第67話 カモンネーズとルインマスの街
No67
カモンネーズとルインマスの街
ルインマスの街に向けてハルジオンの街を出発してから4日目の朝を迎えた。
移動はマダラの背に乗って騎乗スタイル。移動速度に移動経路は通常とは違う為に、ルインマスの街まで地図と情報が正しければ歩いて半日の場所まで来てる事になる。
今は街道沿いから少し森に入った場所に居座り、朝食の準備中だ。昨夜食べ残しの野菜スープに干し肉を追加し、少し固めのバゲットに切れ目を入れて、葉野菜とチーズと火で炙った肉を挟んだサンドパンだ。
『んっ?....このパンは味が昨日のとは違うな....何でじゃ?』
「へへ、昨日の夜にちょっと新しい調味料を作って見たんだよ。こっちには酢が無いから、代用としてカモンの実で作ったから前の世界とは味が違うけど.....マヨネーズ改めカモンネーズかな?」
そう実はマヨネーズの作成を試してみたのだ。なぜこのタイミングで? なのかはマダラが『そろそろ同じ味ばかりで飽きるのぅ』 と、一言が始まりだった。
俺は別に味に凄いこだわりはないが、それなりに不味くない物だったら文句は言わない。もちろん、美味しいものは大歓迎だ。
だが、ここは異世界。香辛料や調味料は高く種類も多くはない。料理の味付けは、香草系のハーブに果実、香木に塩や胡椒、オリジナル調味料などが用いられる。
なので前から考えてたマヨネーズの作成を、ルインマスの街に着く前に試したのだ。元々、マヨネーズの作成はルインマスで行い新たな料理レシピとして冒険者ギルドとの交渉目的だったので、ほんの少し早まっただけだ。試食係りもいるしな。
「どうよ、新しい調味料の味は?なかなかに旨いと思わないか?」
『ふむ......(ハグハグ)なかなか....(ハグハグ)じゃ、おかわりじゃ!』
おおっ!反応は上々だな....つかそんなに食べる必要はないよな? お前、腹は減らないんじゃなかった?
「おかわりはあるけど.....マダラは空腹を感じないんだろ?別に食べなくてもいいんじゃないか?」
『むっ....なんじゃ、良いでは無いか食べても....セイジロウの食べる物が美味しそうなのじゃ。実際に食すとうまいしの。ワレにも欲は存在する。食物を食さなくても死にはせんし糧などいくらでもあるが、主が食べてるものを同じように食べたいと思うのは普通じゃろ?』
「そうだな....まぁそうか....一緒に食いたいんだな!しょうがないな、ちょっと待ってろよ!すぐに作ってやるからな!!へへへ」
たまにこういう可愛い事を言うからなぁ、コイツは!まぁ、俺と同じ物を食いたいんならしょうが無いよな?食べっぷりも良いし!
それから朝食も食べ終わり、ここからは街道を歩きながらルインマスの街を目指した。
海上貿易が盛んな為にルインマス方面からやたらと馬車の通行が多い。すれ違う数は10や20を軽く越える。たぶん、仕入れた商品を近くの村や街などで売り捌くか仕入れ目的だと予想するが....
それとマダラに向けられる視線もハルジオンの街程に感じない印象だ。ただ単に、関わりたくないだけかもしれないが....
自前の時計から時刻を確認すると、昼時前だった。すでに目線の先にはルインマスの街を囲むような城壁と大きな門扉が見えてきた。
多少の入場列はあるが通行のチェックの為だからしょうがない。黙って並ぶが.....やはり周り視線が気になるな....そして、いよいよ俺たちの順番になった。
「まっ、街に来た...もっ目的を...言え!」
門番さんがビビってるよ....そりゃ、マダラを初めて見ればそうだよな。でも、本当はなかなかに可愛いヤツなんだぜ?毛並みも良くてフワフワモフモフだし!
「はい、目的は旅ですね。あと、交易が盛んだと聞いたので珍しい物や食材、料理とかですかね?」
「みっ、身分を証明、.....証明するものはあるか?!」
俺の冒険者ギルドカードと従魔の登録証を渡して確認してもらう。
「よ、よしっ!かっ、確認した!ようこそ、ルインマヒュへっ!」
門番さん、噛んでたよー......ルインマスね。さてと、ようやく着いたな!!まずは、冒険者ギルドで宿とマダラの従魔登録の更新をしとくか....一応、冒険者ギルドがある場所では、登録または更新をしとかないと万が一があった場合は不味いからな....
『マダラ、ルインマスの街でも基本はハルジオンの街と一緒な。何か変化があれば知らせてくれ』
『ふむ、わかったぞセイジロウ。とりあえず、様子見じゃな?』
『あぁ、ルインマスがどんな街で冒険者達がどんな感じなのか何も分からないからな....出来れば居心地がいい場所であってもらいたいけど、ダメなら移動する事も頭に置いておいてくれ』
『わかっておる.....周りの視線も驚き恐怖、好奇心など戸惑いを感じる視線ばかりじゃな』
『そうだな....最初はしょうがないさ。視線が嫌なら影に入っていてもいいよ?』
『いや、これはこれで意味はあるからのぅ、別にかまわん。それに、セイジロウがワレの事を思ってるのも理解しておるからのぅ』
『そうか.....まぁ、頼むぜ相棒』
『任せろ、ワレはセイジロウの守護者だ』
そして、数多くの視線を浴びながらも門番に聞いた道を辿りながらルインマスの冒険者ギルドの扉を開いた。
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