549話 変態はそこら中にいる

「爆発範囲は派手だけど、威力はちょーっと不満ねえ」

「あんなもんばっか作ってるんですか!」

「環境破壊はんたーい」


 チェルの大盾の裏から爆破した地点を見ながらも横でやんややんやと言われる。でもあの状態から少しでも事態を好転させるには仕方がない犠牲だった。まあ、こっちは誰も死んでないから、ゾンビ共の犠牲になるんだけどさ。


「雑魚は大体一瞬で吹っ飛んだみたいだけど、流石のボスは健在だなあ」

「核って割には弱くないですか……?」

「そうなんだよなあ、閃光と爆発威力は高いんだけど、これが?って感じ」


 どこぞのコーラみたいな名前の武器みたいにもっとでかくて射出できるようにした方がいいのかってのも考えたけど、あれもそこまで影響があるかって言われると微妙な所だし、そもそももっとでかい核を使っての話だからなあ。


「放射線の汚染があるとかじゃないねぇ」

「処理的には超強い爆弾、ってカテゴリなんだろ」


 巻き込まれた雑魚ゾンビ共が生皮剥がれて、筋繊維と骨だけのひょろくて素早い奴に変わるって事もないし、筋骨隆々の緑色の生物になるわけでもなく、ただただ吹っ飛んで消し飛んだのでやっぱり強力なグレネードって域を出ない。


「それは良いとして大ゾンビ……しぶといですね」

「大ダメージってので動いてないけど」

「んじゃ、さくっと倒しちゃおうかなぁー」


 そういうとマイカの奴が私とチェルの頭上を越えて、動いていない大ゾンビに向かって駆け出し、蒼い稲妻を発しながら高速接近からの飛び蹴り。背中から煙の吹いている大ゾンビの顎にヒットするとぐらりと大きく後ろに倒れていき、大きい音を立てて爆発で緩んだ地面に陥没する。蹴りをいれたマイカと言えば、蹴った反動で体勢を空中で整えると、落下してさらに追撃。それはもうただのストンピングなんよ。


「って言うか、何であんなもん作ったんですか!」

「最初は特殊弾頭を作ろうって話で、鍛冶クランの連中、採取メインのギャザラー系の連中に当たって大量の鉱石を入手した所からの話なんだよねえ」


 マイカが大ゾンビに止めを刺している間、チェルの武装を元に戻し、いつものようにロリポップを加えながらどういう経過を説明し始める。


「ギャザラー連中の世界ってどういうもんか知らなかったんだけど、あいつらそこら中に穴開けて採掘しまくってんだと」

「地底人みたいですね」

「高レベル帯でも地底に潜ればモンスターは関係ないから、ひたすら鉱石を集め捲って悦ってる奴が多いとか」

「もはや変態の域ですね」


 それなーと返事をしていたら向こうでポリゴン状になって消えていく大ゾンビ。あんだけストンピングされて顔面踏まれたら本望だろうよ。


「とにかくまあ、そいつらの蓄えている鉱石の中にウランがあったから、それを使って劣化ウラン弾を作ろうって盛り上がったんだよ」


 これは事実。なんだったらテンション上がりまくってあれこれ調べ捲って作っていたのは記憶に新しい。で、劣化ウラン弾ってウラン精製をした後に出る廃棄物の再利用になるわけで、だったら精製したウランで何か作ろうかって話になり、そこから更に調べての核爆弾開発。


「じりじり音が鳴って、汚染されまくって腕が増えたり、なぜか回復するって効果もないし、ゲームとして汚染はなさそうだから、これからもうちょっと使ってみたくはあるね」

「どうするんですか、めちゃめちゃ起動手順多かったですけど」

「ものっそい構造を簡単に言えば、二つのウランをぶつけたらエネルギーが発生するんだけど……例えば弾頭を2重構造にして、当たった瞬間に核反応が起こるようなギミックを作れれば、連射も可能、かな」

「バカな発想ですねえ……」

「こういうゲームであれこれやるのって現実じゃできないような事をやるのが醍醐味でしょ」


 ああいうの、と言うようにマイカの方を指さしてやる。あいつこそこんなに高速移動したり、空中で謎の挙動でアクロバットしたりと、結構やり放題している部類になる。


「また対人なんかあったら相手したくないですね……」

「あっても暫くは良いよ、私は私で伝説的なプレイヤーになったしな」


 にんまりとギザ歯を見せて笑いながら、優勝トロフィーを破壊してクランも解体したことを思い出す。あれは最高に他のプレイヤーをバカにしている気もするが、勝利者の特権よな。


「さて、久々のパーティ戦も堪能したし、地上に戻るか……マイカ!行くぞ!」

「んー、はぁーい」

「今度誘う時はもうちょっと良い所でお願いしますよ」

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