第29話 第3章 脱出作戦
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土曜日の午後、金太は秘密基地でデーモンを待っていた。もちろんジョージも一緒だ。
少し遅れてデーモンが顔を出した。
「ボラーァ」
挨拶を交わしたあと、デーモンは真っ先にジョージの白い箱に近づき、箱のなかを覗き込んだ。
「ハイ、ジョージ。ワズ イット ファイン?」
「ファイン」
ジョージは元気といったが、様子がいままでとはなにか違っているようだ。
「金太、昨日のメールだけど、ひょっとして……」
「そうだ、デーモンが心配しているとおりだ。昨日ネエちゃんに危なく見つかるところだった。なんとか誤魔化して無事だったんだけど、見つかるのは時間の問題だと思うから、早いこと手を打たないと取り返しのつかないことになってしまう」
金太は、座り直して真剣な顔でいった。
「わかってる。金太には本当にすまないと思ってる。でも、これ以上ぼくにはベストアイデアが見つからない」
デーモンもやはり真面目な顔になっている。
「うーん」
そういったまま金太とデーモンの間に沈黙の時間が流れた。
「なあ、デーモン、ここで相談なんだけど、もしきみさえよかったら、ロビンのメンバーに協力を頼むのはどうだろう」
金太は思い切ってひとつの案を打ち出した。
「えッ!」
デーモンは予期しなかった金太の言葉に愕きを隠せない。
「だって、きみがいったように、これ以上ジョージをかくまって置く場所がないじゃないか。きみが隠し通したいという気持はわかるけど、客観的に見て、もう無理だ」
金太は、悩み続けているデーモンを突き放すような言い方をする。
「……」
デーモンは目をつぶったままなにか考えているようだった。
「絶対にわるいようにはしないから、考えてみてくれないか。ロビンの10の掟のなかに『団員の結束をもって難事件を解決させる。』とあるように、けしてみんなは期待を裏切るようなことはしないはずだ」
金太はデーモンの肩に手を置いた。
「うん、別にメンバーを信用してないわけじゃないけど、もしジョージが見つかったとして、どういう罪になるのか、どこに連れて行かれるのかまったく想像がつかない。もし刑務所にでも入れられるようなことがあったら可哀そうじゃないか」
デーモンは本当に悩んでいた。自分自身どうやったらいいのか、誰に相談したら最善の方法を教えてもらえるのか、まったく雲を掴むようなものだった。
「だからさァ、デーモンがひとりで悩んでたってしょうがないじゃないか。みんなに協力してもらえば、オレたちが考えつかなかった名案が飛び出るかもしれないだろ?」
「うん」
デーモンは少し気持が傾いたようだ。
「心配いらないって。みんなは絶対になんとかしてくれる」
「わかった。みんなのちからを借りることにする」
金太のちから強い言葉に、デーモンはすべてを託すことに決めた。
金太はその晩、メンバーにメールを送った。緊急集合のメールだった。
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