第126話 よりみち(紫乃)

 いつも通り、葉奈と一緒に帰り道を歩いていた時のこと。


「うち、今日発売の漫画買いに行きたいっす。紫乃ちゃん、一緒に行こうっす!」

「え? いいけど……この辺に本屋さんあったっけ〜?」

「ふっふっふ。実はアニメイドに行こうと思ってるんす。今日は金曜だし、もしよければ都会まで行かないっすか?」

「なるほど、今日は学校早く終わったしね〜。いいよ〜」


 紫乃と葉奈は電車に乗り、アニメイドへ向かった。

 アニメイドへ到着した時はすでに、店内は人で溢れかえっていた。

 金曜日の下校時ということもあってか、アニメイドは盛況のようだ。


「あ、これ……今放送中の『こじらせ☆しすたーこんぷれっくす!』じゃないっすか。ブルーレイのCM流れてるっす」


 葉奈は店内設置の小型テレビに目を留める。


「僕もブルーレイ欲しいな〜。でもちょっと高いよね〜」

「そうっすね〜……高校生が易々と手を出せる値段ではないっすよね……」

「あ、でも葉奈ちゃんなら印税とかで稼いでそうな印象あるけど〜」


 紫乃がそう言うと、葉奈は複雑そうな顔つきになる。

 何か変なことを言ってしまっただろうか。


「そんなに稼いではいないっすよ」

「え〜? アニメ化とかもされてるしグッズもたくさん出てるのに?」

「……まあ、そこそこ稼いではいるっすけど、そんなにがっぽり稼いでるってわけではないっす」

「稼いでるんじゃん〜」


 紫乃がぐりぐりと肘を押し付けると、葉奈は声を出して笑う。

 葉奈なりの冗談のつもりらしい。

 時々冗談がわかりにくい。


「まあ、そうっすね。好きなアニメだし、思いきって買ってみるっす!」


 葉奈は魅力に負けたのか、購入することに決めたようだ。

 漫画を買うという話はどこへ消えたのか。


「んー、僕はどっちみち買えないから〜……まほなれのグッズ買っちゃおうかな〜!」


 二人は当初買う予定のなかった商品もカゴに詰め、レジに商品を持っていく。

 葉奈のカゴの中には、いつの間にか目当てだったであろう漫画も入っていた。


「12500円になります」


 二人でお金を出し合う。ポイントカードも差し出した。

 これでしばらく供給がなくても満たされるだろう。


「じゃあ、そろそろ帰るっすか?」

「え〜、せっかく都会に来たんだしなにか食べてこうよ〜」

「そういうと思ってたっす!」


 アニメグッズのたくさん詰められたレジ袋をカバンに入れて、二人は歩く。

 そんな二人のことを、かすかに輝き出した星々が見守っているような気がした。

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