428話 ラストダンジョン
「報告は」
「特にありません」
「よろしい、頼んでおいたのは」
「此方に」
自宅の机にずらっと並んでいる各種グレネード、試作として作っておいた特殊弾の正規品が入ったマガジン、対集団用の改良された手回しガトリングが2丁、肩と腰に回す様に一体型にしたガンベルト、新しいブーツ、手袋、そして新調したスーツをフィーラが持って待機している。
「管理は任せるぞ」
「はい、お任せを」
用意してもらったアイテムをインベントリに放り込み、新調したスーツや手袋、ブーツに履き替えておく。防具類は菖蒲……じゃなくて、薫の奴に話を通して用意してもらい、フィーラに渡して貰った。
それにしたって優秀だわ、メイドロボ。設定しておけば何でもかんでもある程度はやってくれるし、畑の管理やらマイハウスの管理までなんでもござれ、アイテムの生産すらしてくれる……のだが、まあしっかりバランス考えられてるわ。自分のスキルレベル以上の物は作れないしやれない、覚えているレシピしか委託出来ないと、地味な制限が多い。が、値段以上に働いてくれるので良し。
装備を組み直し、スーツに袖を通した後にフィーラに見せて、襟を正されネクタイを締めて貰う。そうしてビシっと決めてから、しっかり買い足した細巻き葉巻を咥えて火を付けて一服。
「さて……一発かましに行くか」
「お気をつけて」
そしてイベント最終日。
って言うかそもそも日付変わった時にログアウトしたから既に最終日ってのはあるけどそれは良い。ログイン前にしっかり睡眠を取って、鍛冶も済ませて、あれこれ終わらせた。勿論仕事の電話はよっぽど緊急……でも一切取る気はないので留守電安定。リアルタイムで現時刻10時、12時回ると襲撃再開で、18時に襲撃終了、19時イベント結果発表と、結構かつかつなスケジュールだったりする。
イベントマップに転移し、順位表をチェックして自分の位置を再確認。9時間空いてたのもあって上位からは転落して総合300位、職120位、グループ別で5位。9時間くらいほったらかしした割にはそこまで落ち込んでいないので良し。
「まだまだ狙えるわ」
襲撃のテンポが1時間おき……じゃないとは思うし、日曜日だけ参加する人もいるってのを考えればダンジョンに行ってる暇はほぼないだろう。リアル30分毎くらいのペースで襲撃があるとしたら、今から2時間の間にダンジョン内のボスをマラソンして、襲撃の時までに順位を上げておきたい。後はうちのパーティメンバーがどのタイミングで来るかでも変わって来る。パーティリスト上では3人共ログインしているので、イベントマップに来ているかどうかかが問題かな。
『12時まではダンジョン、後は解散して襲撃で各々の砦に行く、異論は』
『ボスのわりにちょっと遅い到着』
『もうダンジョン行ってるぞ』
『アカさん遅刻なん?』
こいつらずーっとログインしてたんか。
『やる気あるなあ、お前ら』
そりゃそうだろ、と言った感じに返事をしてくるので、拠点から自砦、そこからさらに騎乗ユニットを走らせてダンジョンに向かう。道中どこにいるかも聞いておいたが、それぞれ別エリアで戦っているらしい。あれ、こうなってきたらパーティ組む必要性あるか?
『私は今からエリア1に入るわ』
『ちぇー、エリア3だから戻るの勿体ないなあ』
『それじゃあ、ももさんと合流しよっかな』
『じゃあ自分が合流する』
知らん所で仲良くなってる。
円滑なコミュニケーションって大事だし、無駄にギスっててもしょうがないから良い事か。あのアホもちょっとは尖りがなくなったかね。まあ、2人きりで話したいというかどういう考えで私の事をくさしていたのかも気になるし、いい機会か。
『エリア2に入ったばかりだから、待ってるぞ』
『秒で倒して向かうわ』
そんな会話をしている間に改めてイベントダンジョンに突入。
襲撃前ってのもあって結構なプレイヤーがダンジョンのあちこちで戦闘を繰り広げているのが変わった所か。これはボスの取り合いって可能性もあり得るなあ……レイドボスではないから先着順で、湧き時間そこそこ長かった覚えがある。
『ボス待ちで時間掛かりそうだ』
『あれ定員制だから、ソロ同士で集まって臨時パーティ組むことになるよ』
『だったらすぐか……この感じで追い込みかけられると良いんだが』
エリア1ボスの所に来れば既に戦闘中、流石に割り込みは出来ないので見えない壁に阻まれる。前にやったようにその壁に寄りかかったまま、葉巻を咥えて火を付けて一服。細巻きはすぐに燃え尽きるのが難点だわ。
運営的には沸き時間が長いとプレイヤー間の格差が出るのは分かってるだろうから、プレイヤー数でボスの湧き時間短くなったりすると良いんだけど、そこまでは調整してないかなあ。
火を付けた後に軽く半分吸った所でするりとボスエリアに侵入出来るので沸く所で待機し、そうして残りの葉巻を吸っていると私以外に4人が揃い、すぐにボスが湧き始める。なるほど、定員制で集まり次第湧いてくるって事か。
「さーて、さくさくボス倒しを巡るとしますか」
吸い切った葉巻をぷっと吐き捨て、アデレラを抜くと共にくるくると回して久々に対峙する狼ボスを見てにんまりと笑う。
「楽しいイベントだな」
おいおい、私の笑みを見て引くんじゃねえぞ、そこ。
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