第27話 おでかけ(紫乃)

 突然葉奈が、「一緒に出かけよう」と言ってくれた。

 何事かと思って来てみたら……


「……ここに来たかったの〜?」

「そうっす。うち、一回紫乃ちゃんとここに来てみたくて」


 紫乃の問いに、葉奈は照れくさそうに笑う。

 今二人がいる場所は、画材屋。名は『イラストーン』。

 しかし、何故唐突に誘ってくれたのだろうか。


「そうなんだぁ……でも、どうして?」

「あー、それが……紫乃ちゃんって絵描くの得意じゃないっすか。うちも絵描いてるんすけど自分じゃ何がいいかがわからなくて」


 と、葉奈は頬をかきながら答えた。

 なるほど……つまり葉奈は紫乃にアドバイスを求めているらしい。


「そっか〜……じゃあ色々教えてあげるよ〜」

「ほんとっすか!? ありがとうっす!」

「いいよいいよ〜。じゃあ早速見ていこうか」

「おうっす!」


 そして、二人は店内を物色する。

 店内はそれほど広くはないが、様々な種類の道具が売られていて、どれにしようか迷ってしまう。


「こういうの良さそうじゃない?」

「えー……でもうちそれ使えるかわからないっす……」

「大丈夫だよ〜。葉奈ちゃんも絵上手いじゃん」


 二人は和気あいあいと画材選びを楽しんでいた。

 そして、気づけば夕方になっている。

 お昼頃に合流したのだが、あっという間に時間が過ぎ去っていたのだ。


「はー……楽しかった。今度一緒に絵描いたりしようっす」

「うん! 楽しみにしてるよぉ」

「よーし、そんじゃ何か食べて帰るっすか?」

「おぉ〜。いいねぇ。どこ行く?」


 夕日がコンクリートの道を橙色に染め上げ、二人の行く先を暖かく照らしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る