、次の依頼先、冒険者ギルドの食事処に向かった。


▽△▽▽△▽▽△▽△△


 陽が暮れ始めた頃に冒険者ギルドに着いた。併設されてる食事処に向かうが、それらしい人が見当たらなかった。ギルドの受付嬢に尋ねてみた。


「初めまして、セイジロウと言いますが依頼について聞きたい事があるのですが...」

「はい、初めましてセイジロウさん。わたしは、シンディと言います。それで、聞きたい事とは何でしょうか?」


 受付嬢のシンディさんは、見た目20代前半に見えるが口調が落ち着いていて、さらに、常磐色の髪を肩口で切り揃え、前髪は左に流した髪型な為に固い印象で大人びてみえた。



 俺は併設されてる食事処について話し、依頼の件も伝えた。


「その件はエミリアから聞いてます。...エミリアはセイジロウさんの依頼を担当した受付嬢の名前ですね。それでですね、エミリアは席をはずす仕事がありまして、わたしが言伝と処理を受けましたので対応させてもらいます。改めて、説明させてもらいますので別室に案内します」


 俺は、シンディさんの後をついて別室に案内された。シンディさんの言葉からしてどうやら何かしらの不備があったのは推測出来るが.....さて、また面倒な事じゃないだろうな?

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