第63話 あにめ(紫乃)

『――だからね、あなたには私がいる。あなたはもう、ひとりじゃない』


 テレビの画面に映る少女がそう言う。

 その少女はあざといぐらいに可愛い衣装を纏い、小さな手には魔法のステッキが握られている。


『――友達になろう!』


 少女がそう言った先には、もう一人の少女が立っていた。

 その少女は涙を流し、嬉しそうに微笑んでいる。

 その二人に、友情が芽生えた瞬間だった。


「おおお! この場面は何度見てもいいよね〜!」

「まあ、この場面は『まほなれ』イチオシエピソードと言っても過言じゃないよな」

「結衣ちゃんと緋依ちゃんの友情がたまりませんね……!」

「なんか改めてまじまじ見られると照れるっすね……」

「輝かしく熱い友情……いいにゃあ〜……」


 美久里たち一行は、紫乃の家で『魔法少女になれたなら』のアニメを観ている。

 一人で観るのも楽しいが、こういう鑑賞会というのも悪くないと思った。

 その場で感想を言い合えて、想いを共有出来るのだから。


「ところで、紫乃ちゃんはどう思ったっすか? まあ、聞くまでもないっすか」


 葉奈が苦笑しながら感想を催促する。

 それを受けた紫乃は、満面の笑みで言う。


「最高だよ〜!」

「ありがとうっす」


 実際、最高すぎて何も言えなかった。

 紫乃はいいものを観るとつい黙ってしまう性格なのだ。

 無理もないだろう。


「てかさ、紫乃ちゃんちのテレビってでかくていいよな」

「たしかににゃあ。ゲームとかする時も大画面で出来るよにゃ?」


 朔良と瑠衣が紫乃の家のテレビを褒める。

 ゲームを大画面で出来るのは魅力的だろう。

 ……と、ここで紫乃は気づく。

 もしかしたら、ゲームもこの画面でやりたいと思っているのではないか、と。


「また今度一緒にゲームやろ〜」

「お! いいねぇ! 負けねーぞ」

「やりたいものも色々あるからにゃ〜! ワクワクするにゃ!」


 二人はテンションが上がり、心の底から楽しそうに飛び上がっている。

 みんなでアニメが悪くないなら、みんなでゲームも悪くないだろう。

 紫乃はそう思い、静かに小さな笑顔を浮かべた。

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