452話 決勝戦

『今回のイベントもいよいよ大詰め!Aリーグの方、観客の皆様お待たせいたしました、第32回チームトーナメント、決勝戦になります!』

『文字通り長らくお待たせしてしまいましたが、これで最後ですね』

『それではチーム紹介といきましょう!此処までレッドとブルーとしか言ってませんでしたが、AチームBチームと呼びましょう!』

『それはどういう理由で』

『それぞれリーグの一番強いチーム、と言う事ですね!』


 こっちの実況解説は結構愉快だな。

 試合開始までの間を盛り上げながらやたらとテンション高く話している。私らが戦っている最中もこんな風に実況していたっぽいな。流石に戦闘中に相手の状況が筒抜けになったら問題だから聞こえないようにしているのはちょっと考えりゃ分かるけどね。


「それにしたってよくもまあ此処まで来れたわ」

「自信無かったのか」

「正直地上だったら勝ち目は無かったか。柳生クラスのがごろごろしてるのも分かってるし」


 ほんと、宇宙マップって条件じゃなかったらあっと言う間に負けてただろうな。


「それで、作戦は」

「相手がどう出ようが前があんた、私は後ろ、上下と背面を取られない様に常に正面に相手を捉える」

「簡単だ」

「頭使わなくていいでしょ」


 確かに、と返事を貰い満足そうにしてから眼前に広がる黒い空間を眺める。

 マップはどうやらオーソドックスだと思っているデブリ帯にプラスして廃船がちらほらと漂っている所でやり合う形だ。結局コロニー内で戦うのはバトロワの時だけだった。もうちょっと楽しみたかったのに。


『さあ、それではAチームの紹介です!

 まさに一撃必殺!その一太刀は全てを切り裂き、その一太刀で全てをねじ伏せる!柳生選手!』


「ひゅー、かっこいいー」

「やめんか」


『そして次の紹介です!

 まさかの初心者プレイヤー!強豪プレイヤーにも引けを取らない強さで此処まで勝ち上がってきた、謎の初心者!アカメ選手!』


「謎の初心者らしいぞ」

「うっせーよ」


 そのままBチームの方の紹介もされるのでそれを聞きながらどういう相手かを考える。と言っても前2機後2機の4機編成、聞いている限りだと前1中1後2って感じの立ち回りをする編成だと思う。後はもう、とにかくやってみるしかわからん。


「さてと……これで最後だ、気張って行こう」

「寂しくなる」

「はいはい」


 チームの紹介も終わり、煽りも終わるとでかでかと宇宙にカウントが表示され、数字が減っていく。


『さあさあ、カウントが終われば試合開始です!悔いの無いよう両チームは頑張ってください!』


「此処まで来たら優勝よ」

「ああ、優勝だ」


 そんな事を言っているとカウントが0になり、大きく試合開始の合図が響き渡る。それと同時に柳生が加速、その後ろにぴったりとくっついて武器を構えて索敵をしつつ付いて行く。

 今回の機体組み合わせと武器。機体の方は軽量機、足の方を膝下からソードにしているのだけが特徴。武器周りはかなり変更して、ヒートホークを抜いてハンドガトリング2門、ハンドガン2丁、腰部キャノン2門、お守りフックショットが1個、サブアームは2本装備、近接戦は足のソードのみにした尖った構成。T2Wじゃ思いっきり重量過多。

 

「2:4だから敵の位置は常に見れるようにしないとねー……」

「数が減るまで火力を出せるのはお主に任せるぞ」

「うーい、まかせい」









「此処まで来るだけあって強敵だ」

「分かっている!」


 実弾とビームの二重射撃を柳生が刀で弾き飛ばしている後ろでサブアームを使いハンドガトリング、普通にハンドガン2丁抜いて掃射、盾役と後ろで射撃している相手に対してバリバリと撃ちまくりながら後退。

 開幕接敵してすぐに陣形を組んで不意打ちをかまして結構なダメージを与えてのだが、しっかり立て直して反撃の射撃と、近接戦でしっかり距離を取られてからこっちが圧倒的に不利になっている。


 こっちの立ち回りと言うか、立ち位置を見てしっかり連携を取って無理な突撃もしてこないし、幾ら前後上下に振ってもしっかりと追従して向こうもこっちもしっかり前面に捉えた状態での撃ち合いになっている。ついでに言えば下手に柳生が突っ込んで行って殴り合いになると集中砲火を食らいかねない。


「それで、どうするんだ!?」

「今考えてんだよ!」


 また飛んでくる射撃を受けて貰いながらも反撃射撃を繰り出しつつ、デブリ帯を抜けていく。こうなってくると障害物が無くなるからさっきよりも射撃が激化する。って言うか、マジでどうする?1機さえ落とせればまだ勝負は出来そうだけど、1:2を2組作った所で前1後1の組み合わせで近接か射撃しか出来ない単体で戦うのは無理だ。そんな事をあれこれ考えていると撃ち続けていたハンドガトリングとサブアームが一つずつやられるので火力が落ちる。

 

「確かもう少し後方に廃船があったろ、あそこまで誘導して炉に火を付けて爆破に巻き込んで反撃は、どうよ」

「某はもう、お主の作戦に乗るぞ」

「信用されてるわ」


 移動しながらの射撃で、ようやく廃船とデブリが転がっている宙域に抜け、さっきと同じような射撃をしながら柳生に合図と言うか、バック走で向かう方向を指示し、良い感じの距離を保ちながら廃船の近くまで誘導。


「勝負を掛けるぞ」

「散るなら華々しく、か」

「縁起の悪い事言うんじゃー無い」


 射撃を受けつつ、廃船の上部に着地すると共に、真っすぐ後ろに下がりながらサブアームに付けたハンドガトリングで廃船を撃ち抜きながら片足のソードも突き刺して装甲を引き裂いて行く。が、爆発はするものの、そこまで規模は大きくなく不発。


「クソ、外れ引いた!」

「原型が残っているのはあと2隻だぞ!」

「分かってるって!」


 小規模の爆発から出てくる多少ダメージを受けた相手チームを見ながら次の手を考える。考えると言っても残っている廃船にも同じように攻撃を加えて爆発を促して、隙を窺う。

 そうして相変わらずの射撃戦を繰り広げながら2隻目も同じようにダメージを与え、上手い事相手チームが近くを通った時に大きく爆発。さっきの小規模爆発で油断していたっぽい。


 爆発に巻き込まれ視界が塞がったのを好機と見て後退から一気に転身。レーダーと最終位置にいたのに目がけて柳生が突っ込むので、それに合わせて射撃をしながらすれ違いでの攻撃を狙う。爆炎の中、金属音を響かせて一気にすれ違うと、すぐに振り向いて私だけ後方射撃で追撃防止をしながら体勢を立て直す。


「手応えは?」

「腕1本だけだ!」


 収まり始めた爆炎からまた射撃が飛んでくるので柳生が盾に、まだこっちの姿を正確に捉えている訳でもないのはお互い様なので、腰部キャノンを構えて発射。真っすぐ飛ぶ高火力兵器って素敵。ともかく当たったらしく炸裂音が響くので距離を取りながら更に連射し追撃していく。が、それにしたって手応えがなさすぎる。しかもしっかりこっちのマズルフラッシュを見て反撃射撃をしてくるし、このゲームで一番の強敵じゃねえか。


「しかもその腕1本は中衛機だからそこまで戦力差が出ないって言うね」

「頑張ったのだがな」

「まー、2機くらいは持っていきたいわな」


 あの爆炎の最中、しっかり前2枚にして防御体勢を取って不意打ちに対処していたのを考えると、腕1本持って行けただけでも中々に良かったが……此処までくさいわ。


「まだ勝てると思う?」

「諦めてはおらんぞ」


 後退しながらの射撃し合い、距離を図り、宇宙空間を飛び回り続ける。

 何だかんだで盾役やってる柳生もギリギリと言うか、うずうずはしている感じもある。こうなったら好き勝手やって華々しく散ってやるか。


「どうにか前2機を1人で仕留めれない?」

「無茶を言う」

「代わりに後2機を私がやるから」

「つられてくれるといいが……それじゃダメだな」

「代案は?」

「うむ、作戦はだな……」

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