明日は屹度、晴れるから
天生 諷
The Present Day 現在
鹿島美緒
雨が降っている。激しい雨が降っている。
皆、雨から逃げるように駆け足で私の横を通り過ぎていく。
『あ~あ、またやっちゃった』
『あの子』の声が聞こえる。
「やめて――」
激しく振りつける雨が喧騒を、私の声を掻き消す。
私は、雨の中に立ち尽くしていた。
『貴方はいつだってそう。自分からバカをやる。全部自分で壊しちゃう』
「やめてよ――!」
分かっている。言われなくても分かっている。全部悪いのは自分だ。
私の雨に立つ『あの子』の言うとおりだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、慧くん……」
私は馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
つまらない悪戯で、彼の心を傷つけてしまった。
あんなにも素直で、素晴らしい心の持ち主を、傷つけてしまった。
雨よりも熱い滴が頬を伝う。
目元を拭うが、拭っても拭っても、涙は止めどなく流れ落ちてくる。
「本当に……ごめんなさい……、私を、嫌いにならないで……」
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
私は一人、土砂降りの中で立ち尽くして泣いていた。
心が壊れそうだった。全身の力が抜け、その場に座り込みそうだった。
本当に辛いのは、慧の方だというのに。
「ごめんなさい――」
誰とも成しに呟いた私の言葉は、強くなる雨音に掻き消された。
これが、夏休み最期の思い出。
人生最高の夏休みで、最低の思い出が生まれた高校二年生の夏。
これは、私が佐(さ)藤(とう)慧(けい)に恋をするまでのお話。
そして、失恋をしてからのお話。
私、鹿(か)島(しま)美(み)緒(お)は本当に、『ホントウ』に『バカ』で『愚か』だった。
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