550話 危険人物(公認)

「なー、もうちょっとウラン無いの?」

「たまたま手に入れたもんだから、そんなに在庫ないし……あんまし使うと運営に目付けられるでしょ」

「地下に穴ぼこ作りまくってるあんた達が言う事かな」

「いやいや、うちらは実害無いし、アイテム溜め込んで楽しんでるだけなんで!」

「私だってシステム上問題ない奴なんだからあれこれ言われる奴じゃねーし」


 ころころと最近のブーム、ロリポップを転がしながら目の前にいるつるはしを持った普通の青年と話す。何から何まで普通の青年なわけだけど、私が最近知り合ったギャザラーの一人。どこぞのピクセルサンドボックスのゲームのように1個の拠点を作って掘りまくり……って事もせず、クランはあるけどそれぞれの連絡用程度の存在で、しっかりした拠点は自分自身らしい。


「まあ、ありますけどね?」

「幾らだ?」

「末端価格で1個20万ならいいですよ」

「なんで数日前の10倍になってんだよ」


 何だったら使い道もない鉱石扱いでかなり安かったってのに、此処まで高騰する意味が分からん。大体だな、スズと同じくらいにはざっくざく取れるってのに、数が少ないって訳でもなかろうに。


「1個の鉱石を作るのに10個の欠片を集めるのが必要になって、そのうえでドロップ率も落ちたから仕方ないんだな、これが」

「……まー、それなら10倍もわかるけど」


 いくら地形を変化させるほどの高威力アイテムを作れる材料だからって急激にドロップ渋くして貴重品にするもんかね。何だったら魔法やらスキルの方が圧倒的に派手でやばいもんがあるってのに、そっちの規制はない。発動するのに条件があるのや効率が悪いようにバランスは取っているけど、それにしたってサイレント修正早ない?


「どっかの誰かがやばいもん作ったからって噂。眉唾もんだけど」

「核戦争でもおっ始めるのかしらね」

「ファンタジーで核って」

「核爆発、対消滅なんか魔法でもあるんだし普通じゃない?」


 そんな会話をしながらウラン10個、さくっと200万の出費って恐ろしい。なんだかんだで銃弾やら火薬の横流し……って言い方が悪いわ。あんまり流通してない高品質なやつや、弾頭をちょろっと変えたの流してちょいちょい稼いでいるとはいえ、インフレが激しいとちょっと追いつけない。それだけゲーム内資金が稼ぎやすいって裏返し何だろうけど、どこからそんなに金が出るんだってよくある話。


「守銭奴ばっかだなあ、このゲーム」

「消耗品やシステムの必須資金が高めだからじゃないですか?」

「確かに銃弾1発3kだし」


 リアルじゃもっと安価だったはず、平均で1発50円くらいで一番高いので5000円、それも.500ってサイズの奴だからまだこのゲームじゃ存在してないサイズの武器じゃないかな。私が使ってた大型拳銃系もそこまで大きいわけでもないし。もっと言うなら銃弾ってアイテムであってサイズ不問だからか?


「過度な高騰はインフレからの市場破壊だからなあ……毎度あり」

「2Mも持って行ったやつが言うんじゃねえ」


 手をぷらぷらと振ってから足元に潜っていくギャザラーのやつを見て少しばかり呆れながら見送る。いくら街中だからってそんなことできるん?怖いわー、このゲーム、何ができるか全部を把握してるわけじゃないから未だに初見のことや発見があるって。


「それにしても急な高騰はやっぱ、前のアレか」


 インベントリに入っているウランを見ながらため息と共に思考する。いくら魔法やらスキルで派手に吹っ飛ばせるとはいえ、アイテムとしてすぐに発動出来て持っていれば誰でも、低レベルでも高レベルでもえぐい火力の爆発を支えるってのを考えたら規制品になるのも……若干は納得する。


「だとしても対策が早すぎるんだよなあ……運営に目つけられてるんかな」


 なんとなく上を向いて見るけど、返事はあるわけもない。とはいえ、何万人もいるプレイヤーの一人を狙って常に監視なり動向を見るって現実的じゃないわな。こういうのはデータを見て不正しているかどうかくらいで判別してあとはほったらかしが常よ。マップの反対側で何をやってるかすら、今でもわからないから、私以外で核を使ったやつもいるかもしれんし?


「自意識過剰ってのも悪いところよねえ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る