483話 集結
「思った以上にやるな」
赤髪ベースの方が剣を振るい、青髪ベースの方が魔法を放つ。
基本はこれなのだが、とにかく連携が凄い。はっきり言えば、私の場合だったら普通に「どけ!」「邪魔だ!」くらい言うレベルの射線の塞ぎようをしている前衛が、後ろから飛んでくる魔法を自分を壁としてこっちに当てようとしてくる。なので下手に前とかち合っていると、いきなり眼前に魔法が飛んできて一撃貰う。こういう戦法を取ってくる。
FFでダメージは無いとはいえ、判定自体は残っているので体勢が崩れたり攻撃の手がぶれたりするので味方の攻撃を防ぐのは結構危ないのが常識。ただ、目の前にいる奴はさっきも言った通り、本当に綺麗に連携を取り、阿吽の呼吸でこっちを肉薄してくる。
「もう1人、こっちも呼んでおけば良かった」
剣の攻撃をハンドガンで受け蹴り1つ。体制を崩して少し後ろに下がった所を雑な狙いを付けた状態でトリガーを絞る。瞬間に、風魔法が飛んでくる。この風魔法、中々にバリエーションがあるおかげで攻めも守りも強い。かまいたちのような切り裂き系、強風による行動制限、竜巻を使った銃弾の軌道変更。他の魔法に比べて持続する設置型……ああ、厄介、特に軌道ずらし。魔法の強さにもよるんだろうけど、小さく強く射線上に放たれると一気にずらされる。
「魔法の特性としっかりした連携、そこらの有象無象よりよっぽど強い」
連続射撃で前衛の赤髪に追撃を掛けるが、細かく放つ風魔法によって軌道を反らされるので、舌打ち1ついれてから尻尾を使ってバックステップで距離を取って一息。すぐさま新しいマガジンを装填しなおしてコンパクトに構えてどうするかを考える。
「もうこうなったらガンカタ系のスキル、ポンコツピンクに教えてもらった方がいいな」
遠近両対応出来る方が今後の戦い幅が増えるし、こういう事が多いならさっさと聞いておこう。と、思っても先にこいつらを倒さないといけないし、そこからイベント用の立ち回りの仕方も考えて……あれ、私、これ以上やったらいっぱいいっぱいじゃね?
「あー、余裕ねえ……って言うかバイザー結構邪魔だな」
ぶつくさと言いながら色々と情報が溢れてるバイザーを眺めてもう一度ため息一つ。こういう画面に色々な情報が出てくるのは好きだけど、集中する時にはすっきりさせておいた方が良いな。
そんな事をうっすらと考えていたら、前衛の赤髪が剣を振るってくるのでさっきと同じように銃で受けようとした瞬間、後ろの風魔法で振りの速度が加速する。成程、そういう使い方もあるのか。とにかく慌てて体を後ろに反らせるが、メットの顎下部分を斜め上に斬られると共に頭が上がる。
視界が明滅する。
光がちかちかと入り、割れたバイザーも光を反射する。
油断したわけじゃないが、相手が上手い。連携もしっかりとるし、決め打ちの攻撃はしっかりと振ってくる。単純に私と相手の相性が悪いのもある。
が、それを理由にして、相性が悪いって理由に逃げるのは私の柄じゃないし、それはただの言い訳だ。
軽く打ちあげられ後ろに倒れる瞬間に、尻尾と使い踏ん張る。
「うっわ、ぐらつく……」
ダメージは結構貰ってるわりに相手に反撃出来てないのが悪いな。馬鹿みたいに近接戦闘で射撃して相手の土俵で殴り合うって頭悪いわ。
「凄いね、倒れないよ」
「そうね、倒れないわ」
赤髪青髪がダメージを堪えた私を見て驚愕している。多分だけど、姉妹の必殺技だったんだろう。どうだ、堪えてやったぞ、クソが。って言うか視界がまだぐらつく、こういう脳震盪みたいな状態異常は前にも食らったっけか。
とりあえず攻めてこないので一息入れて状態異常を治まるのを待ちつつ、スキンを解除していつものスーツ姿に戻したうえで煙草を出して口に咥える。
「スキンもいいけど、バイザー割れるのは頂けないわな」
指をぱちりと鳴らして火を付け、紫煙を胸いっぱいに吸い込んだ上で大きくぶはっと吐き出す。
「全く……どいつもこいつも相性が悪いんだよ」
持っていたハンドガンとプラスしてもう1丁ハンドガンを出してから脇のホルスターに入れ、さらに銃剣付のアサルトライフルを出して構える。
「やられっぱなしは性に合わんのでな」
銃剣ARを構え、一気に駆け出す。
不意撃ち気味の攻撃に、少し相手が反応が遅れ、剣で銃剣を受けるので、銃剣を捻って銃口を相手に向けたら発砲。何だかんだで私ってSTRもそこそこあるから結構力押し出来るわ。兎に角こちらから押していき、肉薄。後ろの魔法使いに関してはハンドガンを銃操作で飛ばして牽制。現状複数の相手に対して出来るギリギリの戦い方。
銃操作は常にじゃなく、オンオフを切り替え、魔法を撃たれたらヤバい時に、前衛を銃剣で抑えつけ、その上で後衛に銃操作でのハンドガン射撃。撃ち、打ち合い、敢えて前に出て強くかち合った後に、押しのけられる。そして距離を取ったら所で一気に駆け出され、風魔法を駆使した必殺技を繰り出してくる。
「これで、終わり」
加速した刃先を銃剣、ではなくARの銃身で斜めに受けて滑らせる。そして勢いよく振り切った所、がら空きの脇腹に銃操作でハンドガンでの射撃。前衛の赤髪がぐらついたのでARを手放し、脇をすり抜けてから、手元にハンドガンを戻し、2丁拳銃で青髪に射撃しながら前進。流石に連続射撃で前に出れば同じ後衛には負けはしない。青髪が風魔法を使って防ぎながらも結果的に距離は詰まり、銃口を青髪の額に当てる。
「はいはい、もういいっすー」
銃口を向けて膠着した所でヤスが割って入る。実力は見れたし、十分って事だな。
さっきの爺とやり合った時の様にアリスが私を捕まえて引き剥がされる。
「どうっすか、これが自分の考えうる強いプレイヤーっす」
いい仕事するのは分かってんだよ。
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