第205話 さがしだせ(萌花)

「大変大変ですー!」

「お? どうしたんだ?」

「なにが大変なのにゃ?」


 萌花が勢いよく教室に駆け込むと、朔良と瑠衣が首を傾げる。

 いつも萌花は声を荒らげたりしないのだが、この日――この時は違った。


「職員室の前を通った時、偶然聞いちゃったんです。美久里ちゃんは今日もいつも通りに家を出たらしいんですよ」

「ってことは、少なくとも体調不良とかではない……?」


 職員室の前を通った時、B組の担任がなにやら慌てた様子で電話をしているのを見かけた。

 ただの好奇心で耳を澄ませて、その場に留まる。

 その時萌花の耳に飛んできたのは、『行方不明』という言葉だった。


「これはやばいですよ! なにか事件に巻き込まれてるのかも……!」

「わかったからとりあえず落ち着け。って、難しいよな。あたしだってどうすればいいかわからねぇ」

「け、ケーサツに通報するにゃ? 救急車呼ぶにゃ!?」


 萌花の言葉で、二人がパニックになってしまった。

 でも、それは無理もないだろう。

 友人が事件に巻き込まれているのかもしれないのだから。


 もしかしたら、事故に遭っているという可能性もある。

 色々な最悪を想定して、いてもたってもいられなくなってしまった。


「ど、どどどどうしましょう……っ!」

「あ、でも、朝に校門付近でみくにゃんのこと見かけた気がするにゃ」

「そうなのか?」


 瑠衣の口から、重要な情報が明かされた。

 すぐにそれを言えなかったのは、パニックになってて頭から抜け落ちていたのだろうが、そんなことはどうでもいい。

 本当に瑠衣が見た人物が美久里なら、まだ学校の周辺にいる可能性が高い。


「見間違いとかじゃなかったら多分そうにゃ。だれかと話してたから邪魔になると思って声はかけなかったのにゃ……」

「なるほどな」


 萌花はもう我慢できず、すぐに教室を飛び出した。

 必ず美久里を見つけないといけない。

 そんな萌花に倣って、朔良と瑠衣もあとに続いたのだった。

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