445話 2:2:3
無重力とは言え、建物が点在しデブリも舞っていて、ちょっと外壁に近づけば吸いだされるから姿勢制御もままならない。そんなコロニー内部で戦うのはいささか危険と言うか、軽率だったような気がする。でも、やっちまったことはしょーがないから、このままやるしかないわな。
『何もない所よりは上下が分かるから戦いやすいんじゃない?』
『そうだが、やはり姿勢制御がな』
『練習相手2機も釣ったんだから、ここいらで慣れてもらわんと』
軽口を叩きながらも後ろをちらちらと見れば、2機追従してきたうえ、更に奥から3機付いて来ているっぽい。ふむ、そうなるとさっきの戦闘は3:3で戦っている所に介入して2:2:3になったから、人数不利も含めてこっちに追撃しつつ逃げ、かな?普通のFPSやTPSと違って高速移動をしながら射撃戦が出来るって所が違う所……いや、比べる物が違うな、戦闘機だったりロボゲーは撃ち合いしながら高速機動する事が出来るし、後ろにさえ気を付ければ戦えるか。
『このままマップ飛ばしまくって全員で殴り合いってのも楽しいな』
『それはそれで厳しい気がするが……』
『折角宇宙まで来たんだ、楽しまないと損だろ』
『楽しむのは良いが、勝ちたいのとは違うのではないのか?』
『楽しみながら勝ったらダメか?』
そう言いながら飛んでくる射撃攻撃をちゅんちゅんと受けつつ回避運動をしながらどうするかを考える。コロニー内部は地上と変わらないような配置と言うか建物が並んでいて、がっつりと照明が焚かれているから宇宙用に色を変えた私がまあ目立つ。中々にグラフィックと言うか細かいところも拘ってるな、このゲーム……うん?
『今までは地上、空中、海中戦がメインだったわけでしょ』
『うむ、間違いない』
『そもそもこのゲームってさ、舞台が実は宇宙で、それぞれコロニー内で戦っていただけだったりして』
『……急に設定の突っ込みを入れるのはどうなのか』
『そういうのを考えるのも楽しいじゃん』
余計な事をあれこれ考えている方が、どうするか思いつくから、私としてはこれで良いんだけど。さて、どう後ろの連中を撒くか、それとも戦うか。
『それで戦う?それともさっきみたいに一撃狙う?』
『2:2ならまだしも、追加も来てしまったから……一撃狙いで』
『いーわね、そのバトルジャンキーっぷり』
コロニー内壁近くに低空飛行し始めると、上からそこまで厚くない弾幕が振ってくるので、回避運動をしながらグレネードを装填。
『目くらましを掛けたら、突っ切ってブレーキ、上の2機が通り過ぎたら後ろに3機に強襲』
『御意』
返事を聞くなりmしゅぽんと音を立ててグレネードを発射し、手頃なビルに直撃爆発。爆炎と瓦礫が放射状に巻きあがる中を突っ切る。
『こういう変則的な事してる時、超楽しい』
そしてそれが上手い事ハマったらなおの事良し。
爆炎の先まで追従していた2機が通り過ぎて、私達の姿が見えないのに驚いたのか、速度が落ちたのを確認。勿論さらに後ろの3機がそれを見逃すわけもなく、前1後2の編成で追撃していた2機に攻勢をかける。ここのポイントとして、後ろにいた3機は私達を狙っているわけではなく、私達を追ってきた2機を狙っているというのがポイント。少しの時間でもこっちを見逃して、索敵行動に入れば、追撃していた方から追撃される方になる。
『狙いは後ろの3機、一気に突っ込んで1機は食っておきたいな』
『ふむ、足の踏み場があるというのはありがたい』
元々戦っていた連中が改めて戦い直した所で二人で飛び出して3機側の方に。
強襲の仕方はさっきと変わらないのでARから追撃で柳生の一閃を狙うのだが、今回ばかりは一度見せているというのと、しっかり前後衛を組んでいるというのもあって3機中1機のみに攻撃、その上で片腕しか吹っ飛ばせなかった。
『一度見せた技を躱すとはやるねえ』
『ううむ、やはり地上とは勝手が違う』
『またグレネードで隠れる……のもタネがわかってるからなあ』
2:2:2の三つ巴ならまだいけそうだが、これはもうちょっと攻め方を変えた方がいいな。いくら手負いだからって3機って時点で強い。
『離脱するか、戦うか、決めて良いぞ』
『ふーむ、では戦うのはどうだろうか』
『被弾しない様にな』
ぐるりと機体を一回転させて先程爆風で隠れていたところから見れば天井に立っているようにコロニーの内壁に着地し、すぐに移動。3機固まっているチームの内、1機がこっちへの牽制射撃。もう2機が、追撃に来ていた2機を相手にしている。疑似的にとは言え、2:1になっているのは良い事だ。
『こっちに射撃しているあいつ、任せて貰っていいか』
『おー、やってみやってみ』
スライド移動をしながら2チームに対して射撃を与えながら柳生と別れて行動。
やっぱバトロワはこうじゃないとなあ。
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