第62話 シーバル遺跡調査・終幕

No62

シーバル遺跡調査・終幕





 翌日はミリアーナさんを乗せた馬車を見送りギルバートさんのところに向かった。

「ギルバートさん、今日は何かする事ありますか?」

「ああ、セイジロウさん。そうですね....まだ、昨日の検証の話し合いがまだおわらなくて......」


なら、今日はほのぼのライフか?


「セイジロウさん、この小瓶に血を入れてもらえますか?」

 へっ? 突然、何言ってのギルバートさん...その小瓶はどっからもってきたの?


「えっ? 血ですか?」

「はい、まだしばらくは話し合いが続きますけど、すでに調査の進行は最終段階にはいってます。以前、セイジロウさんに話しましたけど、セイジロウさんの血を使った魔法陣発動実験が最終になります。なので、今日の昼過ぎにまた地下に潜り魔法陣発動をお願いしたいのです」


 あー、確かに聞いたな.....この小瓶ぐらいなら血を抜いても問題ないかな。見た感じ、試験管一本分ぐらいだし。


「分かりました、救護所で血を入れて来ればいいですか?」

「はい、あとは昼過ぎまで休んでいて下されば大丈夫ですから。水分と軽い食べ物を用意して置くように言っときますから、受け取って食べてくださいね」


 じゃ、ちゃちゃっと血を抜いてきますか.....

 で、血を抜いたあとは日向ぼっこをしながらボケーっとしてたよ。マダラは、ガーディルのメンバーに連れていかれてボッチですよ。


 まぁ、しょうがないっちゃしょうがないけど、この暇な時間がなー....そういえば、ラム爺のトコで作ったリバーシはどんな感じだっけ? 一応、商業ギルドに話を持っていってるから下手な事にはなってないとは思うけど....リバーシを持ってくればよかったなぁ....


 ボケーっとした時間も過ぎ昼時になると、冒険者達が炊き出しの準備に取り掛かり始めた。俺も準備に加わってるとマダラ達が帰ってきた。


 話を聞くと二匹のホーンラビットと六匹のゴブリンを仕留めたそうだ。ゴブリンの死体はマダラがもらい、ホーンラビットの二匹は夕食に使うそうだ。


「マダラ、今日の昼飯を食べた後に俺の血を使った魔法陣発動をするそうなんだよ。マダラもちょっと付き合ってくれるか?」

『まだ、やるのか? いい加減出来んと諦めたらどうなんじゃ』


「そういうなよ、事実を知らないんだからしょうがないだろ? 本当の事を話すわけにも行かないしさ....これが最後らしいしさ」

『わかった、セイジロウの頼みじゃからな』

「じゃ、頼むな!」


 と、マダラは人がいない場所に寝転がり、俺はマダラの飯と自分のをもらい昼食を食べた。


▽△▽△▽▽△▽△△▽△▽△△▽△▽▽


 昼食後、地下遺跡に降り魔法陣発動を行おうとしている。


「じゃ、小瓶の中の血を床の魔法陣に垂らして魔力を流してください」

「分かりました。やりますよ!」


 小瓶の栓を抜き血を魔法陣に垂らしていく。垂らし終わりその場で膝をつき手を魔法陣に当て魔力をながしていく。


 すると、


 反応は特になかった......そりゃ、そうだ。すでにこの魔法陣の役目は終わりただの床に描いた落書きみたいなのだからな。


「やはり、ですか.....セイジロウさんありがとうございました。これで遺跡調査がほぼ終わりました。あとは、総合的な話し合いをして明日にはハルジオンの街に向けて出発ですね」


「そうですか、分かりました。レグリットさんには伝えますか?」

「はい、地上に戻ったら伝えてください」


と、挨拶をして地上へと先に戻る。


「はぁ....やっと終わったか...マダラもお疲れさん」

『ワレは疲れておらんぞ、狩りも出来て体を動かせたからのぅ。概ね満足じゃ』


「さいで.....さて、どうする? まだ、狩りに行ける陽の高さだけど?」

『ふむ....今日は陽に当たっていよう。たまには、微睡みも必要じゃからな』


 じゃ、俺はレグリットさんのトコに行って話でもしてこようかね....


▽△△▽▽▽△▽△▽▽△▽▽△▽△▽


 夕食時にギルバートさんからみんなに通達があり、遺跡調査は終了と宣言された。明日の朝に出発準備を始め、出来次第出発すると言われた。尚、ミリアーナさんを乗せた馬車が明日、遺跡に向かって出発を開始してくる予定の為、馬を早朝に出して先行連絡を行う事になった。これで入れ違いにならずにすんだ。


 今夜で遺跡調査も終わりと言うことで、残された食料は出来るだけ使いきる事になりいつも以上に豪華になった。


 予定外な賊の発見はあったが、ミリアーナさんの命を助け出せた事は幸いだった。精神的な心のケアは必要だが、命あってのものだ。と、簡単に割りきれるものではないか....


 前の世界でも心の傷を負う女性はたくさんいる。常に傷を負うのは力無きものであり弱者だった。この世界では、命すらも簡単に奪われる。命が助かった事を喜ぶべきか、心に傷を残したまま死ぬまで生きるのがいいのか....




 翌日、出発準備は滞りなく進み予定通りにシーバル遺跡の調査は終わった。

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