破邪犬正キュオーンデア

★ みかん

第1話「開巻劈頭」


「いってきまーす。」

いつも通りのよく晴れた朝、少女は早朝六時に家を出た。

彼女は剣道部に所属しており、朝練の為早めに家を出たのだ。


大塚おおつかカガヤ、高校1年B組、身長160cm、血液型O型。

茶がかった髪のセミロングで、全体的に右側に髪が下りるようにしており、

左側は髪留めがされているが、髪留めには布が付いていて耳を隠してる。


「いやーやはり朝は気持ちいいや。」

彼女の学校は坂の上にあり、周りは木々に囲まれている。

「痛っ!!」

急に頭に痛みが走る、頭に当たったそれは地面に転がっている.

落ちてきたのはビー玉のようだ。

「なんでこんなものが上から?」

まわりを見ても誰がいるわけでもなく、カガヤは不思議に思う。

「上って言ったら、学校しかないし、誰かが投げたのかな?」

そう思いながら、ビー玉をポケットにしまい、学校に登って行った。


--------



「んで?それはどうなったの?」

朝練も終わり、教室でHRをまっていたカガヤは友人二人に朝のビー玉事情を話していた。

「んで、その後学校に来たけどだ~れもいないんだよね、まぁビー玉だからいいかとも思ったんだけど、

このビー玉さぁやたらと綺麗で、なんか捨てるのも勿体なくてね。」

そう言ってカガヤは二人のうち身長の高い彼女にビー玉を渡す。

彼女は、畑本 悠はたもと ゆう、腰まである長い髪を首元で一つに結んでいて、眼鏡をつけている。

スポーツがといくで、女子から兄貴と呼ばれ親しまれている。

「まぁ確かにきれいだね。」

そう言って悠はもう一人の子にビー玉を回した。

「本当だ、綺麗だ。」

こちらは相原 和歌あいはら わか、こちらはどちらかというと頭脳派、大人しくかわいい子だ。

黒髪で長髪、前髪は綺麗にそろえられいる。

「もしかしてカラスかも、光るものを巣に持ち帰るらしいから、持って帰る途中で落としたとか。」

そう言って和歌はカガヤにビー玉を返した。

「なるほど。」

カガヤは納得ができたようで、ビー玉をスカートのポケットにしまった。

「大ニュース大ニュース。」

大きな声と共に別の女性とがクラスに入ってきた。

「おはようー、空根そらね今日も元気だな。」

話しかけられた男子生徒に挨拶そこそこに、彼女は教団に立った。

彼女の名は空根そらね エトラ、オカッパみたいな髪で左側で一束ねにした髪がぴょーんと伸びている。

「みんなちゅうもーく!!ついに私は写真に収めたのだ!!」

その声に反応しみなが教団の方を見る。

エトラは携帯端末を取り出し、教団後ろのスクリーンに同調させた。

「みよ!前より探しておりました!美少女戦士の写真だー!!」

そうゆうと壁一面のスクリーンに写真が写るが、人が飛んでいるシルエットが写っているだけだった。

「おい空根、それじゃ本物かどうかわかんねぇじゃねぇか。」

「なにをいっているの!これでも決定的な写真だよ!こうやって姿が写っているんだから!」

彼女はこの学校の新聞部に所属し、つねにスクープを探している、そんな彼女が映してきたのは、

最近巷で噂になっている美少女戦士の写真だ。

「ふん、クラスメイトだから早めに見せてあげたんだよ、今日の学校メルマガに載せるからよろしこ!」

スクリーンとの同調を切り、いつものようにあたし達の席に寄ってきた。

「その写真どうしたの?」

「昨日の夜に外を眺めてたら、こっちに向かって飛んできたんだよ!だから急いで撮ったんだけど、夜だからシルエットしか映らなかったんだよ。」

「へー、話によるとほとんど姿を現さないらしいのにね、現場から飛び立つとそのまま消えてしまうらしいのに。」

彼女の話は聞くが、あくまで噂レベルだ、助けられた人たちもほとんど覚えていない為、詳しい事情が分からない。

しかもそのあと彼女を写真やムービーでとっても画像が乱れまともに取れないらしい。

「いや~、やはりあたしにはスクープ運があるんだよ、デアっているんだよ!」

「デア?何それ?」

聞きなれない言葉にカガヤが問いかける、和歌がちゃんと説明をしてくれる。

「知らないのカガヤ?最近都会で流行っている言葉らしいよ、イケてる女子はそう呼ばれるんだって。」

「そうだよカガヤ、ちなみにデアとはギリシャ語で女神って意味だよ、向こうのJKではギリシャ語が流行っているんだよ。」

こんな首都から離れた学校では人聞きやSNSでのやりとりは他人事だ。

「ちなみに前回メルマガにしたから、ここにギリシャ語の簡易辞書も作ったよ。」

エトラは自慢そうに携帯の画面を見せてくる、そういえば入っていたとカガヤは自分の携帯のメールを思い出していた。

「結構訳して言って来るらしいよ、ネコはアイルロース、犬はキュオーンとか、知ってないと訳がわからないよね」

悠は苦笑いで答えてくれた。

「カガヤいる?」

急に男子の声が聞こえる。

「ありゃ露、おはよう。」

「おはようカガヤ、これおばさんから預かったお弁当。」

そう言って露は、カガヤに包みを手渡した。

彼は海兵 露かいひょう あらわ、カガヤの幼馴染で家も近い、今日のように朝早く家を出る日は家からお弁当を預かりカガヤに手渡しに来る。

少し無造作ヘアーで学生なのに顎髭をはやしている、しかし顔立ちが優しい為不良っぽさはない。

「何の話してるの?」

「あぁ都会のJKはギリシャ語で話しているって話。」

「そうなんだ、また変わった話題だね。」

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り、先生が教室に入ってくる、みな自分の席に戻っていく。

露も急いで自分の教室も戻っていく。

カガヤはスカートの上からビー玉を軽くなでていた。


--------


「ありがとうございました!」

放課後になり、カガヤは部活に出ていたがそれも終わりの時間を迎えた。

着替えも終わり話そこそこに、みな家路についていく。

カガヤは一番最後に道場を締め、職員室に鍵を返してから帰宅の為、みなより遅れて校門むかった。

「その方、待たれよ、あなたに話があります。」

カガヤは声がしたので振り返るが誰もいない、すると。

「突然申し訳ない。」

声がまたしたので下を向くと見慣れない女の子が膝を折って座っていた。

身長が低く小学生かと思いそうになるが、カガヤと同じ制服を着ているので、

この学校の生徒だとわかる、首元までの黒髪をセンターで分け、後ろ髪をくくってポニーテールにしている。

「ふふふ、気配を消していたで気が付かなかったであろう。」

ただ単に背が低いうえに屈んでいたので気が付かなかっただけだと思うがカガヤは何も言わなかった。

「拙者は上山 千星うえやま ちほし、お主今日これくらいの数珠の玉を拾わなかったか?」

そう言って彼女は人差し指を親指で小さな円を作った。

「あぁあのビー玉あなたのなの?」

「その通り、返していただきたい。」

なんか変な言葉を使うので、カガヤは怪しく思ってきた。

「いやあなたのって、こんなビー玉誰のかなんてわからないじゃない、他の人のだったら大変だし。」

素直に渡せばいいのだが、変な言葉で来るので怪しむカガヤ。

「そ、そういわれても、本当に拙者のだし・・・、そうだ」

急にポケットから腕時計のようなものを取り出し、カガヤに渡してきた。

「これにへこみがあるだろう?そこにその球がはまるから試してみてくれ。」

カガヤはそれを受け取り、玉をハメてみると確かにきれい納まり簡単に取れなくなった。

「本当にあなたの物みたいだね、わかったじゃこれ。」

カガヤは納得し、玉がはまったままそれを差し出そうとした、が。

「ほんとに!?、・・・・・・うん、丁度学校にいるからすぐに向かうよ。」

急に彼女は背中を向け独り言をしゃべりだした。

「失礼、急用が入ったため、これにて失礼する。」

そう言って彼女は校舎の方に走り去ってしまう。

カガヤはなんだったんだろうと思い、家に帰ろうと思ったが手にしている物に気が付いた。

「いや、これ返さないと、おーい!!」

呼んでみたが返事がない、カガヤは仕方なく彼女が走り去った方に向かう事にした。


--------


「おーいどこにいったの?」

彼女を追って校舎内にやってきたカガヤ、まわりもだいぶ暗くなっていて、夜の学校は不気味ださっさと渡して帰りたいと思っている。


角を曲がると彼女が立っていた、よかったと思い近寄ろうとする。

開権犬実かいごんけんじつ!!」

しかし次の瞬間彼女がピカっと光、いつの間にか彼女の姿が変わってしまった。

そのシルエットは朝にエトラが見せてくれたあの写真に似ていた。

「セシル反応はどこから?。」

また彼女は独り言をつぶやいている、誰かの名前を言っていたから、誰かと話をしているのだろうか?

しかし今しかないと、カガヤは声を出した。

「すいません、あなたはなんなんですか。」

「拙者は、社巣魔シャスマを倒す・・・って、お主なぜここに!?」

彼女は驚きこちらを凝視した。

あんたが連れてきたんだよと心の中でツッコみつつ、カガヤは先ほどの玉を差し出した。

「これを忘れていったかた追いかけていったら、その恰好なに?猫?」

「・・・またやってしまった、けどなぜここにいる?それになぜ拙者だとわかる?」

「いやいや、校舎に入っただけだし、なぜわかるって服が変わっただけじゃん。」

カガヤはなぜ疑問視するのかわからないと答えるも千星は頭を抱えてしまった、しかしすぐに立ち上がると、

「すまぬ、これより急ぎで上で調べ事があるので、もう行くが後でちゃんと送るのでここで待たれよ、くれぐれも屋上には来ぬよう、あとこの姿は猫じゃなくて犬だ間違わないよう。」

そう言って彼女はこちらも話も聞かず、階段を飛び上がっていった、その動きは素早く踊り場まで一回で飛んでを繰り返しあっという間に上に行ってしまう。

「・・・ここで待てって、いや普通に帰るよ、ってまた渡せなかった。」

しかたないと思ったカガヤは千星に興味がありながらも家路につくことにした、しかし出口から出ようとしたがドアが開かない。

「え?なんで?鍵なんてしてなかったよね?」

ふとカガヤはガラス越しに外を眺めると景色がゆがんでいる事に気付く。

(なんだろう、なんか変だ)

カガヤは本能的に何か変なことが起きていると察する、そしてその疑問を解決するには、

(屋上には来るなって言ってたな。)

カガヤは忠告は聞かず、屋上を向かう事にする、もらった腕時計みたいな装置は邪魔なのでそのまま腕にハメた。


-------


階段を上がり屋上につく、ウチの学校は屋上は解放厳禁となっているので鍵が閉められているがそこは開いていた。

ドアの向こうからは何か物音が聞こえる。

カガヤは恐る恐るドアを開き、のぞき込んでみる。

「はぁーーー!!!」

「ぎゅあぁぁ!!!」

扉の向こうには彼女と得体のしれない巨大なものが戦っていた、その怪物の容姿は蜘蛛に似ていて大きさは彼女の10倍はあるように見える。

怪物は無数の手足を使い彼女を串刺しにしようと地面に突き刺しているが、彼女は器用にそれを避けている。

「本当に美少女戦士だ」

あきらかに対格差がある為、彼女が不利に見えるが彼女の表情には不安は見えない。

彼女は蜘蛛の攻撃を綺麗さけ、蜘蛛の頭に飛び上がりケリを食らわせた。

対格差も物ともせず、彼女のケリで蜘蛛は空中も浮き上がる。

「さぁ、弱点も確認したしそろそろラストにしようか!!ハジャケンショウ!!」

彼女がそうゆうと目の前に鎌が現れる、それをつかみ棒を振ると鎖が現れ蜘蛛をがんじがらめにして動きを封じてしまう。

彼女はそのまま飛び上がり鎖のついた棒を上に掲げた。

「これで終わりだ!!」

彼女がそう叫ぶと鎌がまぶしく輝きだした、どうやらあれで蜘蛛を切り裂くようだ。

しかしそう叫んだあと彼女の動きが空中で止まってしまう。

「な、これは糸か!!」

どうやり蜘蛛はそこら中に糸を張り巡らしていたらしく、彼女は不自然な格好で空中に浮いている。

「あぁど、どうしよう。」

困っていると腕時計に手を乗せた、すると・・・。

「千星、順調なの千星。」

急に頭の中に声が聞こえてくる。

「あわわ、なに今度はなに?」

「ん?千星じゃないわね、あなた誰なの?」

「えっと、私は大塚カガヤ、ちょっと色々あって美少女戦士についてきたのですけど。」

「美少女戦士って千星の事でしょうか?私は生坂いくさか セシルと申します、今千星の現状は把握できますでしょうか?」

「えっと、千星さんは巨大な蜘蛛の化け物と戦っていて、蜘蛛を鎖でぐるぐるまきにして切りかかろうとしたら、蜘蛛も罠を貼っていたらしく、空中で糸に絡まって動けなくなってます。」

「そうなのですね、千星は逃げられそうですか?」

「いやー、ずっとモゾモゾ動いているんですけどね、蜘蛛の糸が取れないみたいです。」

「そうですか、今相手の怪物は鎖でぐるぐる巻きとおっしゃいましたけど、その鎖は光ってますか?」

「はい、綺麗に輝いてますよ。」

「彼女が破邪犬正はじゃけんしょうと叫んだと思いますけど、どれくらい時間がたってますか?」

「まだ3分くらいだと思いますけど。」

「じゃまだ大丈夫ですね、5分は持ちますからね、そこらへんにその蜘蛛の糸を切れるものはありませんか?」

そういわれてあたりを見回すがなにもない、武器らしい武器はカガヤの竹刀だけである。

「刃物はありません、武器なんて私の竹刀くらいですけど。」

「さすがにシャスマ相手に竹刀ではどうする事もできないですわね、それに一般人では何もできませんし。」

そういって少しの沈黙が流れた。

「そうだ、カガヤさんあなたこの神具が使えるなら、あなたが変身して戦えばいいんですわ。」

「はぁ何を言ってるんですか?」

「この会話ができるのはあなたが玉のついた神具を使える適正をお持ちだからですわ、それを大きくして首に巻いてください。」

「大きくってどうすれば・・・」

カガヤがそうつぶやくと、腕に巻いていた装置が大きくなり首に巻けるくらいのサイズに変わった。

「うそ、ナニコレ?」

「大きくなりましたか?でわそれを首に巻いて強くなりたいと心で願い『開権犬実かいごんけんじつ』と唱えてください。」

カガヤは訳が分からないが、迷っている隙わないと思い急いで神具を首に巻いた。

「焦ることはありませんは、落ち着いて強く願えばいいんですわ。」

(強くなりたい、あの怪物を倒す力を・・・。)

開権犬実かいごんけんじつ。」

カガヤがそうつぶやくと体がまぶしく光り出し、服が千星と同じに変わった。

「わぁ本当に変身した。」

紺色の千星とは違いカガヤは赤色の衣装に変身した。

「変身できましたか?ならばあなたにはシャスマを倒せる力が付きました、やっつけっちゃってください。」

「いやいや、姿が変わっただけで。」

そう言ってドアノブに手をかけて思いっきり開くと、


ガコッン!!


扉がそのまま壁からはがれてしまった。

「え?マジですか?」

予期せず登場となってしまったカガヤ、千星も変身したカガヤに気が付いたようで。

「あなた隠れていろといったであろうに、だが丁度良い、もうすぐ破邪犬正が終わる、シャスマを倒してくれ。」

「いやいや、倒してくれって。」

会話していると、鎖の光が消えてしまい、蜘蛛の怪物が再び動き出し、鎖を引きちぎってしまった。

「わぁやばいよ、セシルさんどうしたら?」

「あなたはまだ慣れていないから素手では危ないですから、まずは武器を出しましょう、武器よ現れよと願いながらいでよと唱えてください。」

カガヤは言われた通り、いでよと唱えた。

すると目の前に刀が現れた。

「刀が出てきたよ!」

「ではそれでシャスマを弱らせてください、大丈夫変身したあなたならできますわ。」

なにがどう出来るのかわからないが、やるしかないと、怪物に刀を向けるカガヤ。

蜘蛛もそれに気が付いたようで、カガヤに向かってくる。

先ほどの千星どうよう手足をカガヤに突き刺しにかかる、しかし不思議なことにカガヤはそれらすべてをかわし返ししていく。

「す、すごいこのカラダ!!」

普段から剣道をしているカガヤは、今の状態がいつもとは大幅に違うことがわかる、これならいける!!

「その怪物の腹に角がみえるであろう?それをその刀で切り裂いてくれ。」

千星が絡まった状態のまま声をかける、たしかに蜘蛛の腹に角が見える。

「わかった、やってみるよ。」

そう言って地面をけるカガヤ、いつもの自分とはちがう速度で相手に近づくのが分かる。

「カガヤさん切りつける前に破邪犬正はじゃけんしょうと唱えてください、そうするとその武器が光、角を切り裂けますわ。」

セシルの助言をもとに、距離をつめ、カガヤは唱える。

破邪犬正はじゃけんしょう!!」

すとる刀は光を放ちだす。

蜘蛛も恐怖したのかさらに激しく、手足をカガヤに伸ばしてくる。

しかしカガヤはそれをすべてはじき、蜘蛛に突進していく。

そして腹の角に近づいた。

「大塚流奥義”竜胆りんどう”!!!!!!!」

カガヤの家、大塚家に伝わる流派の奥義を角にカガヤは叩きつけた、すると見事に角は割れ、蜘蛛は砂のように消えていった。

「はぁ、何とかなった。」

カガヤは腰が抜けたように地面にへたり込んだ。

「かたじけない、助かりました。」

蜘蛛が消えたことにより糸から解放された千星が声をかけてきた。

「いやいや、こんなすごい体験はなかなかないよ、あたし大塚カガヤよろしく。」

「そういえば名乗ってなかった、私は上山 千星どうぞお見知りおきを。」

「ふふふ、どうやら終わったようですわね、よかった。」

頭のなかにセシルの声が聞こえてくる、こちらの会話から状況を察したようだ。

「うん、なんとかね。」

疲れたのか力なく笑うカガヤ。


ガシャン


「ん?」

「え?」

急に地面が傾く、そしてそのまま滑り出してしまう。

「な、なに今度はなんなの?」

「・・・力の下限が出来なくて、ビルを切っちゃたんだね。」

屋上は地面に真っ逆さまに堕ちて行く。

「なんでこうなるのよ!!」

カガヤは力いっぱい叫んだがどうしようもない。

「後処理は拙者がする。」

そう言って千星は屋上から飛び出した。

「いやー置いてかないでー!!」

屋上はそのまま地面に真っ逆さまに堕ちて行くが。

「ぶ!!!」

急に屋上は止まっている、よく見ると鎖が屋上を包むように引っかかっている。

「ほら、直すからあんたは降りて。」

カガヤは不格好な様子で地面に降りた。

人どうりのいない側に堕ちたようで、誰もいない。

「ふい~危なかった、けど直すってどうやって?」

そう思いながら上を見上げると、屋上は定位置に戻っていた、またこの力でなんとかなっているのだろうと、

自分の中で結論付けるカガヤ。

千星越しに空を眺めると先ほどもゆがみは見えず、いつもの景色に戻っていると感じた。


「ほ、本物!!!!」

聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

振り向かず肩越しに相手を見る。

「ついに見つけたよ!!美少女戦士さん!!独占インタビューに答えていただきますよ。」

同級生の新聞部エトラがそこにいた、携帯を顔のそばに掲げているからどうやらムービーを録画中らしい。

「あぁ何だね君は?」

カガヤは声色を無理やり変えて聞いてみた。

「私は都内の高校で新聞部をしている一学生です、どうが私のインタビューを受けてください。」

いや~まずいなぁと、カガヤは思ったがどうしていいのかもわからなかった。

「いやすまない、もうさらなければならないので、これで失礼するよ。」

「いやではせめてお名前を。」

(今日初めてなのに名前なんてあるわけないじゃん!けど彼女の性格上しつこく追っかけてくるから、名乗って気をそらせよう、けどなんて、えーい適当に)

「キュオーンデア」

「はい?」

「私たちの名前はキュオーンデアだ。」

学校でのギリシャ語を思い出していた、彼女はこれは犬だと言っていたから、犬=キュオーン、んでそれに流行っているデアをくっ付けってやった。

「ではさらばだ!!」

おってこられては困るので思いっきり駆けだした、すると予想より早く走れた、あぁそうか変身しているからすごいんだ。

そう考えてカガヤはその場から一目散に消えることにした。


-------


学校から少し離れて人目ない所で一息ついた、

「大塚さん聞える?」

急に頭の中に声が聞こえる声の主は千星のようだ。

「飛んでいく姿がみえたのだがどうかしたのか?」

「な、なんでもないよ、それよりこの格好だと家に帰れないんだけど。」

「あぁそれなら犬装解除けんそうかいじょと唱えれば元に戻るぞ。」

「そ、そうなの、犬装解除けんそうかいじょ!!」

そうカガヤが唱えると変身していた姿がいつもの学生服に戻った。

「ほんとだ、元に戻った。」

「球はそのまま預けておく、詳しいことは明日話をしようでは。」

そうして千星からの通信は途切れた。

カガヤは歩き家路につくことにした、まだ胸のドキドキが止まらない。

そしてカガヤの新しい生活が幕を開けるのであった。


第壱話 完



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