411話 ちょっと切れる
「ふー……ちょっとずつ、分かってきた」
しっかり引っ張った4匹の雑魚、雑魚ではあるけど強いってのは何か変な感じではあるが、こいつらの攻撃パターンや間合い、その他諸々が見切れるようになってきた……と、思う。あまり複雑な攻撃パターンを持っていてもそれはそれで管理しにくいし、この辺の法則は前のイベントや、通常モンスターを見れば明らか。後はどうにかこうにか囲まれない様に立ち回って、常に4匹を正面に捉えるだけの簡単な立ち回りをすればいいだけ。
「まあ、それが一番きついんだけど」
対複数戦のゲームをやっていた時の方が頭おかしい挙動してくる相手がいたし、それに比べたらきっちりパターンで攻撃してくるモンスターなんて可愛いもんよ。
とにかく雑魚4匹を正面に据えつつ、ボスの方にはいかないで、適度に攻撃を与えてこっちに注意を向けさせる。振り向き撃ちだったり、後ろ走りから尻尾でブレーキ掛けて攻撃。やる事は単純だし、ミスさえしなければ問題ない。相手もがっつりタンク型だからそこまで足が速くないのも良い所。
「つーか、4人もいていつまでボスに手間取ってんだよ!」
こっちはこっちで雑魚を引き受けてそこそこ時間が経つって言うのにいまだにボスを倒せる気配がない。ガンナーだからって何でもかんでも強いって訳じゃないのを忘れてた。これだからちゃんと動けない奴はどのゲームでも嫌いなんだ。
そう思っていたらいつも通り飛んでくる攻撃を咄嗟にガンシールドで受け後ろに飛ばされて、着地すると同時に膝を付く。自分でも気が付かない間に疲弊してたか。ただ飛ばされたおかげもあって距離は取れてるので、Pウサ銃を杖代わりに立ち上がるが、少しふらつく。いくら回避して、攻撃を受けて直撃していないとはいえ、ダメージが蓄積するもんだし、やっぱり気を張り続けるのってきついわ。
「ああー、イライラしてきた」
こんな事なら援護じゃなくてグレネードと弾幕でこっちからボス殴って速攻かますのも全然ありだったじゃん。
「何時まで掛かってんだよ、ガンナーのくせに対装甲の手段もねえのかよ!」
そう叫びながら相変わらず雑魚の攻撃をいなすが、さっきよりもちりちりと掠めてダメージが細かく入ってくる。AGI落とした代わりを尻尾操作でカバーしてきたけど、やっぱり限界はある。自分でも分かるくらいには動作が遅くなってるからやっぱりある程度AGIにも振らないと駄目か。って言うか、発破掛けてもいまいち乗り切らんし、あー、もう、ダメだ、自分でやった方が速いわ。
「これだから愚図は嫌いなんだ!」
雑魚からの大振りの一撃を大きくバックステップで避けると共に、グレネードを投げ爆破。ちまちま攻撃を当てていたおかげもあって、火力のある攻撃をしたらあっさりとポリゴン状に消失していくので、すぐに回復を入れ、使った弾を装填。
いきなり爆破させたのもあって、何だ?と言った顔でこっちをちらっと見てくるのも気にせずに、土煙の上がる中、宇宙猫Tからスーツに着替え直し、髪もいつもの黒髪に戻す。雑魚を倒してから湧いてくるまでにある程度時間があるってのも狼の時に把握しているし、それまでに攻撃を仕掛けてさっさと潰す。だらだら時間とアイテムを掛けていつまでもこんな所で停滞している訳も行かない、有象無象の奴らには悪いが、さっさと片付ける。
「だらだら時間掛けても良い事ないだろうが、愚図共!」
土煙から出て、すぐに設置しておいたタワーシールドの所に転がっていた自分のガトリングを拾い、銃操作。前から少し思いついていた事だが、銃操作で本体を宙に浮かせれば固定の必要もないし、反動の制御もしやすい。何事も実戦でやった方が良い結果が出るってもんよ。
「覚悟しろよ!」
「それで、どうなったんだ」
「あのボス、装甲が厚いから固定ダメージも入らないし、そもそもの防御力も高いからかなりの強敵だろ?」
「そうだね、後続の僕らもかなり苦戦したよ」
「あの時雑魚を引き受けていたガンナーが、装備を変えてガトリングを持って攻勢に出た瞬間から見てないんだ」
「ああー、あれはフラッシュグレネードだよ。攻撃に入る瞬間、遠巻きに見ていた連中は見えてたし」
「その後は物凄い銃声と爆破音、鬱憤を晴らすかの様な怒声、こりゃ死んだなって思ったね」
「つーか1人で4匹釣ってたのに、押し切れなかったのが悪いんじゃない?4体1でボスの装甲すら落とせなかったのが悪いんじゃないかなー」
「硬い相手だったからしょうがないだろ!」
「でもその人は、1人で全部やってたんでしょ、固定ダメージにかまけて対策してなかったのが悪いと思うけど?」
「見てただけのあんたに分かるのか」
「分かるねー、装甲対策しろって言ってるのや、雑魚の捌き方を聞けばそもそもパーティを組まなくても戦える位にガンナーやってる人でしょ、何も準備してない方が悪いじゃん?」
「そりゃそうだけど、急造だったししょうがない……」
「いやー、しょうがなくないね、エリア3まで行ってて、ボスに専念出来てたなら『つべこべ言わずに倒せ』って事でしょ」
「いや、まあ……」
「銃弾も安定供給されるし、固定ダメージでごり押せるって思っていたのが敗因でしょ」
「……」
「あーあ、羨ましいな、本気出すとこ全然見れないのに、何で見せちゃうかなー」
そういうと話していたパーティの1人がボスエリアに侵入しながら銃を構える。
「そーいう鬱憤はぶつけられる相手に出せって言うのがルールだもんね」
ピンク色の髪を靡かせながら出現したボスに突っ込んでいく。
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