空の王国(旧)

雨世界

1 自由な空。

 空の王国


 登場人物


 七実と七花 仲のいい双子の姉妹


 プロローグ


 大好きだよ。私は、あなたのことが大好き。


 空の中へ


 空の中で手をつなぐ。


 あなたと。わたしと。


 笑顔で。一緒に。……泣きながら。


 本編


 自由な空。


 七花がいなくなったのは、本当に突然のことだった。

 両親にも七花の双子の姉である七実にも、七花のいなくなった理由がよくわからなかった。

 それはあるいは、七花本人にも、よくわかっていないことだったのかもしれない。でも、事実として、七花はいなくなった。

 七実の前から。家族の前から、七花は或る日突然、たった一人で、消えてしまって、もう私たちの手の届かない遠い世界に行ってしまったのだった。


「七花」

 冬の星空を見上げて、七実は七花のことを思う。

 ……お姉ちゃん。

 七花が七実のことを呼ぶ。


 七実は七花がいなくなって、悲しくて、悲しくて仕方がなかった。泣いても泣いても、涙は止まらなかったし、(それは七実と七花の両親も同じだった)悲しみはいつまでも消えてくれなかった。

 そんなある日、ついに七実はいなくなった七花を探しに出かけることにした。


 いなくなった七花を探し出して、七花をもう一度あったかい家の中に連れ戻して、そこで家族みんなで、飼い犬のタローと一緒に、みんなで、楽しくご飯を食べるんだって、七実はそんなことを決意した。


「よし」

 出かける準備を会えた七実は家を出る。

 そして、七花が消えていった『空の中』に向かって、その足を動かし始めた。青色の永遠に広がる空の中にあるという、『空の王国』に向かって、七実は歩き始める。


 一度歩き始めると、ずっと立ち止まっていたせいかもしれないけど、七実の足は、もう二度と、歩くことを止めることはなかった。

(それに、なんだか元気も出てきた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る