第63話 戻ってきた日常

No63

戻ってきた日常





 シーバル遺跡調査から3日が経った。あれから街に着いた調査隊は錬金術ギルドと冒険者ギルドに依頼報告を行い、今回の依頼報酬を受け取ったみんなは挨拶をして別れた。


 俺とギルバートさんも簡単な挨拶をしてから別れた。もちろん、依頼報酬もしっかりと両ギルドから受け取った。賊に関しては冒険者ギルドから金一封(小金貨1枚)をもらった。


 それから1日だけ休みをとり早速今日から、働き始めだ。冒険者ギルドに行くぞー!


「おはようございます、アリーナさん。今日からまたプリン販売とフレンチトーストを販売しますからよろしくお願いしますね」

「セイジロウさんっ!おはようございます。もぅ、待ち遠しかったんですよ!これでやっと仕事にも気合いが入りますよ!」


「ありがとうございます。今日は、プリンもフレンチトーストも販売数は多めですから、みなさんにも伝えてください」

「分かりました!伝えておきますねっ!」


あっ!!


「フローラさんにも伝えて下さい!フレンチトーストを焼いて待ってますと!」

「ふふ、分かりました。伝えておきますよ」


 あぶねぇー!前回の二の舞になるところだったぜ.....さすがに、連チャンでは不味いからな....


 プリンの仕込みにフレンチトーストの仕込みも終わりと、販売開始と同時にギルド職員がやってきて売れる売れる!!ワハハハっ!笑いが止まらんなっ!!


 フレンチトーストの売り上げも順調で昼前には残りも少なくなってきた頃、フローラさんが食事処のカウンターに座り声をかけてきた。

「セイジロウさん、お帰りなさい。フレンチトーストと紅茶をいただけるかしら?」


「フローラさん.....ただいま帰りました。フレンチトーストと紅茶ですね。少々お待ち下さい」

「遺跡の調査は...シーバル遺跡だったわね。そっちは順調にいったらしいわね?」


「はい、錬金術ギルドのギルバートさんの話によるとあとは調査したものを精査していくらしいですよ。現状では今回の調査が限界らしいですし...」

「そう、あとは錬金術ギルドの報告を待つだけね」


「そうですね.....はい!お待たせしました。フレンチトーストと紅茶です。あと、サービスのハチミツプリンです」

「あら、良いのかしら?」

「えぇ、あっちの人達には根回し済みですから」


 カウンターの端でプリンを販売してくれてるギルド職員さんの2人を見ると親指を立ててサムズアップしてた。あの2人には報酬とは別にプリンを1つずつ渡してある。


「はぁ....ギルド職員が買収されてどうするのよ....」

「まぁ、金銭じゃないですし久し振りの販売です。フローラさんも久し振りだし、何より私が作ったプリンは嫌ですか?」


「イヤじゃないわよ....いただくわ」

 フローラさんは、フレンチトーストを上品に食べつつ顔は幸せいっぱいだ。ハチミツプリンも美味しそうに食べてくれた。


「ふぅ....いつ食べても美味しいわね」

「ありがとうございます。フローラさん、今夜は予定ありますか?良ければ夕食でもどうですか?」


「あら、食事の誘いは嬉しいわ.....けど、今夜は多分無理ね。少し書類が溜まり始めてるのよ。早め片付けないといけないから。ごめんねセイジロウさん」


「いえ、急に誘ったのが私ですから....なら、フローラさんの休日ならどうでしょう?夕食はノクティスさんの所で...」

「えぇ、それなら問題ないわ!楽しみにしてるわね。じゃ、仕事に戻るわ。フレンチトースト美味しかったわよ」


 やったねっ!フローラさんと夕食デートだぜぃ!!ヨーシ、ちょっと頑張っちゃいますか!


▽△▽▽△▽△▽△▽△▽▽△▽△▽△△


 夕方からはギルドの食事処で忙しく働いた。

「おーい!エール4つにフライドポテトとピザ3種なぁー!」


「ワイン割りを4つに、チーズの盛り合わせを2つね!」


「オーク肉のステーキを3人前でっ!」


「エール3つにワイン割り2つと、ピザとフライドポテト、チーズの盛り合わせにオーク肉のステーキをそれぞれ3つずつだ!!」


 毎回、思うけど忙し過ぎじゃね?最初の頃よりだいぶ忙しくなった気がするんだけどっ!!


ちょっと考えてると料理をしてるビルドさんの声と、リーナさんにエリナさんの声が響いた。

「セイジロウっ!エールを早く持っていけっ!それと、フライドポテトが出来てるからそれもだ!!」


「セイジロウさーん!ワイン樽を裏の倉庫から持ってきてくださーい!!終わりそーですっ!」


「セイジロウっ!!ピザが出来たぞ!あとチーズの盛り合わせに、オーク肉のステーキだっ!」


「セイジロウさーん!マダラが、フライドポテトが欲しいって思念を飛ばしてますよー!」


 おぃ!!この忙しいのにマダラはフライドポテトを注文してんのかよっ!しかも、思念を俺じゃなくてエリナさんにかよっ!


 そんな忙しさも3時間もすれば終わり、冒険者達は街中へと次の酒場や娼館へと繰り出していった。


食事処の客も落ち着きビルドさん達に話しかけた。

「ビルドさん、前より確実に忙しくなって来てますよね?」

「あぁ確かにな。.....プハァーー!....料理が良いのかマダラが良いのか分からねぇが客は増えたな....」


「結構料理が売れてますし、お酒も売れてますよねー!ピザも好調ですしー!」

「でもでも、忙しくなりすぎじゃないですかー?今日は、セイジロウさんがいますから良かったですけど、いないときは更に忙しく感じますよぉ!」


「そうだなーっ!そりゃ、俺も感じるが....なかなか依頼を受けるヤツがいねぇんだよな....そんなに報酬は悪くねぇんだけどな...」


「何でですかね? 私が働く前はどうだったんですか?」

「セイジロウが来る前は、そんなに忙しく無かったんだよ。メニューも今ほど多くも無かったしな。本当に駆けつけ1杯飲んで街にいっちまうからな...」


「そだよー!酷いときは10人しか来ない日もあったんだよー!でも、暇だったからラッキーだけどね!」

「そりゃ、冬の時期の話だろうがっ!...まぁ、そんな日もあったな」


「でも、現状は人を雇わないと回らなくなってきましたよね?」

「確かには....まだ先だが火水季になって暑くなればさらに日射し避けや水分を求めて来るぞ。あとは、マダラ目当てもあるな。あいつ、客からオーク肉を差し出されて食ってたぞ」


あーー!思い出したっ!!


「そうだっ!マダラっ!お前、エリナさんに思念飛ばしてフライドポテトを注文しようとしてたろっ!忙しいんだからもう少し気をつかえよっ!」

『なんじゃ、別に良いではないか。肉ばかりで塩気がほしかったんじゃ。あのフライドポテトはなかなか旨いからの』


「いや、そんなの聞いてないからっ!だいたいお前は働いてないだろ?隅っこで寝転がってるだけじゃん!」

『何を言っている?ワレはちゃんと働いておるぞ?ワレが食せば金が入るのであろう?今日はたくさん食べたぞ。食べた分がお主達の金になるなら、ワレは働いてる事になるだろ』


 なっ!....こいつ、いつの間にそんな知恵を....ただ寝転がってるとばかり思ってたのに!


「よく分からんがセイジロウの顔を見れば軍杯はマダラのようだな....さてと、人員は少し真剣に考えて見るから今夜はお開きだ。土産を忘れるなよー!」


 と、ビルドさんが冒険者ギルドを出ていき、リーナさんにエリナさんも土産を持って出ていった。


 俺とマダラもビルドさんが作ってくれた土産を持って自宅へとマダラと一緒に帰った。


 ビルドさんと話してたけど人手不足は深刻だよな?

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