410話 雑魚を任せろ

(パーティ会話使えないってのも不便だけど……やるしかないわな)


 ボスの出現までに少し時間があるのでそれぞれの自己紹介。

 パーティを作った時と一緒で、それぞれの獲物を……把握する必要あるのか?別に急造なら急造で立ち回りの仕方はあるし、そこまで気を使う必要あるんか?煙草の煙を燻らせながらそんな事を考える。


「こんな急造パーティでどうするんだ、ボス」

「……『元』な、倒せれば何でも良いんじゃないか?」

「そんな雑に作戦で良いのか?」


 少しだけ離れた位置にいるトカゲが少し心配そうな顔をしてこっちを見ている。私が居なくなって1週間は経っているから、今更私にあれこれ言われなくても良いと思うんだが。


「まあ、そうだなあ……他3人がどういう奴か分からんから、カバーメインで良いんじゃないか?」

「ざっくりだな」

「野良の急造パーティでなおかつ1回だけの組み合わせなのに頭使いたくないんだわ」


 そもそもトカゲと私以外の3人は勝手に動いて、ボスの出現位置辺りで待機している。それにしても5人であの装甲がっちりのボスに対して倒せるって計算をされているんだろうけど、職によって難度がかなり変わるからあんまり良い計算じゃないよな。


「だからあんたも好きにやる、私も好きにやる、但しボスには勝つ……分かった?」

「……やっぱりボスはボスだな」

「だから『元』だっての」


 そういうと共に払う様に手を動かすと、軽く肩をすくめてからトカゲの奴もボスの出現位置、少し手前辺りに陣取り、がちゃがちゃとインベントリから色々と装備を出し始める。これで前3中1、私が後で援護してやったらいい具合になるか。


 出現までもう少しだけ時間があるっぽいのでこっちもタワーシールドを出してボス正面に対して斜めに配置してPウサ銃、手回しガトリング、各種グレネードを用意して、ガンベルトに銃弾が入ってるのをチェックしてどう立ち回るかを考える。

 前の4人がバカスカとボスに攻撃して前線を張るってのを考えれば、今までと打て代わって雑魚に集中して、他の連中がボスに専念できるようにしたほうがスムーズに行けるか。


『これからボス戦だから、先に祭壇の場所を特定しに行ってくれ』

『了解です!』

『大体同じマップってのを考えたらあまり意味はないのでは?』

『どうせ見てても暇なんだし、行っても問題ねえだろ、行くぞ』


 エリアの外で相変わらずの言い合いをしている2人を引っ張っていくサンダースをちらっと見ていると、ボスが出現し、上空から着地。土煙を盛大に上げ、自分で上げた土煙を持っている得物、やたらと大きい無骨な大剣で振るって晴らす。やはりでかい上に強いってのをひしひしと感じる。ついでに雑魚も完全武装でボスの横からわらわらと湧いてくるが、足並みはしっかりと揃っており、なんだったらすぐにボスの前に整列して装備を構える。

 狼の時、虫の時もそうだったが、ここのボスって命令系統がかなりしっかりしている。その代わりに雑魚に攻撃を集中すればターゲットはしっかり攻撃回数の多い所に向かってくるし、ちゃんと攻略方法は考えられているのか?


「ま、あれこれ考えてても仕方ないわ」


 まあやる事1つだし、前にいる連中はひたすらにボスを殴るだろうから、こっちはこっちで雑魚狩りと行こう。







「あっさり倒してくれると思ったけど、エリア3のボスなだけあるな」


 Pウサ銃のクリップを弾き飛ばしてから軽く一息。すぐさま装填して前衛に向かっている雑魚に攻撃を当てて注意を引いて、こっちに進行を向けさせる。

 しっかり武装している雑魚、タンクタイプの剣士系としてしっかりした立ち回りをしているから、厄介このうえないし、耐久もあるから普通に手ごわい。それを分かってなのかトカゲの奴も近づいてきた雑魚相手に攻撃を与えて注意を引いてくれるので、纏めて接近されてボコられるってことは今の所ない。


「しっかり固定ダメージ入らないとガンナーは弱いわ」


 レバーを引いてチャンバー内に銃弾を入れてからどうするかを考える。

 前で戦っている連中はこっちで雑魚を引き受けているのを理解しているのかしていないのか分からないが、もうちょっと離れて戦ってほしい。

 ガンナーを長い事やっているならちゃんと射線を意識して立ち回ってほしいのだが、あいつら後ろで援護しているのを気にしていないのか?野良で戦っているから、連携を気にしろって言うのも酷だとは思うが……此処までごり押しだけで戦ってきた訳じゃないだろうに。


「雑魚とボスの距離もそこまで開いてないし、グレネードも使えないか……全く」


 相変わらず前の方ではそれぞれの罵声、怒声を上げて撃ちまくっているが連携もへったくれも無いので、結構な頻度で盾に弾かれたりしている。野良でいきなり指示を飛ばして軍師様みたいな事すると、もっと面倒な事にもなるし、どうしたものか。


 軽くそんな事を考えていれば、接近してきた雑魚がタワーシールドを抜け、攻撃1つ。

 目の前に振ってくる攻撃をバックステップと尻尾を使ってぎりぎり避け、Pウサ銃の銃剣を構えると共に銃操作。アデレラを1丁勢いよく上に飛ばしてから、銃剣での斬り合いを始める。こういう時は忍者刀の方が良いんだろうけど、準備しておくの普通に忘れてたわ。

 キィンと金属のぶつかる音、火花を散らして雑魚と打ち合い、強くぶつけ合い、軽く距離を取った所で自由落下してきたアデレラを最後に銃操作で手元に引き寄せて抜き打ち。そこまで良い体勢でもなく、盾と剣を構える前に雑魚の頭を撃ち抜いてまた1匹撃破。やっぱり直撃してくれれば威力は高いし、HSスキルのおかげもあってあっさりと倒れてくれる。


 が、そうだとしても手間取ると、普通に攻められて捌きにくくなる。

 気が付けば更に2体接近、アデレラをもう1丁抜いて、2体を常に正面に捉えたまま、射撃で注意をひかせる。この強力な雑魚が同時に5体以上出てこないのは運営のちょっとした優しさなんだろう。完全武装で耐久がごりごりに高いってのを目を瞑ればだけどな!


「ん-、引き付けて時間稼ぎした方がいいか?」


 無限沸きでひたすらに雑魚の数が増えるわけではなく、上限数が決まっているってのを考えれば、1対4で時間稼ぎの方がボスに集中しやすい?あとはひたすら自分の立ち回りでどうにかこうにかやれば行けるか。ヤバくなったら倒しちまえばいいわけだし。


「バイパー!残り2匹の雑魚こっち引っ張れ!」

「ああ、仰せのままに!」


 私が何をしたいかすぐに察して行動を移してくれるのは長い付き合いだからだな。

 トカゲの奴が2体更に引いている間にも、こっちに攻撃してくるのを必死こいて避け続ける。


「そういえばAGI下げた所で複数戦はあんまりしたことなかったかな」


 完全に尻尾依存症。

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