第72話 アンリエッタ

No72

アンリエッタ





 俺は、冒険者ギルドで受けた依頼の依頼先に向かった。依頼先は、街の中心部から少し外れた場所にあった。


 依頼先である建物を見ると、外観はかなり大きい。街中の建物とは違いちょっとした豪邸だ。隣には、それなりに大きい倉庫らしい建物がある。多分あれが依頼の倉庫だと予想した。


 「はぁ....どっかのお偉いさんの家か? とりあえず行ってみるか......」


 俺は建物を囲ってる塀付き門をくぐり、ドアノッカーを叩き声をかけた。


「すいません、冒険者ギルドから依頼を受けて来ました、セイジロウです」


 少しだけ待つと扉が開かれた。開いた扉から出てきたのは、ザッ執事と言った感じのロマンスグレーが似合う老紳士だ。


「いらっしゃいませ、わたしは当屋敷の執事でシバスと申します。お見知りおきを」


「ご丁寧ありがとうございます。私は、冒険者ギルドから依頼を受けて来ました、セイジロウと言います。こちらは、依頼主であるアンリエッタさんのお宅でしょうか?」


「はい、こちらはアンリエッタ様の屋敷になります。では、主のアンリエッタ様をお呼びしますので待合室へとご案内します」


 俺は、シバスさんの後に続き待合室に案内された。行きがけに屋敷内を見回してみると、豪華とは言えなかったが、貧相とも違った感じがした。普通よりちょい見た目が良い程度に見える。だがしかし、実は超高級調度品....とか?


 待合室に案内され、メイドの女性が紅茶と焼き菓子を用意してくれた。メイドさんの服はノーマルのメイド服だった。用意された紅茶と焼き菓子を食べながら少しの時間待つと、部屋の扉がノックされ声がかかる。


返事をして立ち上がり待つと、

「わぁー! 依頼を受けてくれてありがとうございますっ! 本当にありがとうございますっ!」

と、いきなりお礼を言われてしまった....すでに、この時点でこの依頼が普通ではない依頼だと勘づいた。


「アンリエッタ様、お客様が困ってらっしゃいますよ。まずは、腰を落ち着けて話してみては?」

「あっ、はいっ! そうでしたっ、ありがとうシバスっ!」


 どうやら、この人が依頼主兼屋敷の主みたいだ。外見は20代前半に見えるが....その若さでこの屋敷の持ち主?


 さらに可愛くもあり美人でもある。俺がちょっと好きだった某アイドルに似てる。そのアイドルは童顔かつボインなアイドルだ。


 髪の色はアサギ色を少し明るくした感じで、毛先に向かって薄い色になってグラデーションがかっている。瞳の色も碧眼でまるでファンタジーの住人のようだ。実際、ファンタジーの世界に来てるから当然か....


 白色のワンピースを着ている。ワンピースには所々に飾りつけや差し色がされていて、良く似合っている。さらに、スタイルも良いな。出るところはきっちりモッチリと出ている。


 腰までは何となくワンピース姿でも分かるが、脚が分からん。想像だが多分、美脚。うん、美脚でオケ!



 俺が、人物査定をしてる間に落ち着きを取り戻したのだろう。話をはじめた。

「先ほどは失礼しました、わたしが依頼主のアンリエッタです。当屋敷の主でもあります。ちなみに、先に言いますが貴族位ではありませんので楽にして下さい」


 アンリエッタさんに座るように勧められ、互いにソファに座り話を続ける。

「はい、ありがとうございます。私は冒険者ギルドから依頼受けて来ましたセイジロウと言います。ランクはDランクになります。それと、従魔使いです」


「まぁ、あの依頼をDランク冒険者さんがっ! やったね、シバスっ!」

「アンリエッタ様、まだお話し中です」

「あっ!...コホン...えっと、ちなみに、セイジロウさんは依頼内容を確認した上で受けてくれたんですよね?」


「はい、ギルドの受付嬢さんから聞きました。内容は倉庫整理で報酬は、魔導具または魔導具製作依頼費半額でしたか....あと、昼食付でしたね」


「えぇ、確かにその通りです。.....良かった、ちゃんと聞いてくれたんですね。でも、本当に良いんですか? わたしとしては嬉しいのですが、報酬に金銭は含まれてませんし、魔導具もどんな魔導具かは記載してないですから....」


「大丈夫ですよ。倉庫整理ぐらいは出来ますし、魔導具はそれなりに高価ですから。それに、昼食の魚料理に興味がありまして....」


  アンリエッタさんに宿で出された魚料理の話をした。その料理が余りにも美味しく今回の依頼も半分は料理目的な事を。


「うふふ。そうだったんですね! なら、昼食は期待して下さって大丈夫ですよ。料理人に話をしておきましょう」

「あっ! それと、私には従魔がいますので従魔の分もあると助かります。倉庫整理には従魔も手伝わせるつもりですから」


「従魔が?......従魔は外にいるのですか?」

「いえ、従魔の能力で今は姿を現してません。......初見の人には驚かれると思いますので....」


「わたしは大丈夫ですよ! 魔導具作りでは魔物の素材を使ったりしますし、見た目が怖い魚も見てますから.....従魔はすぐに現せるのですか?」

「えぇ、出来ますが.....出来れば外が良いかと...次いでに倉庫を見せてもらえると」


「それでは、外に行きましょう。従魔を見たら倉庫に案内します」


 俺は、アンリエッタさんと執事のシバスさんについていき屋敷の外に出た。


▽△▽△▽▽△▽


 屋敷の裏手にある庭に案内された俺は、マダラを喚んだ。

「では、....マダラ、姿を現せ」


 すると、俺の足元の影が広がりマダラが現れた。その姿は、体高2メートルオーバーで体長は5メートルオーバーだ。


 体に纏う毛色が名の由来であり、黒と白のマダラ模様だ。特徴の1つである金眼に、獅子の様な犬の様な、または狼の様な顔つきは迫力があり堂に入っていた。


「グルルゥ」っと、挨拶代わりに一鳴きするが、アンリエッタさんもシバスさんも堂々としていた。


 アンリエッタさんに関してはちょっとプルプルしてるが、その程度なら問題ないと思った矢先に、アンリエッタさんがマダラに向かっていきなり駆け出した。

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