446話 引き際

 T2Wとのクロカバの違いは、自分の組んだ物が上手く機能するか、そしてどこまで自分の思った通りに機体を飛ばせるかどうかの操縦テクニック。あ、でもストーリー進行度で自分の事弄れるんだっけか?

 そんな事よりも、どちらかと言えば自力で戦わないといけないのが大きく、T2Wのようなスキルでどうこうするって物じゃないのがでかい。

 

 何でいきなりこんな事を言い出したかと言うと、ちょっかいを掛けながら射撃戦をしているのだが、こっちの被弾率が高く、単純に射撃の命中率が違い過ぎる。今の所三つ巴で射撃をしながらいつ飛び出そうかと全員が狙っている状況で、偏差含めての射撃精度は今までやってきたプレイヤーの方が上手い。


「この辺りが経験の差か……!」


 ばちばちとビームシールドで攻撃を受けながらその辺りをひしひしと感じる。いくら宇宙での姿勢制御が下手くそだからって、射撃の腕まで悪くなるかって言われると別の話だし。そもそも私の回避行動が温いってのも問題か。とりあえず柳生の奴は私と射撃戦をしている片腕の奴を狙い、ブーストを吹かさない様にして回り込んでいるので、あいつの準備が整うまではどうにか耐えなきゃならん。


「我ながら損な立ち回りをしている」


 くつくつと笑いながら射撃を続ける。

 最初に追ってきた奴、その追ってきた奴をさらに追ってきた奴の三つ巴で射撃戦をしているが、高低差もあるし、私がそこまで射撃命中がよろしくないのも地味にばれているので3機いる方から、集中砲火を貰う時もある。うーぬ、やっぱ機体の操縦と言うか、立ち回りの仕方は慣れた相手だと見劣りする。


「さて、どうするか」


 ARのリロードを挟むのに合わせて、コロニー内壁に建造されている建物に隠れて一息入れる。ただ、この隠れるのも上から見れば丸わかりなので、相変わらずのビーム射撃であっという間に融解。すぐにスライド移動をしつつ、リロードを済ませたARで反撃しながら次の障害物に向かう。コロニーが回ってるせいもあって、障害物が関係ないポイントもあるから気を付けないと。


 そんな事を考えていれば、爆発音のような物が響き、かなり横の方で瓦礫が大きく宙を舞ったと思うと、3機の内1機が爆発が起きる。そして、爆発音が響いた所の真反対のほうでまた瓦礫が舞う。


『ふーむ……地上と違い、ブレーキを考えないといけないのは、課題である』

『いい腕してるよ』


 着地を失敗して、建物を吹っ飛ばしまくっているのは課題だけど、あの機動力と攻撃力は目を見張る。地上と違って加速すればするほど速く、速ければ速いほど火力は上がる。が、それに比例して機体制御の難度が上がりまくるので、ああやって着地に失敗するって事か。


『ちなみに良い話と悪い話があるんだけど、どっちから聞きたい?』

『では良い話から』

『最初に1機落としたチーム、そいつを今倒せた』


 そう言うと共にグレネードが炸裂し、1機吹っ飛んでいって沈黙。

 無重力ってのは良いもんだな、地上だったら投射系グレネードは山なりの軌道をするから上下左右の偏差を考えなきゃならんけど、真っすぐ飛んでいくから当てやすすぎる。


『で、悪いニュースなんだけど、私も結構やられたってのと火力が落ちたって所かしらね』


 手元でバチバチと火花を散らしているARを手放し、ブーストを掛けて大きく移動をしながら手持ちの武器を考えてどう戦うかを考える。後は何が問題かって言われると、残り何人倒せば良いのかよくわからないのがでかい。あと何人いるって結構大事な情報なんだけど、その辺隠してるのは意図しているのか。


『しかし2:1:2だ、このまま攻めるのは?』

『やるんだったら先に2機の方を潰して2:1:1にするのが先決だけど、1が逃げるのが鉄板かな』

『なら、この辺りで手を引くか』

『そゆこと』


 ARとグレネードが使えなくなったのが痛いが、下手に此処で撃ち合いをしてもしょうがないし、こっちもこっちで逃げの一手だな。バトロワ的に言えば、残った1機も落としておきたい所だけど、落としたのがリスポーンするわけでもないし、ほったらかしにしても戦力の増強は無理ってのを考えれば良い所か。


『問題があるとしたら、がっつり響かせていた戦闘音を聞きつけてコロニー外で待機してる、漁夫狙いで突っ込んでくるとか……』


 何て事を言っていれば、離れた所のコロニー壁が一部吹っ飛んで3機侵入、やっぱり来るわな。このまま素直に行くとは思っていなかったよ。とりあえず柳生に合流するように指示し、吹っ飛ばされたコロニーの場所から反対側の方に進みつつ、腕部ガトリングとグレネードで細かい射撃で牽制。するけど、あんまり強くないわ、これ。単純に距離減衰が掛かってるっぽい。ちまちま当たってるから鬱陶しさはあるみたいだけど。


『飛ぶ斬撃みたいな事出来りゃいいのに』

『そんなファンタジーな事は出来ん』


 SFも十分ファンタジーな感じがあるんだが?


『流石に残ったチームも現状で戦うのはヤバいと感じてるのか、逃げて始めてるな』

『3チームで戦いすぎたんだよ、幾ら射撃戦メインにしてたとは言え、結構被弾し合ってたし』

『うーぬ、コロニー内の方が戦いやすかったのだが……』

『負けるより良いだろ』


 飛んでくる射撃をシールド、ブレードで受けつつ、腕部グレネードでコロニーの内壁を攻撃して脱出路を……作れない。所詮はサブ武器って事だな、火力が足りない。


『これ斬れない?』

『流石に厚すぎる、別の穴から抜けよう』

『その方が良いな』


 先抜けされると待ち伏せされるかもしれないし、新しく参戦してきた3機の奴が長距離砲で攻撃を開始しているから逃げ道が決められてるコロニー内だと脅威が過ぎる。

 

『T2Wの方だったらスキルでどうにかこうにかできるんだろうけどなあ……』

『無いものねだりは良くないと思うが?』

『わあってるっての』


 発射されたごん太ビームが頭上を掠め、後方の一部を爆発させる。

 大艦巨砲主義ってああいう雑な感じで戦えるからいいよなあ。


『ちなみにHPどれくらい残ってる?』

『あと4分の3はあるが』

『こっちは半分ってとこだし、もちっと慎重に動こうか』

『で、あるな』


 ここに来て負けるのがいつものパターンだし、こっちでは負けたくないね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る