第2話未知との遭遇
No2
未知との遭遇
俺は自然と目が覚めた。薄く目を開けると辺りは明るく、陽射しが木々の隙間からさしていた。
「...んっ...朝か....って、やっぱり現実かよ...」
辺りを見回すと昨夜見た光景と変化はなかった。が、すぐに思い違いをしていた。
「..って、おぃ....ホームがねぇじゃねぇか...なんなんだよ...朝から....」
そこにあったのは俺が寝ていたベンチがあるだけだった。
ホームも線路も何もかもなかった。ベンチ以外は何も....
「もう、ホントに、溜め息しかでねぇよ...マジで...こりゃ、マジで考えた方がいいな」
俺は、ベンチに座り水筒のお茶を飲みながら考えた。まずは、状況....っつか可能性を考えた。
一つ、知らずの内に拉致されて森深くに置いてかれた。
(いや、無いな...鞄の中身はちゃんとあるし、俺は、平々凡々の一般サラリーマンだ。俺を拉致しても得るものは限りなく少ない。カードもあるし、現金もある)
一つ、ファンタジー的な事が起こり異世界にきた。
(これも、現実的じゃない.....が、可能性の一つか?)
一つ、何らかの事故にあい死後の世界にいる。
(無くは無いが、五感はしっかりしてる。木の匂いや風も感じる。視覚や聴覚、味覚や触覚、嗅覚もあるし....鼓動も感じる...現実的に考えて、生きてる事を信じるか...)
「一番考えられるのは....ファンタジーか?.....とりあえず、何かないか探すか...」
俺は鞄に付いてる、いつか旅先で記念に買った方位磁石で方角を確認した。
「.....一応、北と南は指すな...なら東に向かうか....」
特に何かしらの根拠があるわけでもなく、東に向かって歩き出した。回りを見ながら人工物がないか探しながらただ東を目指して歩いた。
歩き始めて2時間ぐらいがたったときに変化があった。
ガザッ...カサッ...
茂みから白い生き物が出てきた。
「っ?!...なんだ、兎...兎か?」
兎らしい動物を見たが俺が知っている兎とはちょっと違っていた。
その兎と思しき動物の頭には小さな角が生えていた。
「....マジかよ...本当に迷い混んだのか?...異世界か....」
俺は、口から独り言を呟きながらその角が生えた兎を見てると、兎と目があった。
「....見た目は兎だな....っ!?....」
目があった兎は体の向きを変えると俺の方に走りながら角を突き出して飛びかかってきた。
「...くっ...いきなり襲うのかよっ!!」
飛びかかってきた兎を反射的に避けて、地面に起きてる棒切れを拾い目の前で構えた。
兎はすぐに反転してきてまた飛びかかってきた。
「...オラッ!...このっ...このっ!!」
俺は、棒を振り回し兎に殴打した。殴った兎は地面に叩きつけられさらに俺は2度、3度と殴り兎を叩き殺した。
「はっ...はっ...はぁ....はぁぁ...いったいなんだよこれは....こんな動物は地球にいなかったぞ....いなかったよな?」
倒した兎を良く見ても、記憶にそれらしい動物は思い浮かばなかった。
「これが、ファンタジーならレベルアップか、経験値を取得...または、姿が消えて金かドロップアイテムを出すか?」
しばらく待ってもそれらしい事は何も起きなかった。
「だよな....ステータス...フンっ、...メニュー....システムウィンドウ...って、やっぱ無理か....」
俺は、記憶にある異世界ファンタジーに出てくる仕草や言葉を言っても何も起きなかった。
「さて、コイツをどうするかだが...仮に異世界だとしてコイツはアイテム.....素材があるのか?.....解体なんてできねぇぞ」
普通に考えて一般サラリーマンが動物の解体技能を持ってるワケがない。食料となる肉は、スーパーで解体され衛生処理をされた物が、パック詰めされて売られてるだけだ。
猟師や料理人、解体を仕事としていない限りはそんな特殊技能は見につかない。
「....どうする?放置か?....やっぱり素材とか取って売れたりするのか?....でも、もし街があって角や皮を持っていたとして、実際は現実世界だった時は、動物虐待で逮捕か?...そりゃ、勘弁だな」
頭の中で色々な事を考えるが堂々巡りになるばかりだった。
「...とりあえず角だけでも取るか、コレなら嵩張らないし見つかることも少ないだろう」
鞄に入れてあった十徳道具を出し、付いている小さなナイフを出して、兎の角の生え際にナイフを入れ捻りながら取り出した。手に伝わる嫌な感触や動物の血の匂いを我慢しながら....
「初めてだな、角だけだけど動物を捌いたのは.....まさか...魔石とかあったりしないだろうな....あったりするのか?」
俺は、確認の為だと思い兎の胸を小さな刃で無理矢理に切り開いた。手に伝わる肉を切り裂く感触を我慢しながら手が入るだけの切り込みを入れた。
胸の切り込みから血と血の独特な匂いが一気に広がった。その切り込みに手を入れてそれらしい物を感触だけで探すが.....思っていた物は見つからなかった。
「....やっぱり、無かったか....うへぇ...まずはこの血をどうにかしなきゃな」
とりあえず、近くに落ちてる木の枝で簡単には穴を堀って殺した兎を埋めた。そのあとは、着ている肌着を脱いで水筒に入ってるお茶を少し肌着に湿らせて、血で汚れた手を拭いた。
「...水筒に入ってるお茶も少なくなってきたな....なるべく早めに水を確保したいが地理が分からなきゃどうしようもないな....せめて道とか看板が見つかればな...」
手に入れた兎の角は肌着にくるんで鞄にしまい、方位磁石を確認して歩き出す。心許ないが無いよりマシだと考えて棒も持っていった。
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あれから時刻は14時を回り腹も減ってきたが食料となる物はなかった。鞄に入ってるのは某栄養食品とガムだけだった。栄養食品はとっておいて、ガムをずっと噛みながら空腹を我慢した。
「....結構歩いたはずなんだが、どこまで続くんだこの森は?....そろそろ森の端に出てもいいんじゃないか?くそっ.....」
文句を言いながら俺は、歩き続け未知の動物に会わないように祈った。
しばらく足の疲れと痛みを我慢しながら歩くと視界の先に森の切れ間が見えた。
「っ?!...やっとか出来れば道があると嬉しいが....ご都合主義のフラグは立つか?」
俺の祈りが届いたのか、ただ運がいいのか分からないが目の前に道.....田舎で良く見る舗装されて無い道が現れた。
「なんとも言いづらいが...道だな。コレだけじゃ地球なのか判断出来ないな....見た感じは何かしらの乗り物の跡はあるから使われてる道なんだろうが....とりあえず、東に向かってる方へ行くか...」
方位磁石を確認しながら道なりに歩き始めた。空を見上げると陽の傾きは大きくなっていて時間を確認すると時刻は16時を回っていた。
「マズイな...このまま行けば野宿か、夜通し歩くハメになるな....こんな分けの分かんない場所で見たこともない動物がいる場所で野宿は流石にしたくないぞ...しかも、明かりも何もない道を歩くのも怖すぎるだろう...」
俺は独り言をブツブツ言いながら道を歩いた。こういう時にウォークマンがあれば音楽を聞き鼻歌混じりで歩きたいが、今は無駄に携帯の充電は使いたくない。
時折、携帯の電源を入れて通信状況を確認するが相変わらず圏外だ。
地球上で圏外の場所はそれなりにあるが、日本に限って言えばかなり少ない。限られた空間か特別な施設、電波が届かない特殊な場所を覗けば日本全国届く。
現状を考えてると俺が居た、或いは存在していた世界とは違う世界にいる可能性が高い。
そして、それは現実として受け入れなければいけないと数時間後に判明した。
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