第43話

「これ、デーモンの部屋?」

 突然インテリアに興味のあるアイコが訊く。

「そう。向こうから帰って来るまでは誰も使ってなかったらしいんだけど、ぼくが帰って来たことで使うことになった」

「いいなァ。わたしもこんな広い部屋が欲しい」

 アイコは胸のあたりで両手を合わせて祈るようにしていった。

「金太、これ」

 デーモンは机の上に置いてあった箱を金太の前に差し出していった。

「うおーッ、すっげえ。これって前のよりひと回り大きいんじゃないか?」

 デーモンが見せたのは、つい最近お爺ちゃんに買ってもらったばかりの最新のドローンで、ちゃんとカメラも組み込まれていた。

「だって、ジョージがぶら下がるんだから、それに対応したものじゃないと、墜落してしまうじゃないか。だからいろいろ調べて、ちょっと高かったけど買ってもらった」

 デーモンは、平然とした顔でいってのけた。

「ところで、肝心なジョージは」

 金太は部屋中を見回すようにして訊いた。

「ちゃんとベッドの下に隠してあるよ」

 いつもの白い箱をゆっくりと引っ張り出して見せた。

「うん」と、金太。

「わたし作って来たわよ」

 アイコが持って来たリュックを開けて、なかから紐のようなものを取り出した。金太に頼まれていた、ジョージをドローンから吊るすベルトと、食料などを入れるポーチを加工して拵えたリュックサックだった。

「サンキュ。デーモン、アイコが作ってくれたんだけど、ドローンに取り付けてみてくれないか」

 そういいながらデーモンに渡した。

「いいんじゃないか。あとはジョージの躰に合うかどうかだ」デーモンは箱から出したジョージにベルトを取り付けはじめた。「OKぴったりだよ。でも、やはり飛ばしてみないとわからないけど、いきなりジョージを乗せてテストするわけにはいかないからなァ……」

 そのとき、ドアがノックされ、開けてみると、お手伝いの君代さんがアップルジュースとクッキーを持って立っていた。デーモンは急いで受け取ると、部屋に入られる前にさっさと追い返した。

 デーモンは絨毯の床に車座に座った真ん中にお盆を置くと、

「これ飲んでいいよ。ドローンだけど、ぼくもまだ完璧に操縦できるわけじゃないから、ジョージなしで練習しないととても自信がない。ここでも練習はできなくはないけど、やっぱり感覚が掴めない」

 デーモンはそういってからジュースをひと口飲んだ。

「金ちゃん、ぼくも金ちゃんに頼まれたことやって来たよ」

 ネズミはクッキーに手を伸ばしながらいった。そしてクッキーを咥えながらポケットから出したのは、ベビースターラーメンの小袋とお弁当用の醤油さしだった。

「なんだよ、これ。弁当のときに醤油とかソースを入れるやつだろ?」

 金太は怪訝な顔で受け取った。

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