第128話 びじゅつかん(朔良)
30分ちょっとの短いバスの旅。
やってきたのは、少しこじんまりとした美術館だ。
あまり賑わっていないようだが、大勢の人がいてなかなか鑑賞できないよりはいいだろう。
「朔良ー! 待ってよー!」
「姉御〜、置いてかないでくださ〜い!」
朔良は目的地に着いてからすぐさまバスを降りたが、他の人は少し遅いようだ。
せっかちなところを直さないといけないなと、朔良は思った。
「すまんすまん。じゃ、行こうぜ〜」
「なんで朔良が指揮を執ってるんすか……?」
みんなは一緒に行動をとる。
正面入口から館内に入ると、すぐに見えるエスカレーターで展示室へ。
「僕、この美術館は何度も来たことがあるな〜。インスピレーションを得たい時とかによく立ち寄るんだよね〜」
「え!? 美術館ってそこそこの値段っすよね!?」
「まあね〜。でも、学校から割引券とか配られることあるじゃん? それ利用しててさ〜」
「へぇー、すごいにゃあ。瑠衣なんかそういうの一度も使ったことないのににゃ」
葉奈と瑠衣は興味津々そうに、紫乃の話を聞いている。
六人は順路に従い、館内を見回ってゆく。
「はわわわ……」
「こっ、これは――!」
とある絵画の前。
美久里は頬を赤らめながら慌てふためき、朔良は驚いたように目を丸くする。
「あー、言ってなかったっけ〜? ここって少しそういう系のが多いんだよ〜」
紫乃は気まずそうに話しかける。
「紫乃ちゃん、この絵、なっ、なんか、すごく恥ずかしいポーズとってるよね……?」
「美久里ちゃん、ヴィーナスに萌えちゃった〜? 僕もヴィーナス好きなんだよね〜」
「うちもこの作品めっちゃ好きっす。この左手をそえて恥ずかしい部分を隠してるとこが一番の萌え要素っすよね」
「お前らはなんの話をしてるんだ……」
朔良は呆れ気味に呟いた。
そして、朔良もその絵をじっくり見る。
確かに少々あれな気もするが、芸術作品はそういうものも多いだろう。
こういうのを偏見というのかもしれないが。
「ま、たまにはこういうのも……ん?」
ごそごそと何か音が聞こえたかと思うと、瑠衣が服を脱ぎ出した。
「えええ!? 何してんだお前!?」
「にゃ? だってさくにゃん、すごく興味津々そうにしてたから、こういうのがいいのかにゃって」
「なわけねーだろ!? というか、紫乃ちゃんたちの方がよっぽど興味持ってたじゃねーか!」
脱ぎ出した瑠衣を止めるのはなかなか大変だった。
だけど、これもまた、いつかいい思い出になるのだろうと思う。
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