第65話 一方その頃赤坂は

悩みをなんとかしてくれる組織として、メイ子は七姉妹会を頼った。

そしてその助けもあって友人と仲直りをした。しかしそれ以来七姉妹会には出入りする事はなかった。


「おかげでユイ子ちゃんとは仲直りできました。その、七姉妹会の方にはあまり報告ができなくて申し訳ありませんが」

「構わない。妹扱いを押し付ける事が、本来女子には恐怖である事を最近の俺達は学習した」

「恐怖って。……まぁあの執着は確かに異常でしたけど」


そう言いながらもメイ子はくすくすと笑った。怖いと面白いは紙一重で、今の彼女には面白いようだ。


「これ、その時のお礼です。チョコレートなんですけど……先輩はもういっぱい貰っているみたいですね」

「あぁ、けど今日のために用意してくれたのなら受けとろう。ありがとう」


お礼とはあるが、メイ子が差し出したのは昴の片手くらいの一箱だった。一人にしては多く、皆で分けるには少ない量だ。


「チョコは七姉妹会の皆に渡したのか?」

「あ、いえ……昴先輩だけで」

「ならこれは皆でいる時にいただく」

「あ……」


何か言いたさげなメイ子は、きっと七姉妹会皆に食べられると不都合でもあるのだろう。これは昴への本命チョコかもしれない。しかしメイ子はそんな事は一言も言わないでいた。


「……はい。市販で日持ちのするものなので、週明けにでも皆さんと食べて下さい」


そして本心を隠して告げる。切り替えが早いのか、不服そうだったメイ子はすぐに笑みを見せた。


「それじゃ、失礼します」


そして一足先に昴の前を小走りに進んだ。

彼女が去ってから昴は貰ったチョコレートを紙袋にしまいこんだ。


メイ子の本心に気付かない程、昴は鈍くない。しかしメイ子がそう振る舞わない以上はどうしようもない。たとえそれが本命チョコだとしても、義理チョコとして扱うべきだ。

もっとも、メイ子に恋愛感情を向けられたとしても丁重に断るだけだが。


しかしメイ子の姿が一瞬舞と重なった。小柄な二人はシルエットがよく似ているためだ。

そして舞に本命チョコレートをもらえると、期待をしてしまった。


「……何を考えているのだろうな、俺は」


もし、万が一にも舞に本命チョコレートを貰えるとして、自分で勝手に義理と思い込むはずだ。

いまだに己を許せない昴はメイ子のように本心を隠してしまう。そして不幸になろうとするのだった。

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